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僕と彼女のVRMMO記(旧題:AWO、始めます)  作者: 炬燵ミカン
中二召喚士と盗賊団
33/55

周辺地理のお勉強

わーい三時間越えだー(白目)



あ、タイトルとあらすじは来週ぐらいに変えるかもしれません。タイトル候補としては『僕と彼女のVRMMO記』とかですね。お風呂でビバノンノンしながら5分で考えた秀作です。

「…………じゃあ、気を取り直して」


「……うん」


 約10分かけてどうにかこうにか羞恥心から脱した僕達は、本来の目的の情報収集を始めた。……なんだろう。それほど時間が経っていないはずなのに、物凄く疲れた。や、自業自得が理由の半分ぐらいに入ってるんだけどね。尚、もう半分はミールィさんだと押し付けておこう。


 僕は書棚から一冊、抜き取って中身を確認する。あ、ミールィさんはちゃんとお姫様抱っこから解放していますとも。今は僕に肩車されてる。………そうじゃねえだろ!というご意見は受け付けておりません。僕も現実を冷静に受け止めきれていないからお揃いだね!(錯乱)


 厚さも大きさもビッグサイズな本は、背に『植物大全・初級編 ①』とある通り、野草や雑草なんかの説明とイラストが表記されていた。色は付いていないものの、中々緻密に描かれている。

 あ、ヨモギ発見。「ベル草」。ヨモギの名前である。

 ふんふん『植物の多い場所に自然と生えてくる薬草。初級の治癒のポーションの材料として有名。初心者は誰しもベル草でポーションを作る』ね……。僕達が昨日(リアル時間だと数時間前)に収穫して、納品したあの薬草。あれもポーションになったのかな?もしかしたらプレイヤーが買ったのかもしれない。生産職でポーション職人はRPGじゃあ定番だし。ポーションを作るのになんのスキルが必要か知らないけど、生産系の類なのは間違い無い。


「僕、こういう細かい設定みたいなの、好きなんだよね。設定資料とかつい最後まで見て、最初から見直したりとかして」


 ミールィさんは僕の頭に凭れ掛かって、足で僕の手首を小突いてくる。“次のページ捲って”と声が聞こえそう。口に出した方が早いと思うよ?まだ少し膨れているらしい。

 でも、膨れてても返事はしてくれて、僕の言葉に同意してくれてるみたいで、口の端が緩む。それを気付かれるのは少し恥ずかしいから、僕は彼女の華奢な足を爪先で弾いた。


 そんな感じで、なんとなく、僕達は結局一緒に見て回ることになった。


***********


 僕達の目の前に広がっているのは、地図だ。始まりの街エルディンを中心に、周辺の地形や街が描かれている。



 これを見付けたのは偶然だった。僕が二つの本棚に挟まれる形で本をぺらぺら立ち読みしている時、ミールィさんが僕に肩車されたままで書棚から本を抜き取ろうとした。でも、手が短かったことで上手く取ることが出来ず、けれど重力に囚われている大判の本は彼女の顔面に激突した。図鑑ほどもあるサイズもあってか、彼女は本に頭を押さえられる形で後ろに倒れた。僕は両手で本を読んでいたことと突然のことだったので咄嗟に、後ろに下がるのでギリギリだった。まあ、そのお陰でミールィさんは後方の本棚に頭をぶつけて、床に頭蓋骨ごりごーり(やさしい表現に翻訳されています)することは無かった。


 頭の前と後ろが悲惨な目にあって「おんぎゃー!」なミールィさんがぶつかった影響で、ぐらりと揺れた本棚から埃と一緒に落ちてきた巻物。これが地図だった。どうやら本棚の棚ではなく、屋根の方にあったらしい。ここの本棚はどれも2メートル以上あって、肩車したミールィさんでもギリギリ見えないぐらい高い。ここに隠した製作者の底意地の悪さが窺えそうだ。もし僕達以外がここに辿り着いても、見付けるのは困難を極めただろう。誰も態々本棚を揺らしたりしない、目の前に情報源が山程転がっているのだから。僕達も、ミールィさんが無理な体勢で本を取ろうとしなければ発見出来なかった。


「転んでもただじゃ起きないのがミールィちゃんなのですよ!」


「あなたのポジティブシンキングは尊敬に値するし僕の好きな所の一つでもあるけど、とりあえず手伝いなさいよ」


 落ちたのはその地図だけじゃないんだぞ。「のほほほほ!?」と滅茶苦茶面白いリアクションを地図と一緒にミールィさんから引き出してくれた、本~ズを拾う。


「や~ん、あたしか弱い美少女よ~?そんなおっきいの無理無理」


「……………………」


「ちょっ、止めてっ!そんな目で私を見ないで!」


「はぁ……」


 放置して片付けよう。不毛だ。



 はい。時間をスキップスキップ。キ○グ・クリムゾン!

 ミールィさんがえっちらおっちら運んだ地図は、近くに備え付けられていた机に広げている。上から見たものなのか、中々細かく描かれている。ただ、巻物の状態からして古いものだと見てとれたが、中身の具である地図の方も年月が経っているのを示すように、所々色褪せたり擦れて輪郭がぼやけてたりする箇所があった。


 中心のエルディンから下側140°くらいで扇状に砂漠が広がっている。名前はバンザ砂漠。凄いな。地図の3分の1を占めてる。どれだけでかいんだ………ん?南端、地図の一番下に陰がある。目を凝らして、偏見混じりの僕の価値観に当て嵌めてみると、建造物に見える。名前は……うん。わからん。でも、ちょっと気にはなるから、頭の片隅にでも保存しておこう。


 北の方は、平原を挟んでカブラの森が広がっている。そして更に北には、花妖精の寝所という名前の花畑が……ああ、ここがあの悪名名高い。βテストでは北はここまでしか行けなかったみたいだけど、プレイヤーは誰もが声を揃えて“あいつは絶対許さねぇ”と言ったとかなんとか。

 花畑の更に北は、森と川がある。ガムラの森とグートウェン川、ね。森の名前がややこしいなあ。川は東寄りの北端から、東南東の方向へと伸びている。そして、地図の東端にある街に繋がっている。麗水の都ネルシェン……?名前と地理からして水が大きく関連していることは分かるけど、それだけだ。

 この街とエルディンの街の間に魔法都市バイキェルがある。西の剣闘都市フルウェンスと対応するようにあり、βでは東西はこの二都市までだったとの話だから、ネルシェンはその先だろう。テスターが本当に知らないのかは、本人達にしか分からないことだけど、とりあえずネット巡回をしまくった僕は知らない。


 西のフルウェンスの先は職人の聖地(メッカ)ハーヌーンとやらがあるようだ。近くに鉱山もあるようで、いかにもドワーフがいますと言った感じの場所だ。伝説の名工とかいたりしないかな。


「…………」


「ねえねえねえねえねえねえ九十九君」


「うん?ねえがやけに多いね。どうしたの?」


「一つ気になったんだけどね。この地図って多分、βテスター入れても初物を私達がゲットだぜっちゃったわけだよね?」


「そうだね。この古めかしい地図があたかも旬ものの食材みたいに言ってるけど、そうだね」


「さて、私達はこの地図をどうするの?」


「売っちゃう?」


「盗っちゃう?」


「隠しちゃう?」


「燃やしちゃう?」


「いや、燃やすのは止めてね」


 何言ってるだ、この人。燃やしたらもう利用出来ないんだぞ。せめて隠して、それを材料にトッププレイヤーから色々毟り取るぐらいしないと。勿体無い勿体無い

 まあ。


「今回は掲示板にでも晒しちゃおっか」


「?」


 こくりと、小首を傾げて疑問を露にするミールィさん。


「あれ?呪いのアイテムシリーズの時は、公表しなかったよね?良いの?」


「まあ、あの時の情報とこれは別物と言うか……僕達だけじゃ扱い切れないと言うか?」


「自信が無いね」


「いや、僕あんまり頭良くないし」


「うんうん。小狡いことは考え付いても小賢しいことは中々思い付かないのが、九十九君だもんね」


「喧嘩売ってんのか、おら」


「えへえへへ……!」


「なんで照れてんだよ……」


 マジなんで照れてんの?


「はぁ……。地図、しかもこれは未知の場所を記してる。βでも多分知られていない情報。これの価値は凄いと思うよ。でもこの情報って、無くても攻略は出来るんだよね」


「ん~?んー……んー!」


 あ、なんか分かったっぽい。


「攻略本は無くても良いけど、あった方が嬉しいよね!」


「お、おう……。合って、る?多分合ってる……。この情報は今僕達だけが持っている。と言う事は、僕達がここで握り潰しちゃえばしばらくは……もしかしたら永遠にこの事は露呈しないかもしれない」


 なにせ、まるで隠すように置いてあったのだ。もしAWOがアイテムの再設置をしないタイプなら……僕達の犯行は闇の中に消える。


「いや、そんな事する気はないけどね?」


「はい?」


 なんでもないと手を振る。


「でも、僕達って別に他プレイヤーの邪魔しても得無いんだよ。では、問題です。ミールィ君。僕達のプレイスタイルは?」


「『いろいろやろうぜ』?」


「という訳」


 『ガンガンいこうぜ』はトッププレイヤー──フェルト達だろう。僕達は寄り道相乗り、旅は道連れを程々に面白おかしく過ごせば良いだろう。


「にゃるほど」


 にゃんにゃんと理解するミールィさん。ついでにぴょこぴょこ動く耳。あら、それ動くの?さっわらせてーっ!



 ミールィさんと色々遊んだ後、掲示板の一つにスクショと一緒に図書室の事を書き込んでおいた。

 なんか凄い勢いでスレが加速してたけど、見ないふりをしておいた。自分が起こした出来事で周囲が大騒ぎするのって、怖くなるよね。

今更ですけど、評価してくれると嬉しいです。

作者はブックマークが一つ増える度にニヤニヤと気持ち悪い笑顔を浮かべちゃう可哀想な奴なんです。


感想をくれると、飛び上がってうひゃうひゃと笑っちゃうので、感想も欲しいです。

誤字報告でも良いよ!

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