3日目 ホークフォークを追え! ①
6月13日 サブタイトル設定
早朝五時。誰かがドアをノックした。おはようございます、と声がした。声からしてグレイグだろう。スマイルとコールは寝起きで頭がスッキリしないまま外に行く。
「おはよ~ござます…早いっすね」
「そうか?さ、早く準備して」
「何の?」
「何のって、出発の」
二人は顔を見合わせた。もう一度グレイグを見るとうん、と頷き親指で背中を指した。よくよく見れば背中にはあの大きな剣と盾を背負っていた。
「えっもう出んの?早くね?」
「もうちょっとゆっくりしません?」
「別に、ここの村何もないし」
体の向きを強制的に変えられ、背中をグイグイ押される。渋々服を着替え朝食を取る。何がなんでもまだ滞在したい二人はかなりゆっくりめに支度した。ドリーに感謝と別れを告げ、再び外に出る。一時間は延ばすことができた。
「準備遅くない?」
「ごはん食べてましたから」
「えぇそれぐらい言って…結構待ったよ?」
「はい、じゃあ行きますか」
「えっ」
ドアの隣に座り込んでいたグレイグを置いてスタスタと歩いていく。グレイグが回り込んで二人の顔を伺う。その顔はしれっとしていた。今朝のグダグダがなかったかのように。
何か言えば屁理屈で返されそうなので諦めた。三人横に並んで村のなかを歩いていく。
「この村学校ぐらいしかねぇな」
「よく言われる」
「教師なんですよね?何の担当なんですか?」
「算数。あと生徒指導。二十四歳で生徒指導だよ??他の教員がやりたくなかったのが私に回ってきた感じ」
「ほぇ~。何か、学校の先生と一緒にいるなんてアブナイ感じがする」
「何となく分かる」
呑気に話をしていると上空にバサッという何かが羽ばたく大きな音がした。地面にはその陰がぼんやりと映っている。何だろうかと空を見上げる。そこには四本足の大きな鷹が飛んでいた。かなり高いところにも関わらず大きい。
「ホークフォースだな」
「何それ」
「四本足の鷹だよ」
「へぇ。かっけぇ」
ゆっくり飛んでいるホークフォースを何となく見ているとあちらがこちらに気づいた。すると一瞬で下降し、横を猛スピードで行ってしまった。身構える時間がなかった。が、ホークフォースが行っていく時コールの声が微かに聞こえた。「おっ?」という拍子抜けた声だった。
「あれっコール!?」
「拐われた!?」
「うぉぉぉ!!近くで見るとキモい!!」
コールはホークフォースによって拐われてしまった。その大きな四本の足でコールを鷹の癖に鷲掴みにしている。鷲掴みにされているコールは拐われたことよりホークフォースの気持ち悪さに目がいっている。ホークフォースはコールを連れて『ラフマウンテン』という山の方へと飛んでいってしまった。
「もうあんなに行っちゃった…どうしよう」
「私が君を担いで飛んでいこうか?」
「そういえばグレイグさん飛べるんでしたね!!ぜひぜひお願いします!」
グレイグはスマイルを担ぐと言うより小脇に抱えて飛んだ。ホークフォースよりはスピードが劣るが速い。上空の冷たい空気が髪の一本一本に通っていく。滅多に体験できないことなので辺りをキョロキョロしてみる。民家の屋根や人々がとても小さい。青々とした森や山、草原いっぱいに咲く色とりどりの花。山の頂上から勢いよく流れ落ちる滝。そこに架かる虹。いつも見ていた自然とまた違う自然。あまりの美しさに感銘してしまった。
「あれ、ダフニーの村だな」
鉱山の麓に村があるのが見えた。その山だけ他と違って木が生えていない。この山だけ茶色である。
「多分そこ次の村ですね」
「了解。コール君助けてダフニーの村行くぞ!」
「はい!」
一方その頃コールは、ホークフォースの巣の中にいた。その巣には雛が何羽が押しくらまんじゅうをしているかのように引っ付いていた。雛は大人のホークフォースと違って山吹色をしている。もしかするとあの時、上空から見ていて金髪のコールを自分の子供だと思ったのかもしれない。そんなことよりこの雛たちのサイズが大きすぎる。いわゆる親が親で子も子。今にも押し潰されそうだ。
(今アイツいねェし、逃げるか)
巣の縁から下を覗き込むと白いモヤしか見えなかった。それは霧だった。霧で下が見えないほど高いところに連れてこられたのだ。
(スーなら来てくれるはずだ。それにしても寒いな…)
スーなら来てくれる。二人は何十年の付き合いだった。その付き合いが絆を、信頼を築き上げた。スーなら絶対に来てくれる。コールに二言はなかった。
(寒すぎて死にそう)
今、薄い服を一枚しか着ていない。体が震え始め、指先も冬の時みたいに冷たくなった。そんな中、両隣で雛がピイピイ鳴いている。雛の体は大量の毛でモフモフしている。―――閃いた。
「ちょいっとごめんよ」
雛と雛の間に潜り込んでみた。雛の体温は高く、ここでは丁度良かった。
(スーが来るまでこうして待つか…)