Orange star light
惑星ビアンカは雨だった。
この星に着陸して、乗っていた宇宙船が故障して、食糧や物資を捜しに派遣された乗組員3名はいつ止むともしれない雨に難儀しながら、進んでいた。
「生存に支障がない星で助かったな」
「ああ」
「しかし、この雨!ずぶ濡れで何時間も歩いてると気がどうにかなっちまう」
「この星には生命体はいるのだろうか?」
「いるとしても、こちらに都合のいい生命体ならいいんだがな」
シュウという男が、傍らにある物体に寄りかかって靴を脱いで中の水をざばざば出した。
「おい」
「?」
先を急いでいた二人は、シュウを見失った。
「どこだ?」
「こっちにはいない」
はぐれたのだろうか?
「えらいことだ。本船に連絡を」
無線機で通信を試みたが、雨が電波を妨害しているのか?それとも無線機自体水が染み込んでしまったのか?全く役に立たなかった。
ライカという男が無線機に気をとられている間に、もう一人も忽然と姿を消してしまった。
ライカは、辿ってきた道を引き返すことにした。本船に戻って他の者と相談して他の二人を捜さなきゃならない。
ライカのその行く手を、巨大な無色透明なものがさえぎった。
ライカは悲鳴をあげることもできないまま、何かに全身を掬い上げられた。
どのくらい気を失っていたのだろうか?
ライカがはっとして身を起こすと、雨は降っていなかった。服はほどよく乾いていて、心地良い微風が吹いていた。
見上げると、巨大な無色透明のドームの中だった。目を凝らすと、ドームの外では雨が降り続いているのがわかった。
「シュウ!トワド!」
他の二人の名を呼んでみた。
「ライカー!」
向こうで二人の声がした。
ライカはそちらへ走り出した。
足元は柔らかい、ビロウドのようだった。
「こっちに水がある。飲めるよ」
ちょうどのどが乾いていたので、両手ですくって飲んでみた。
「甘い。酒じゃないのか?」
「酔いはしないよ」
「活力が出るよ」
ここは一体何だろう?
三人はとりあえず助かったことをお互いに喜びあった。
ゴゴゴゴゴ。
「なんだ?」
地響きがした。
「ドームが開くぞ」
「外の雨が止んでいる」
さあっとオレンジ色の光が辺りに満ちた。
「恒星の(この惑星の太陽の)光だ!」
ここは巨大な花の上だった。
地上からはるかな高さに咲いている無色透明な花の上!
空を、修理が終わった本船が飛んでいた。
「おーい、おおーい!」
三人は声の限り叫んで手を振った。
本船の方は気づいたようで、こちらへ進路を修正した。
「助かった」
三人は抱き合って大喜びだった。