攻撃特化のパーティなんです
《種族レベルが上がりました》
《職業:槌使いのレベルが上がりました》
《S職業:緊縛師のレベルが上がりました》
《『槌術』武技の【重到】を覚えました》
《『蹴り』武技の【翔挫】を覚えました》
《〔モンスターハウス:鬼猿の間〕をクリアしました》
《カブラの森にビーストエイプが出現するようになりました》
「んぉ……?」
オーガエイプが粒子になってから、戦闘終了の合図としてシステムメッセージが流れる。おお、レベル上がったかってんん?今なんか変なのがなかった?あったよね?
ログを開いて見ると、レベルが上がったり新しい武技を覚えたりといった後に、見たことの無いものがある。
〔モンスターハウス:鬼猿の間〕?あ、点滅してる。意識を向けると、思考操作で説明が出た。
「へぇ……」
要約すると、ビーストエイプとオーガエイプによる襲撃は、やはり運営の新しいゲームシステムの導入によるものだった、ということらしい。おのれ運営。
モンスターハウスは全てのエリアに実装されているらしく、クリア条件を達成することでそのエリアに新たなモンスターが出現するようになるとのこと。今回で言えばビーストエイプがそうだ。
モンスターハウスはそれぞれ異なる発生とクリア条件が存在するようだ。ここ鬼猿の間の発生条件は、カブラの森でのモンスター一定数撃破をクリアした2パーティが一定時間滞在することだった。クリア条件はというと、ビーストエイプを一定時間内に百体撃破、一定時間内に撃破しきれなかった場合はその後に出るオーガエイプ1体を撃破でクリアとなるようだ。僕達は今回は後者の場合になる。
「タイムアタックっぽいな……」
ぽつりと誰かが呟く。
確かに。プレイヤーの平均レベルが後10ぐらい上がればここに百体撃破を目指すプレイヤーらが順番待ちをしていそうだ。いや、それは無理かな?
僕の目には『モンスターハウス復活まであと96時間』の文字が映っていた。
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名前:九十九
種族:蒼鱗族 Lv.5 (↑1)
職業:槌使い Lv.4 (↑1)
S職業:緊縛師 Lv.5 (↑1)
HP 380/380
MP 300/300
STR 23 (↑2+1)
VIT 9 (↑1)
AGI 23 (↑2+1)
INT 2
MIN 7 (↑1)
DEX 15 (↑1+1)
LUC 11
SP 0
〔スキル〕
『槌術 Lv.10』『捕縛術 Lv.10』『強打 Lv.13』『鑑定 Lv.5』『ダッシュ Lv.Lv.8』『投擲 Lv.5』『蹴り Lv.11』
〔称号〕
無し
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……何故に蹴りが槌術や捕縛術より高いのか。おかしいな、僕っていつのまに蹴り主体の格闘家に転職したんだ?不思議だ。……うん、僕が悪いんだけどさ。
ミールィさんはINTが80を超えたそうだ。まだLv.5なのに?この人の魔法だったら近い内にオーガエイプも一撃で殺せそうで恐いなぁ。魔法反射とかの能力持ちが出てきたらどうしよう……。
「おい、九十九。これからお前たちはどうする?俺たちのパーティは街に戻ろうかと思うんだが」
フェルトに声をかけられる。どうやら誘ってくれているらしい。僕は、ミールィさんと顔を見合う。
「どうしよう?」
「う~ん……私のMPはもう3割切ってるからね。ポーションはどれくらい?」
「あと2つだね」
僕達のパーティは、僕とミールィさんの二人だけだ。そして、二人ともHPを自力で回復させる手段を持ち合わせていない。HPを回復させるといったらゲームでは必ずと言って良いほど存在する治癒魔法なんかがあるが、僕達はそのスキルをとっていない。というのも、僕は近接型の前衛タイプ、ミールィさんを攻撃特化のINT極振りだからだ。
ゲームによって治癒系の魔法の効力が変わることがあるが、AWOでは精神値──MINでHP回復量が変わる。それにより、ミールィさんは治癒魔法のスキルをとらなかったそうだ。
ともかく、そういうわけで僕達のパーティは自然とHPの回復をアイテム、ポーションに頼ることになる。僕達は生産系のスキルも生産職のプレイヤーの知り合いもいなかったから、店売りのものを買ったが、一つ200ジルした。金欠気味の僕達には大量に買えないから、五つで妥協した。『交渉』のスキルやNPCからの好感度が一定値を超えている場合は値引きが出来たりするそうだが、当然ながら僕達には無理な話だ。
そして、モンスターと戦う以上攻撃を喰らい、ダメージを負うのは必然となる。ここら辺のモンスターなら一対一であれば余程のことが無ければノーダメージで勝つことが可能だが、相手が複数となるとそう上手くはいかない。大なり小なり傷を負う。特に背後からの攻撃に僕達は弱い。先ほどのビーストエイプの全方位からの攻撃に、序盤はかなりダメージを貰ってしまった。改善が必要だろう。
閑話休題。
だから、僕達はポーションを今まで三つ使った。これに関して後悔なんかは無いが、少し不安が残る。ただのモンスター、ホーンラビットや新しく出現するビーストエイプは問題無いが、オーガエイプクラスになると僕達だけの場合全滅=死に戻りになりかねない。AWOのデスペナは一時的なステータス減少だ。出来れば避けて通りたいのは確実で、それなら僕達の意見は分かりやすく一致する。
僕とミールィさんは簡単に意見を交わし、フェルトに同行する旨を伝え、共に街に帰ることとした。
「ドロップアイテムの分配もしなきゃいけないしな」
あ、そう言えば。すっかり忘れていた。オーガエイプのドロップアイテムは、特典なのか全員に自動で割り振られたらしいけど、広間に散らばっている大量のビーストエイプのドロップアイテムは僕達が自力で回収しないといけない。僕はフェルトと苦笑を交わしつつ、手始めに足元に落ちているビーストエイプの毛皮を拾った。
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始まりの街エルディンには、四つの区画が存在する。
まず、街の中心から伸びる十字のメインストリート。服、食事、宿、武器、雑貨、商売人たちのありとあらゆる店が建ち並ぶ。
街の北西から南まであるのが、住宅街だ。教会を囲むようにして中世風の家々が建てられていて、四時間毎に教会が鳴らす鐘の音を聴いて、住人たちは生活を営んでいる。北西の中央寄りには街の領主トルネット伯の屋敷もある。
東から南にかけてのエリアは、いわゆるスラム街と呼ばれる場所だ。と言っても、実態は犯罪者のるつぼのようなもので、道は迷路の如く入り組み、『盗賊』ジョブのNPCがスリを仕掛けてくるらしい。また、そういう仕様なのか街のマップも迷路部分だけもやがかかったように詳細が見れない。
そして、東から北西までの区画が生産職の者たちの工房になっている。ここでは日夜、鍛冶師や錬金術師、薬師等が自身の作品を作り出している。
更に言えば、今僕達が向かっている場所でもある。
「……フェルト、僕達ってなんか注目されてる?」
「あー……だな。まあ、どうせ誰が原因かは分かりきってるが」
「確かに」
「君たちって結構ずけずけ言うよね?!」
僕とフェルトが話していると、相変わらず僕に肩車されているミールィさんが頭上から声をかけてくる。え!?
「み、ミールィさん……自覚あったんですか!?」
「これだけ見られたら私も気付くよ!」
あと、普段は気付いていても無視してるの!とキャイキャイ騒がしい。
……アイテムボックスからさっき買ったりんご飴風の菓子を出して、差し出す。無言で舐め始めた。
チョロい。
「……こいつ、飴玉一つで拐えそうだな」
「うん。実は結構不安」
リアルでろくに食えないからって、ゲームの中だと大分はっちゃけちゃうから困る。いやまあ、この人のそういうところが可愛いなと思う僕も僕だけど。
「だから、こうやって出来るだけ離れないにしてるわけだし」
「ああ。とりあえずここでは離すなよ。半日は返ってこないぞ」
「うん」
離す気はない。
さっきから僕達、もっと言えばミールィさんに視線が四方八方から集中している。老若男女、ありとあらゆる人がだ。
僕達が歩くのは、エルディンの生産職エリア。その中でも、服飾に関するジョブに就く者たちの巣食う、裁縫職人達の溜まり場だ。
素晴らしい美幼女を見つけた彼ら、彼女らの瞳は、爛々と輝いていた。
おお、怖い。
街の区画が分かりにくいと思います。
すいません。
話の本編には関係ないので、忘れても問題ゼロです。




