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095 予感は冷たく

 この作品はエタったので、書けたところまで投稿して打ち切った理由を説明することとします。というわけでいちおう最終話扱いのこれをお届けします。


 どうぞ。

 お母さんはスコーンをデザートに入れてくれていた。友達のこともいろいろ話しているからだろうか三つもある。ひょいと出すと、隣のユミナが「ありがと」と言ってぱくっと食べた。手から直接なのがリスっぽくてかわいいなとも思ったけど、ちょっと戸惑う。


 最近、キューナ(というかユミナ)との距離が近い気がする。学校でいつも一緒にいるのはそうだけど、ここ一週間くらいゲームの中でもべったりだ……成長ボスとばっかり出会うから、一人では安心できないのが大きいけど。


「ユミナ近くない……近いよね?」

「近いよ」


 大して悪びれる理由もないし、親友だから近くにいる理由を見つける方がむずかしいようにも思うけれど、私たちの距離としては違和感があるような気がする。そんなにドライではないけど、常に横にいる関係じゃない。なんだか変だなと思うところもあるし、何かあっちから話したいことがあるような雰囲気でもないので、よけいに違和感が大きかった。


 ゲームの話題なら、それなりにあった。


 七月に入ってから成長ボスを倒して――倒して、倒しまくっていた。ルグーニオンの山頂で倒したでっかいトンボ「オーゼルク」がまず一体、サーフボードの形をしたUFOみたいな「ヘルネキューラ」や豪華な刺繍をしたクッションみたいなぬいぐるみ「チュールエア」も倒した。オーゼルクはものすごく強かったのに、あとの二体はボスっぽくないというか、あからさまに得意分野が偏っていて、私たちでもそこまで苦戦しなかったような気がする。……準備してきたポーションはほとんど使いきっていたから、楽ではなかったけど。


 ボスモンスターに出会ったら逃げろと橋川が言っていたくらいだから、成長ボスはもっと強くて理不尽で、圧倒的な力で私たちを蹴散らすものだと思っていた。でも、これまで戦った成長ボスはそういう、ただ強く育ったモンスターではなかった。また橋川に聞いておこうと思いつつ、成長ボスの基本ルール……倒すとその性質を持った何かを必ず落とす、という事実を思い出す。


「そういえばなんだけどユミナ、昨日のあれ覚えてる……?」

「大丈夫、誰にも言わないし」


「でも」

「うん」


 即答だった。


 ファイトマネーを受け取る登録選手とは違って、たまに闘技場をレンタルして戦う定番の二人組、みたいな人たちもいるらしく、そういう人たちは素人でもそこそこの客入りを記録するらしい。昨日は「女の子二人か、見てみるか」みたいな感覚でド新人よりは少し多めに人が入ったらしく、あの光景を見ていた人も少なくないことになる。


 どうせスカートがばさばさめくれるなら回し蹴りにすればよかったなといまさら思っていたり、人を巻き込んで実験したらろくでもないことが起こるのは歴史が証明してるのになと思ったりして、ちょっと情緒不安定になっていた。


「ほら、お弁当食べ終わったんだしさ。橋川のとこ行ってきなよ」

「……うん」


 メアにもスコーンをあげてから、私は図書室に行った。




「顔を隠したい……?」

「うん」


 でも顔を隠す女性ってワケアリ扱いされがちだしなぁ、と橋川は珍しく後ろ向きなことを言っている。


「踊り子っぽいアラビアンな恰好ならベールで隠せるかな」

「魅力値は増えそうだけど、普段からは恥ずかしくない?」


 確かにパンツは晒してしまったけど、私も痴女ではないのでふつうの服装がいい。


「目元だけ隠すマスクは……あんまり女性向けじゃないなぁ。似合う服装は限られるし、おかしい人だと思われるかもしれないし」

「舞踏会みたいな?」


「うん。僕はあれを普段から着けてる人、見たことないかな」

「だよね……」


 アラビアンな恰好の人なら、いかにも「今からダンジョンに挑むぞ!」って感じの人たちが真面目に装備していたのを見たこともある。聞いた話だと年がら年中海パンの人や、ワンピースなのかローブなのか鎧なのか分からない色が一色だけのごちゃごちゃした一体型の何かだけで装備を済ませている人もいるそうで、舞踏会っぽい服装の人もいてもおかしくないのに、見たことはない。とくべつ正気を失っている証というわけでもないみたいだけど、あまり見ない。謎だ。


「そうだなぁ……いまどこにいるんだっけ、ドレイセス王国?」

「昨日装備のテストのために決闘場使って、ラゾッコでログアウトしたよ」


 最近ずっとドレイセスにある「パルベンテイス」という街あたりでレベル上げをしていた。変なめぐりあわせで成長ボスとばかり出くわしていたけど、手に入れた装備のテストをするためにラゾッコに移動している。


「だったらよかった、王国……デーノンでお店出してる人って、ほとんどがコーディネートのサービスもしてるんだ。装備効果は同じがいいけど見た目だけガラッと変えたい、なんてときがまさに来てると思うから、頼るといいんじゃないかな」

「うん、頼んでみる」


 デーノンだと、いちばん最初に装備を整えたジーナさんのお店がいいだろうか。置いてある服も私の趣味に合っていたし、お客さんにしっかり向き合ってくれる人だと思うから、あのお店なら安心だ。


 そんなわけで、昼休みが終わる前に話を切り上げることになってしまった。




「へー。毎日のよーに呼び出しては話してるのにこれですかー……」

「いやー、けっこう優柔不断というかさ」


 なんだかんだで、橋川のことは好きだ。けれど、何もかも全部を一緒に過ごしたいとかデートに誘おうとか思ったりはしないラインだった。これがもっと「大好き」になっていったり、お互いのことをなんでも分かるくらいになったら――と思うこともある。


「命短し恋せよ乙女、だよ?」

「寿命百年の時代だし」


「若いうちに楽しんどいたほうがいいよ」


 エリは、なんだか妙に寂寥感を出している。


「ほら、最近って路上で見つかる人多いでしょ? 何が起きてるか分かんないもん」

「あー、なんかあったっけ?」


 我ながらアホっぽい答えをしたなと思うけど、そういえばそうだな、となんとなくで把握していた記憶を引っ張り出す。道端で倒れている人や死体が見つかることが増えている、とかなんだか暗いニュースが多かったような気がする。


 それでも(・・・・)――と。


 急に何か変なことを言いそうになって、私は言葉を飲み込んだ。

 すぐ後に打ち切った理由を所感として述べます。

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