異教徒(side:ミールィ)
二ヶ月も空けてしまい申し訳ありません。
デレステに時間ぎゅんぎゅん吸いとられて日々しゅがはやありすや美波にデレデレしてます。楽しい。限定ありすやフェス限しゅがは狙って爆死しても楽しいですよ。いや、本当。二万ぐらい溶かしましたが。
次回更新が何時か分からないです。すいません。
《初めて異教徒に遭遇しました》
《プレイヤーが初めて異教徒と遭遇しました。以降、ステータスに『宗教』が表示されます》
「ぉ?」
システムメッセージが連続で脳内に響いた、と思ったら目の前にステータスが展開される。ほわっつ? 唐突に出てきたシステムメッセージに頭が常温に下がり、しゅんと冷や汗がひいていくのが分かる。私の冷や汗は出不精なもんで。って、待って。ほんと待って。なんかさっきまでの緊迫感がどこかにフライアウェイするから! この場で危機感忘れたら死ぬから!
「どうかしたのですか?」
「え、あ、いや…………ナンデモナイスヨ?」
「そうですか」
動揺のせいか似非外人みたいなイントネーションになっちゃうことってあると思うの。余計なことしか考えない心とは裏腹に体は頑張って働こうとしている。後ずさりをゆっくりながらも始めている。うん。ごめんね。ちゃんと頭も動かします。だから、ステータスは少し置いとこう。
仮面の男はそんな私の心情を知ってか知らずか、不思議発音の言葉に納得してくれたらしい。…………攻撃して来ない?
何故か黙って見てきてる。
「…………名前は?」
「ほえ?」
「名前を教えて頂けないのですか?」
「ええ…………」
どうしよ、マジで意味わかんない。名前? なんの? 私の? なんで?
ええと…………ちょっと整理させて。カオス過ぎて目が物理的に回りそう。
まず、目の前にいる仮面の男。えっと、ヴァイスだっけ? こいつは、言動とキットの話から、ほぼ確実にキットにスリをさせた不審者だ。そして、その不審者が攻撃を仕掛けてきた。それがさっきの爆発でしょうね。予想では一撃で私達全員を仕留めるつもりだったみたいだけど、鱗華ちゃんのお陰で多分全員無事。玲奈ちゃんのHPも、視界の端に表示されてるパーティメンバーのHPバーを見る限り無事みたいだし。
命が無事だったとは言え、死にかかったことに変わりはないし、殺しにきたことにも変わりはない。でも、何故か自己紹介をした? そうだよ。なんでこいつ私に名乗ったの? あれかな? 冥土の土産的な? でも、私ってリスポーンするだけど。…………ん、でもこいつが私が霧人だって知らない可能性もあるか。
でも、私の名前を知る必要なくない? …………行動原理が意味わかんないなー。ここは、とりあえず名前を名乗るべき? でも襲ってこないのは私が名前言ってないからかもだし。名乗ったら、じゃあ殺すねってのは歓迎出来ない。かと言ってずっと黙ってるのはそれはそれで印象悪いし。
う~ん、八方塞がり!
「…………もしや、貴女の名を知ることは出来ないのですか? それなら…………」
「ミールィって言います!」
「そうですか! ミールィ。良い名前ですね!」
あっぶな! えっ!? こいつ言わなかったら何する気だったの!? 掌こっち向けてきたんだけど!?
脳裏に過るのは、つい先程の暴風の爆裂。もし、あれを至近で放たれたら…………。うぅ。想像だけでぞわぞわする。ゲームとは言え五体が無事でいたいと思う。九十九君はゲームなら腕取れても良くない?とかほざいてたけど、私はただの健常的精神しか持ち合わせていないから全く同意出来ません。
ああ、だからこういうこと考えちゃうからダメなんだってば! 反省しなさいよ、私!
男はばっさあ!と服をはためかせ、片膝を接地する。その勢い、まさに風の如し。私は口の端から小さな悲鳴を微かに溢した。
「さて! それでは行きましょう!」
「え、どこに?」
ウッキウキで唐突にお誘いされた。どうしよう、シチュ的には幼女に跪く仮面の不審者だよ。めちゃシュール。通報されても弁護出来ないレベル。
「決まっています! 我らが神の下ですよ!」
神って、え? そういうこと?
視界の端に残してるステータスに素早く目を通し、ってあった! 『宗教』欄! えー、ふむふむ…………「宗教:ミムザ教」ってなってる。ミムザ教と言えばシェリーちゃんが聖女してるあの宗教だ。てか、その宗教の神たるジャグラーだかシェイカーだかの女神様から、私らプレイヤーは加護を受けているらしい。プレイヤーの特権である、死に戻りがそれだとか。だから、まあ私が知らずの内にミムザ教に入信してたとしても理解出来る。納得は出来ないけどさ。
で~は、それを踏まえた上でついさっきのシステムメッセージを思いだそう!
『初めて異教徒に遭遇しました』
うん。アウト!
でも、確認は大事だよね。ま、一応。ほんと一応。神への祈りをお経のように唱え始めた仮面野郎に、恐る恐る声をかける。
「すいません、その神様についてちょっと…………」
「なぁんでしょう!?」
うわっ、頭部が観覧車。
「っ…………あの、その神様の名前をお聞きしても?」
「ああっ! そうですね! そうですよね! 自身を捧げる御方の名を知りたいっ! 貴女の心情、おおいにわかります! ええ、私もそうでした!! まだ私が信仰に目覚めていなかった頃、不安に満たされていました! 信ずるものを持たず、何故自分が生きているのか定めることが出来なかったのです! しかし、私はあの御方からお言葉を賜ったことで明日への希望を見付け、生きる意味を定めることが出来ました! そう、我らが神へ信仰を捧げるという使命を!!」
「……………………」
「貴女の不安を私も拭いたいと思うのです……しかし! これは神より授かりし試練!! 試練を乗り越えられぬ愚図ではないのだと神に信仰を示す儀式なのです! ですから、どうか恐れず、貴女の信仰を示すのです! さすれば慈悲深き我らが神は必ずや応えてくれます!!」
「………………………………………………………………………………ナルホ、ど?」
「お分かり頂けましたかっっ!?」
「アッハイ」
圧すごい声を荒げるな顔近いし息かかってるってか目こわなんで魚が、うひっ覆い被さってくんなよキモいんじゃボケそれして良いの九十九君だけええほんと来んなしあこれマジピンチなんか足動かないんだけどぅくぁはぬるにゅるしてるキモっい触手緊縛何それ事案いやうそムリマジ九十九君助けてぇ!!
「その子に触れるな!」
気付けば私の目の前に広がっていたSAN値直葬な光景は消え、誰かの腕に包まれていた。
「…………へぇ?」
え、嘘マジ助けてきてくれたのちょっそれはご都合展開っていうか私の妄想の具現化的な痛々しい感じで恥ずかしい…………九十九君じゃない?
「ミールィちゃん大丈夫かしら?」
覗き込んできた顔は私が記憶している顔より皺が多く、女性的な顔立ちをしていた。院長?
「もう安心してね。私が守るから。【エアロコクーン】」
そう優しげに微笑まれる。やっば、惚れちゃいそう!
ふわりと院長の腕の中で柔らかい感触が私を包む。と思ったら空中にいぃぃぃ!?
院長が私を放り投げたのだ。守るとは一体。慣性が体を乱舞させる中、体表の70%ぐらいから触手を生やした仮面野郎と緑のオーラ的なのを纏う院長がぶつかり合おうとしているのがちらりと見えた。
なんか私の知らない内に妖魔大決戦みたいなのが始まろうとしていた。ねえ、知ってる? これ序盤の街のイベントなんだよ?
「あ、死んだ」
上昇が頂点を迎え、内臓がふわりと浮き上がる独特のあれが吐き気を促す。そして、下降が始まった。落ちる。墜ちる。大地へのラブアタック(ただし死ぬ)まであと僅か。そも、頂点が地表5メートルなものだから落下時間が短い。じゃあ死なないんじゃ?という疑問が若干湧くけど、さっきの爆発で人間紅葉おろしを堪能した時はHPが半分ぐらい削れた。私の身体能力、というかVRでの肉体操作能力がポンコツだから空中で体勢を整えて受け身を取るなんて真似も無理。で、地表まで後1秒経つか経たないか。
うん。無理☆。
そっと、目を閉じる。リスポーンは別に良い。最初の一回ぐらいはカッコよく死にたいなあとか思わないでも無いけど、それより大事なのは私の心です。高所からの落下で普通に怖いっす。現実の私はただでさえ肉体面で貧弱なのに精神面でも貧弱になったら世界最弱の21歳とか言われる。家族から。妹から気遣われるのは姉として嬉しくもあり複雑でもある。
「………………ありゃ?」
なんか今慣性さんがバグった気が…………? 来るはずの衝撃がいっこうに来ない。遅刻はダメだよと目を開けてみれば…………浮いてる?
「うっそお」
30センチぐらい浮遊してます。すごー。
これは、あれかな。院長がなんかしたのかな? HP、MPの下枠に見慣れない表記もあるし。えーと、『補助:防護結界』? うん。ここにきて更に新要素ぶっこむの止めてくれないかなぁ!?




