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魔王サイド 僕は家族と平和に過ごしたい ①

6月13日

ルークの一人称を「俺」から「僕」に変更

一部セリフの変更

サブタイトル設定

9月9日

城から屋敷に変更

文の追加

「ルーク。起きてるか?起きてないよな」


上半身裸に薄いピンクのエプロンをつけた男が両開きのドアを勢いよく開ける。彼の背中には斑がない真っ黒な翼が生えていて躑躅色の髪が重力に逆らって立っている。ルークと呼ばれた男は天蓋付きのベットでぐっすり眠っていた。壁のほうを向いているが寝ているに違いない。一向に起きる気配のないルークに彼は近づいていく。


「ルーク。朝だ。さっさと朝飯食ってくれ」

「…う~ん…ん~」


その時ベットの中から手がのび、手首を掴まれる。危うくベットに引きずり込まれそうになるがギリギリの所で止め、布団を剥がす。布団を剥がされたせいで体が冷えて目が覚めてしまった。それと同時に彼の方向に顔を向ける。


「なんだファイルか」

「なんだとはなんだ。誰だと思ったんだよ」

「…母さん」

「お前のマザコン、どうにかしてほしいわ。朝飯冷めるから早く食ってくれ」


ファイルと呼ばれた彼は用件だけ伝えると踵を返して行ってしまった。ミディアムの艶やかな黒髪を櫛でとく。クローゼットから上着やシャツを取り出して着る。少し古ぼけた黒いマフラーを片手に部屋を出る…毎日毎日、同じ事の繰り返し。そしてルークがいる全体的に黒で統一された屋敷は彼が造り上げた。

食堂に到着し、席に着く。目の前には丁度良いきつね色に焼かれたパンケーキが置かれていた。その上にはシロップがかかり、生クリームとラズベリーが乗っていた。流石に朝からはキツイ。


「朝から凄いな」

「別に無理して食わなくて良いけど」


ヒョイッと皿を取られ、没収されそうになる。慌てて立ち上がり取り返す。ファイルの顔はムスッとしていた。


「ファイルの作る料理は全部美味しいからな」


にこりと微笑むとファイルは余計にふてくされ、あっちを向いてしまった。これは別に怒っているわけではない。耳が赤い。照れ隠しである。いつもの事なのでルークは構わずパンケーキを食べはじめる。ルークは左隣をチラッと見る。ファイルと瓜二つの男が本を読みながら食べていた。


「ケース、食事の時ぐらい読書をやめた方が良いんじゃない?」

「俺は読みたいんだ」

「本が汚れるだろう」

「…はっ!そうか」


その男は納得して読書を止めた。本を閉じると表紙が露になる。表紙には男二人がイチャついている絵が描かれていた。一瞬フリーズしてしまったがこれもいつもの事なので流す。先程まで読書をしていたケースは腐男子だった。ルークは双子であるファイルとケースと共にこの屋敷で住んでいる。屋敷には他に影の魔物の上級幹部である者、五人の部屋がある。この五人は日中、適当にふらついていたり自由に過ごしているが夜にはきちんと帰ってくる。そして庭では影の魔物ではない普通の魔物が遊び回っている。


「平和だなぁ」


パンケーキを頬張りながら言う。最近は屋敷に乗り込んでくる者もなく、ゆっくり暮らしていた。


「そういえば、また勇者様御一行が来るぜ」

「は?本っっ当にめんどくさい…魔王という存在がいるだけで倒しに来る奴がいる…めんどくさい…今のうちに潰しておくのも良いがこちらから出向くのもめんどくさい…」


額に手を当て、肘をつく。


「今回はちょっと違うらしいぜ。女王に選ばれた勇者だとよ。六年後、お前がリリウム国を襲うことを予知して今のうちに懲らしめようとな。宮殿に盗聴器つけといて正解だったわ」

「めんどくさいな…クライとアグリー、ペイン、エンヴィー、グラージを例の位置に待機させとく」

「了解。っていうか、ルークが直接手とか指令を出してないし勝手に影の魔物が村人襲ってるだけなんだけどな」

「あれは好きで出しているわけじゃない…狂暴すぎて僕にも手に終えないと言うのに…」


長く大きなため息をつき、食事に戻る。ルークは勇者と対決するのが面倒くさかった。魔王という存在がいるだけで倒しに来る奴が大勢いる。だが全員、魔王であるルークに行き着く前に上級幹部の一人にやられている。殺してしまうのは趣味ではないので重症を一つ負わせ、病院に転送している。重症を負わせることで魔王討伐を諦めさせているのだ。


「今回もすぐ帰ってくれるといいが」


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