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僕と彼女のVRMMO記(旧題:AWO、始めます)  作者: 炬燵ミカン
中二召喚士と盗賊団
32/55

調子に乗った末路

二時間も遅れてすいません!

書きたいものを書こうとしたら話が全然進まない

(゜ロ゜;

 シェルフィアさんの話を聞きながら、図書室を見て回っていると神官っぽい人がシェルフィアさんの元に駆け寄ってきて、僕達を横目で伺いながら彼女に耳打ちをする。なんだろう?と顔を見合わせていた僕とミールィさんだけど、シェルフィアさんが僕達に頭を下げて謝罪してきたのには戸惑った。


「すいません、九十九さん、ミールィちゃん。私は神職に就く者としての日々の務めを果たさなくていけません。本当に、本当に名残惜しいのですが、私はこの場を去らねばなりません」


 つまり、仕事があるからもう遊べないの、ってことかな?雰囲気が全力で面倒臭いと発しているが、こうして見ると、噂をシェリーちゃんもなんてことない少女のようだ。耳打ちをした神官さんも、呆れの香る表情を浮かばせている。

 シェルフィアさんは、図書室に残る僕達に好きに見ていってくださいねと残して去っていく。


「じゃあね~」


「ありがとうございました」


「お礼なんて良いですよ。私がしたかっただけですから。また、会いましょうね。二人に女神シェンサーラ様のご加護があらんことを」


 別れの挨拶を送ると、僕達にそう言った後に合掌をして頭を下げる。え、何?ときょとんとしてしたけど、そこは日本人。対面する相手に頭を下げられたらついつい自分も下げちゃう。あ、ミールィさんもしてる。僕と同じ理由かな?そんなちょっとしたことが可笑しくて、口元がほころぶ。


 それでは、とシェルフィアさんは神官の人を連れて図書室から行ってしまった。


「さて、じゃあ本を好きに見ていこっか。ここは別段広くないから迷うことは無いだろうし、バラバラで良いよね?」


「ん。そうだね。ところで、九十九君は何を見るつもり?どうせなら違うこと調べた方がてっとり早いよ?」


「あ、そうだね。それが良いかも。……僕は、ここら辺の情報でも探ってみようかな?出来れば地図があるとありがたいけど」


 β版では、あくまでテストということなのか、行くことが出来たのは北は森を抜けた先のエリア一つだけ、東西それぞれは第二の街となる二都市の中まで、南はそもそも行けなかったそうだ。つまり、β版の知識が役立つのは、それほど長い間ではないということだ。となると、当然プレイヤー自身の情報収集が必要となる。

 まさか、行き当たりばったりでゲームを進めてしまえる、なんてことは無いだろう。RPGはレベルを上げれば大抵の障害を力ずくで突破できるものだが、『○○を倒すには△△が必要なんだ!』というのもまたRPGだ。ストーリー全てを脳死で進めてしまえるものは、RPGではなく作業ゲーの類な気がする。いや、RPGのレベリングも作業ゲーって言われればそうだけど、ね?


 とにかく、β版とは違う部分が多々ある以上、情報に多少の差異があってもおかしくない。……と言うか、β版の話をネットで見たのを思い返してみると、確か教会図書室なんて話、全く無かった気がする。

 β版での情報収集の方法はNPCへの聞き込みとプレイヤー達の検証だけだったはずだ。魔法都市には巨大な図書館があるとの話だが、β版ではプレイヤーが出入りすることは出来なかったと誰だかがスレに愚痴っていたのをちらりと目にした覚えがある。だからこの教会図書室はβ版には無く、本サービス開始から実装されたと考えるのが自然か?


 ……ん?あれ?ってことはひょっとして、僕達が発見者だったり?他プレイヤーはここの存在に気付いて無かったり?無くはないか。僕達がここに来た経緯を考えてみると、なんらかの小イベントを起こす必要があり、そのキーマンもといキーウーマンは宿屋のおばさんだ。あの人が僕達に図書室に行ってみるように言ったのだ。……でも、その小イベントを発生させた覚えは無いんだよなぁ。宿の代金をたくさん払ったから?う~ん……。


「ねえ。ねえってば!九十九君!」


「ん?ええと、なんだっけ?」


「だから、私は歴史とかを調べるねって。もうっ!話の途中でいきなり上の空になるんだから」


「あ、ごめんね!」


 考え事に没頭してしまった。全くもう!と膨れるミールィさんを慌てて宥める。膝をついて目線を合わせ何回も謝ったり、腹いせにげしげしと蹴ってくるのを耐えたりとミールィさんの怒りを受け止める。

 うんうん、ごめんね。でもね、あなたが怒ってる姿は子どもが癇癪起こしてるようにしか見えないんだ。ちょー可愛い。


「むー。全く九十九君は~。全くもーだよ全くもー」


 ぷりぷりと怒ってはいるけど、ようやっと落ち着いてきたらしい。

 と、ミールィさんは僕に背を向け、凭れ掛かってくる。いきなりだったことと膝立ちの状態だったことで、体の重心がずれて後ろによろける。ミールィさんのアバターが幼女で軽いから仰向けに倒れはしなかったけど、僕は正座の体勢になって、ミールィさんは僕の膝の上に座る形となった。


「ちょっとミールィさん?」


「あははっ。良いではないか~?」


 そう楽しそうに笑うと、力を抜いて体重を預けてくる。やだっ、この人くつろぎ過ぎぃ!

 ミールィさんはもぞもぞと体を動かす。据わりの良い場所を探しているのだろう。機嫌がまた悪くなるのもあれだから放置していると、ぴたりと不自然な体勢で動きを止める。ミールィさんは豊かな銀髪を揺らし、僕を仰ぎ見る。その可憐な相貌に意地悪げな笑みが咲いていた。

 うわぁ、良い笑顔。


「つ・く・も・くぅ~ん?私のお尻になんか硬いモノが当たってるんだけど、これは何かな~?」


「…………………………………鱗だね」


「知ってる~~!」


 知ってるんかいっ!!この人おちょくったな!ちょっとドキッとしちゃったよ!少しだけイラッときたので、頬を引っ張ってやろうと指を伸ばす。が、立ち上がることでそれをひょいっと躱される。

 立ち上がったミールィさんは軽やかにターンをし、後ろ手を結んで前傾姿勢になり、上目遣いで僕に囁く。


「九十九君、お姫様抱っこしてよ?」


「……っ」


 どうやらからかいの続きのようだ。いたずらっ子のように笑う彼女は小悪魔を彷彿とさせた。けど、これはいけない。何がいけないって、僕の負けん気とかだ。“君は出来ないもんね”という声が聞こえてきそうだ。

 ……少し灸を据えてあげようかな。


「そうだね。良いよ、してあげる」


「え?」


 その言葉は予想外だったのだろう。口をぽかんと開けて間抜けな顔になる。その顔を見れただけで僕の気持ち的には充分だが、どうせならだ。やってやろう。

 正座の状態から立ち上がっていまだ呆けているミールィさんを抱き抱える。左腕を膝裏に通して、右腕で腰を支える。お姫様抱っこである。


「…………」


 さっきも思ったけど、ミールィさんはとても軽い。僕自身が彼女に向ける思いによる補正も入ってるのかもしれないけど、いつまでも抱いてられそう。ゲーム内なら疲労も無いからやろうと思えば本当に出来ると思う。


「え、え、なん。あ?ちゅ……九十九、君?」


「ん~?どうしたのかな~?」


 おーおー見事に混乱してらっしゃる。口は意味もなく開閉を繰り返し、目は溺れかけの猫みたいに縦横無尽に泳いでる。両手を胸の前で組んで縮こまっていると、小動物に見えてくる。耳は真っ赤になっているから恥ずかしがってるのか。

 分かるよ。僕も今とっても恥ずかしい。でも、ミールィさんほどでは多分無いから安心?ここに人気が無いから、だけど。流石に人前でこれをする度胸も勇気も持ち合わせていない。更に言うなら、人の目が無くてもこれをリアルでやれる気はしない。ゲームという非日常下だからこそ、出来ることだ。


「つ、九十九君、これって……」


「ミールィさんの要望したお姫様抱っこというやつですが?」


「はわわわわわぁぁっっ!!」


 萌えヒロインみたいな驚声だね。


「なんっ、……君はなにゅをしとるかぁー!?」」


「えー?ミールィさんがしてって言ったんだよ?」


「うっ!そ、そうだけど……!そう、だけどっ!」


「くくくっ」


 やっべ、超楽しい。ミールィさんを弄るの超楽しいんですけど。

 じゃあ、次はこのまま図書室の中を歩いてみようかな?僕の腕の中で顔を両手で覆って悶えているミールィさんをずっと見ていても良いけどねえええぇぇぇっっ!?


「…………」


「…………」


 神官さんと目が合った。図書室の入り口横のカウンターの女性神官さんである。“私は何を見せられているのかしらん?”とでも言いたげな目でこちらを見ている。


「…………」


 僕は無言で本棚の陰に消えた。


 は、恥ぁずかしいいぃぃぃぃっっっ!!


最近タイトルと作品紹介の文を変えようか悩んでます。

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