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僕と彼女のVRMMO記(旧題:AWO、始めます)  作者: 炬燵ミカン
中二召喚士と盗賊団
38/55

八つ当たり気味のチョークスラム?

ちょっと早めに投稿。



台風で停電したんで、久しぶりにHUNTER×HUNTER読んだらめちゃ面白かったです。それだけです。

 舐められても多分良いことは無いだろうし、とりあえず笑顔で声をかける。

 笑顔は武器だ。女の涙と同じで、見せるだけで流れを変えられる。今回は僕をただ者じゃない、と思わせればOK。

 自分がどれだけ冷静で狂ってるのかを分からせるのが駆け引きのコツだって、ゲンスルーも言ってた。


「お仲間さんはとんずらこいたけど、あなたは逃げてくれないの?」


 目を細めて油断なく窺っていた盗賊男は、僕の言葉に不快げに目を吊り上げる。


「あ?逃げる?俺が?馬鹿か。なんでお前のような雑魚から逃げなきゃならん。頭の回らんあいつらやそこで転がってる木偶の坊と俺と一緒にするんじゃねぇよ!」


 駄目かー。知ってた。

 にしても口悪いな、あんた。そういう性格なのか、はたまた一緒くたに分類されるのがそんなに嫌なのか。僕には分からん。

 でも、少し疑問が湧いた。盗賊男は()()()()()()()()()()()()と言ったのだ。


「ん?あの大男」

 口の端から赤い粒子──口の中を切ったのだろう──を溢して、いつの間にかミールィさんの腰掛けとなっていた斧男を指差す。

「あいつがリーダーじゃなかったの?」


 盗賊男は斧男のことを木偶の坊と下に見た発言をしていた。木偶の坊、しかもご丁寧に目で示してくれたから、間違いではないはずだ。もし慕っているとしたら、とてもではないが木偶の坊呼ばわりはないだろう。でも、見下していたわりには斧男に魔法を放とうとした時は、止めようともした。

 となると考えられるのは…………


「ハッ!頭の息子だからといい気になって!?世の中舐め腐ってたこいつの下に俺が!?子守りだよ、子守り!頭に命令されなきゃ、近付きたくも無かったがね!」


「…………ぉぅふ」


 なーんか色々気になる話がぽろぽろ出てくるー!?

 か、頭ぁ?てことは、あれか?お前らそこらのチンピラじゃなくて、そういう類の集団のメンバーだったり?

 嘘ー?僕路地裏のお山の大将だと思ったから喧嘩売ったのに!?流石に高レベル数十人は僕達だけじゃ手に負えないんだけど!?

 やっべ。それだと僕のさっきの作戦ってただ仲間を呼ばせるために逃がしたようなもんじゃあ…………?!


 ぶるぶると頭を振って、悪い予感を振り払う。

 今は目の前のこいつだ。

 言動が完璧にチンピラだけど、今の僕一人だとろくに反撃も出来ずに殺られる。それはミールィさんがいても大して変わらない。どっちかは宿屋に死に戻りだ。

 これがエリア探索なんかなら場所が分かっているから問題無いけど、ここはマップに表示されないスラム街。しかも、僕達がここに来れたのは偶然だ。折角ここまでやったんだから、NPCとは言え助けてあげたい。


「………………」


 盗賊男の背後に仁王立ちしているオーガエイプが加われば、どうかな?

 ……恐らく駄目だな。オーガエイプは僕の言葉に応えてはくれない。それなりの連携をとることは出来るが、それはミールィさんの言葉を聞いたAIのお陰だ。彼女が指示を出さないと、彼は動いてくれないだろう。盗賊男を差し置いてミールィさんと密談なんか出来そうに無いしなー。これが「調教」のスキルなんかで従えた一点物の魔物だったらまた別らしいけど……今は関係無い。

 どうしたものか………。


 僕個人の感情としては盗賊男と戦いたいし、どうせなら死んだって良い。でも、状況は許してくれない。

 はぁ。この出会いが僕一人で、襲われている少女達のいないものだったら良かったのに。まあ、少女達が襲われてなかったら、盗賊男と戦うことが無かったという、本末転倒な話になるんだけどね!


「……ぶつぶつぶつぶつ、気持ち悪ぃんだよ!俺のことを無視すんなやぁっ!」


「え?ひぇっ」


 目の前に金属の煌めきが迫る!

 反射的に後ろに飛びすさる!


「うおおおおお!?!」


 あ、危なッ!?

 え?なんか今顔掠っ……あ!ひ、額がちょっと切れてる!?

 咄嗟に後ろに下がったから良いものの、下手したら目切られてた!?


「な、何するんだよ?!」


「俺のこと無視するんじゃねぇ!ぶっ殺すぞ!」


 突如斬りかかってきた盗賊男に向けて叫ぶと、そんなことを言われた。メンヘラか?


「九十九く~ん?敵対してる相手の前で考えに没頭するのは止めた方が良いよー?」


「むぐ……」


 それは、確かに。


「て言うか私から見てもぶつぶつキモかったし」


「うぐぅっ……!」


 ミールィさんにキモい言われた!き、キツい……!尋常じゃなくキツい!


「うぅ…………」


「なんで涙目なってんだよ?気持ち悪ぃ……」


「…………」


 こいつに言われると普通にムカつくな…………。

 ええい!今の僕の悲しみをお前にぶつける!


「もう知るか!お前を殺す!」


「ああ゛!?やってみろやおら゛ぁ!」


「なんでそうなるの!?」


 五月蝿い!八つ当たりだよ!悪いか!

 僕の宣言に額に血管を浮かばせて怒りを顕にする盗賊男。でも、口は好戦的な笑みを象っている。怒りながら笑うとか竹中直人?退く気は0みたいだ。右手に握る匙の槌の感触を確かめる。

 盗賊男を牽制しつつ、背後にいるミールィさんに言葉をかける。


「ミールィさん!僕達じゃこいつから逃げられない!ならこいつを倒してから、逃げた奴等が戻ってくる可能性を考えてこの場から離れるべきだ!」


「…………取って付けたような理由はともかくとして、分かった。

 オーガエイプ!九十九君を援護!その男は足折っといて!」


 声の端々から“しょうがないな~”という気持ちを滲ませてはいるものの、ミールィさんは僕の言葉に応じてくれた。……内心見透かされてるけど。後で何か言うこと一つ聞いてあげよう。

 ミールィさんに命令されたオーガエイプはと言えば、見張っていた男の片足を踏み砕いた所だった。


「あっ、がぁ……!」


 足を使い物にならなくさせられた男は、口から泡を吹き、目を飛び出させんとばかりの見開いていた。

 痛そう……。


「チッ!容赦ないなぁ、糞が!【風牙】!」


「させない、【豪投】!」


「はぁッ!?」


 正面から戦っても勝てないなら、正面から奇策で攻めれば良いじゃない!

 短剣術の武技(?)を発動させ迫る盗賊男に、スプーンハンマーを投げつける!


 ミールィさんの命を受けたオーガエイプに、後ろから迫られるこいつからすれば挟み撃ちに合うよりも、各個撃破をした方が楽なのは必定。そして、明らかにパワー型のオーガエイプよりも、地力ではまず勝っている僕を先に始末しようと思うはず。

 僕と盗賊男の距離は3メートルほど。近接戦では間合いに入るのに一秒も要らない。短剣使いのこいつなら、近付いてザクッ(直喩)を狙うことは察しがつく。て言うか僕ならそうする。


 ()()()()()()。盗賊男は僕がスプーンハンマーで攻撃を受け止めようとするはず、と思うだろう。その予想を打ち破る!


 スプーンハンマーは縦回転をしながら、盗賊男の胴部分目掛けて突貫する。

 避ける、は無理だろう。盗賊男は既にこちらに身を乗り出している。なんの心構えの無いこの状態から、横移動するにはキツいものがある。

 それなら、もう一つの選択肢、迎撃だ。


「くっ……!」


 混乱を表情に滲ませながらもその手は淀みなく動き、短剣は槌を持ち主の左へと弾く。……見えにくいが、短剣に風が巻いているのが分かる。【風牙】という名称からして、風を付与し威力を上げる武技、か。格好良い。

 短剣を振り切った体勢の盗賊男。当然、僕はそんな絶好の機会を逃さない。足裏に力を込め、飛び膝蹴りを放つ!


 盗賊男は短剣に持った右手を振り切った状態からなんとか少しだけ引き戻し、左手を添えて変則的なクロスアームブロックを作る。

 飛び膝蹴りが盗賊男に当たろうとする寸前、僕はリアルでやったら全身腓返りしそうな角度で体を捻る!ゲームだから!ゲームだから大丈夫!仮初めの肉体がみしみしと悲鳴をあげてる気がするが、気にせず重心を下半身から上半身に移して右手の伸ばす。


 投擲も飛び膝蹴りもこれに繋げるための布石!

 飛び膝蹴りでついた勢いと、体勢を変えた際の捻り。二つが混成一体となって、自分でも予想以上の速さで右の掌が盗賊男の額へと辿り着いた。

 そ~し~て~!


「喰らえぇぇぇい!!」


 僕は体に乗った重力に身を任せ、盗賊男の頭を石畳に思いきり叩きつけた。


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