3日目 ホークフォークを追え! ②
6月13日 サブタイトル設定
「っは…はぁ…」
「…大丈夫ですか?」
「…あぁ…頂上に行って戻る、っぐらい…は持つ…」
上へ上へと昇るほど、気温が低く、酸素が薄くなる。それに、ラフマウンテンはこの辺りで一番高い山だ。レイグの能力の場合、体力を使う。浮遊と高所の相性は最悪。それによってさっきと比べるとスピードが落ちている。
少々ふらつきながらも何とか頂上にたどり着くことができた。が、足の踏み場が無い。巣の中から一歩外に出れば真っ逆さまだ。ホークフォースは何故こんなところに巣を作ったのだろうか。この中にコールがいるかもしれないと思い、浮きながら探す。
「コール!!居る!?」
「!!スーか!!ここだ!!」
コールが雛の体から顔をひょっこりと出した。だがコールはスマイルと目が合わなかった。
「声はするんだけどなぁ…」
「ここだっての!!」
「えっ、どれ?これ?」
「ピイ」
痺れを切らして立ち上がった。急に立ち上がったせいで体温が急激に下がり、鳥肌が立つ。
「俺はここだって!!…へっくしっ!!」
「ごめんごめん。全部一緒の色してるし」
「早くしないと…アイツ、帰っ…てくるぞ」
グレイグの体力も限界に近づいてきた。ホークフォースに攻撃されれば墜落してしまう。コールを回収しダフニーの村へと下降していく。
「重っっも」
「あとちょっとなので頑張ってください!!」
霧が晴れ、景色が再び見れるようになったが、地上まではまだ程遠い。しかも、グレイグのふらつきが激しくなってきた。
「っ…やばい…無理…だ」
地上まで約百メートル。ついにグレイグの活動限界がきてしまった。腕の力が弱くなり、小脇に抱えられていたスマイルとコールがするりと抜けてしまった。それに追うようにグレイグも落ちてしまった。
「うわあぁぁ!!!」
「グレイグさ――気絶してる!?」
グレイグは気絶してしまっていた。このまま落ちていくと必ず死んでしまう。
(どうしよどうしよどうしよ!!)
その時、真下に村があったことに気づいた。ダフニーの村だ。
(これ気づいて貰えるか!?でもやるしかない!!)
息を大きく吸い、こう叫ぶ。
「誰か!!!助けてくださぁぁぁああい!!!!」
横で見ていたコールも続いて叫ぶ。
「お願いだぁあ!!!ここだぞぉぉ!!!」
不幸中の幸い、なんと声は村の人々に届いた。なんだなんだと人が集まり空を見上げる。空から三人が落ちてきているのが分かったとたん、どよめき始めた。
「布!!布持ってこい!」
「ありゃ無理だ!!」
「見捨てるって言うのか!?」
「俺が行く!」
助けるか助けるまいかと口論している村人の間に一人の青年が声をあげた。
「空飛べるやつ、他にもいたろ!?俺に付いてきてくれ!」
そう言うと人混みの中から丁度二人出てきた。青年は足に力を入れ、空へと翔ていく。一人は装具を、もう一人は能力を使った。直ぐにしてスマイル達のもとへとたどり着き、救助に成功した。スマイルは声をあげた青年に助けられた。
「大丈夫か?」
「はい、ありがとうございます…死ぬところでした」
「空から人が降ってくるなんてどこの物語だよ」
ははは、と軽く笑われる。空から降ってきた人をお姫さまだっこで助ける。本当にどこの物語なんだろうか。そのお姫さまだっこの状態で顔を見ようと見上げるが何か壁のようなもので見えなかった。原因は鍛えられた大きな胸筋。よくよく見れば腕の筋肉もえげつないことになっていた。
(筋肉!!!すんごいマッチョメン!!!)
地面に青年の足が付く。そっとおろされ、改めて丁寧に礼をする。
「本当にありがとうございました。このご恩は一生、死んでからも転生しても忘れません!!」
「ははは良いよ良いよ。それよりあの人気絶してるから俺の家に運ぶぞ。」
グレイグをベットに寝かせ、濡らした布を額に乗せる。まあ、座っとけよ、と声がかかった。
「俺、多分お前達のこと知ってるわ」
「えっ、どこかでお会いしましたっけ?」
「違う違う、勇者、勇者の話でだよ」
「よくご存じで」
「俺もそれに選ばれたんだよな。そうだ、自己紹介。俺はレオン・クラッシュ。よろしくな」
黒い革製の手袋を外し、手を差し出す。
「僕はスマイル・ハワード。よろしくね」
「俺はコール・インスタンティニアス。で、アイツがグレイグ・フロート」
順番に握手をする。自分より手のひらが大きく、ゴツゴツしている。男の中の男、という感じがした。レオンは十九歳にして鉱山で立派に働いていた。毎日毎日ハンマーを振り続けているから手がゴツゴツしていたのだろう。もしくは元々こんなのだったのか。
「レオンさんも空を飛べるんですね」
「レオンでいいよ。飛べるっつうか、能力の『衝撃』を足に集中させて、その反動で上に飛んでいる感じ。その他にハンマーを使って地面に衝撃を走らせるとかな」
家の壁にはいくつもの種々多様なハンマーが掛けられていたが、その中にひときわ目立つ大きなハンマーがあった。
「もしかしてあれ…?」
「そう。あれじゃなくても何でもいける」
「めちゃかっけぇな。俺も使ってみたい」
「はは、やってみな。あれは八十キログラムもあるんだぜ?」
コールが試しにハンマーを持ってみようとする。しかし、引いても持ち上がらず、押しても微動だにしなかった。
「そこでなんですが、僕たちと一緒に―――」
「ああ!!もちろんだ!勇者は男の憧れだよな!その前に、ちょっと手伝ってほしいんだが…村を出るのはそれが終わってからでいいか?」
「あぁ。俺たち助けられたし、何でもやるぜ」
「何でも?」
「いや、別に何でもって訳じゃない」
その後も適当に雑談をし、レオンとの距離を縮める。そうこうしているうちに村を手伝う間、レオンの家に泊まることになった。が、スマイルには一つ気になることがあった。レオンのえげつない筋肉だ。二歳しか変わらないのに違いがありすぎる。ガッチリしていてカッコいいと思ったが。一瞬しか見ることができなかったが、集まっていた村人も全員、性別関わらずにマッチョだった気がする。
(カッコいいけど目のやり場に困る…)