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2日目 出発ラモンダ! -午後-

6月13日 サブタイトルを設定

「おじ~ちゃ~ん!僕だよ~居る~?」


トリフォリウムの村に着いた二人は真っ先にスマイルの祖父、ドリーの家に訪れた。


「詐欺には引っかからんぞ」

「詐欺じゃないよ~スマイルだよ」

「そうか、そうか。いらっしゃい」


誤解が解け、ドアが開けられる。ドリーとは六年ぶりだ。白髪が増えたぐらいで見た目はそんなに変わっていなかった。笑顔も変わっていなかった。元気そうで何よりだ。


「久しぶりだね、スマイル」

「久しぶり!元気そうで良かった~そうだ、紹介するよ。こちら僕の親友、コールです」

「はじめまして」


ぺこりと会釈する。

ドリーはコールを歓迎した。歓迎どころか大歓迎だ。


「おばあちゃんにも挨拶しておいで」


棚の上に飾られている一枚の写真の前に移動する。左右には花が丁寧に生けられていた。写真の中の叔母、リジョイス・ハワードは笑っていた。リジョイスは七年前に亡くなっていた。


「こんにちは。おばあちゃん」


久しぶりに会えて嬉しい、もう一度会いたい、あの頃が懐かしい…色んな感情が入り交じり目を細める。また泣き出すかと思ったのか、頭を乱暴に撫でられた。


「!?」


コールはなに食わぬ顔をしていた。口をへの字に曲げている。


「二人は勇者に選ばれたんだね?」

「そうだよ。情報速いね」

「で、ここで誰を仲間にするんだ?」

「あ」


ティファニーから貰った袋から地図を取り出して広げる。


「女王様、誰を仲間にすれば良いのでしょうか?」


数秒間が空き、文字が浮かび上がった。


『グレイグ・フロートを仲間にしましょう。申し訳ございません。彼の居場所は村人にお尋ねください。』


「ありがとうございます。」


『引き続き、頑張ってくださいね!』


地図を畳んで再び袋に戻す。ドリーなら何十年もここに住んでいる。ドリーに聞けば何でも分かりそうだ。


「おじいちゃん、グレイグ・フロートっていう人知ってる?」

「もちろん。グレイグは学校に居るぞ。行くなら早めに行っておいで」

「そうだね。ありがとう!」


何となく覚えている程度の記憶を頼りに学校へと向かう。


校庭には数えきれない程の生徒が遊び回っていた。遊具で遊んだり追いかけ回ったりおままごとをしたり…遊び盛りだ。

校庭の端でおままごとをしていた女の子の中の一人がこちらに気づいた。おぼつかない足取りでこちらに走ってきた。


「お兄ちゃんたちだぁれ?」

「ちょっと特別なお兄ちゃんかな。君、グレイグ・フロートって人知ってる?」

「グレイグ先生のこと?アタシが連れてってあげる!」


女の子がもう一度走って行く。走ったと言っても早足で追い付く速さだが。その女の子は校内に入ると走るのをやめた。律儀にルールを守っているのだろう。職員室のドアをノックし、グレイグを呼ぶ。


「お兄ちゃん、グレイグ先生だよ!」

「ここまでありがとな」

「お礼としていつかおままごとしてね!じゃあね!」


女の子を見えなくなるぐらいまで見送った。その後ろからドアがまた開く。


「勇者って君たちか?」

「はい。グレイグさんですね?」

「ああ。ここじゃアレだから私の家で話そうか。片付けてくるから待ってて」


ドアに嵌め込まれているガラスから職員室内を覗く。色んな年代の先生がデスクと見合っていた。昔も今みたいにガラスから職員室内を覗いていたことがある。コールがよくそこに呼ばれていたからだ。柱にもたれて長い時間待っていたものだ。


「やあ、お待たせ。案内するよ」


グレイグに連れてこられたのは小さなアパートだった。一階の一室に案内された。椅子に座っておくように言われ、腰掛ける。部屋のなかをキョロキョロしていると目の前に紅茶が出された。甘い香りだ。


「自己紹介が遅れて悪いね。私はグレイグ・フロート」


グレイグ・フロート。二十四歳。トリフォリウムの村で教師をしている。茶髪で優しい顔立ちをしているが、これと言って特徴がない。いわゆる『普通』だ。グレイグの能力は浮遊。申し訳ないがありきたりな能力だと感じた。見た目だけでなく能力まで普通なのか…

スマイル達も軽く自己紹介をする。


「教師なのに旅に出て大丈夫なんですか?」

「私は教師って言ってもアシスタントみたいなものだからな。私がいない間は代わりの人を雇うらしいからね」

「一つ、私から良いか?……私のこと普通だと思ったか…?」

「えっ」


思ってしまっていたことが当てられて言葉が詰まる。思わず顔が引きつり、否定の言葉が出てこない。


「俺は思った」

「…だよね。物心ついた頃からそう言われてきてね。最近なんか生徒からにも言われるようになったのさ…そんなに普通かな」

「いや~そんなことないと思いますよ」


身振り手振りで普通を否定する。グレイグがため息をつきながら立ち上がる。そのあと部屋の奥に移動し、白いシーツを取る。シーツの中から大きくて重そうな剣と盾が現れた。


「これはフロート家に引き継がれている大剣と盾らしいが、これを使いこなせば普通じゃないよな?」

「はい…その前に勇者に選ばれた時点で普通じゃないと思いますが」

「………そっか!!そっか!!私は勇者に選ばれたんだった!!もうこれで普通じゃない!!普通から抜け出せた!!」


グレイグが部屋のど真ん中で跳ねて喜ぶ。そんなにも普通に悩み、普通から抜け出せたことが嬉しかったのか…


「スマイル君、コール君ありがとう!これから普通じゃない私をよろしくな!」

「「は、はい」」


このテンションからしてもこの人は普通じゃないと二人は思った。その時、ナルルがグレイグの肩に飛び乗った。グレイグは可愛いものが好きなのだろうか、顔に『幸せ』『癒し』『最高』と書かれていた。

グレイグが加わったことで楽しいチームになりそうだ。

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