表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/58

088 天へ導く光の注ぐ

 光っていいイメージなのに、「ろくでもない宗教」とかはだいたい白を纏ってる印象。


 どうぞ。

 ディーロさんの戦闘スタイルは「攻撃を受けながら攻撃する」という、ただ突き進むだけの単純なものだ。でも、それができるだけのステータスを持っていて、パーソナルスキルもそれを可能にしている。


「まあ、騎士系統の覚える特技は硬さに特化してっからな。受けるダメージさえ低けりゃ相手に与えるダメージの方がでかくなっていく。そういうもんだ」


 どのジョブでも受ける前提のビルドが作れるんだぜ、とディーロさんは笑う。


「耐性を上げて防御力を上げて、スキルツリーでもそういう効果を取りまくれば尋常じゃなく固くなれるからな……防御系統のやり方もあるが、攻撃的な受け方ってのもある。こっちは防御をさほど上げなくていい」

「あ、反射のことですね?」


「そう。反射とカウンターが「攻撃的な受け方」。カウンターはけっこう難しいんだが、反射はほっといても効果があるし、便利だな。ウィザード系なら反射の方がおすすめだ」


 武器で攻撃する職業は、相手の攻撃をかわしながら攻撃を叩き込む、というカウンターの方が強い。攻撃に使っている場所、例えば腕の裏側なんかはつねに防御が薄いので、エヴェルさんなんかがいつも使っている方法らしい。


「反射神経が相当よくないとな。お世辞にも一般人にできる方法じゃねえ」

「じゃあ、こっちは一般人向けですね」


「ヘタクソ向けでもあるがな……どうしても避けられない攻撃や、武器で防御したらダメージを受けるような魔法なんかを叩き返してやるにはちょうどいい」


 後衛にはまず起こらないことだけど、魔法が飛んできたとき、とっさに防御しようとしても防御手段はない。杖を構えても防御しきれないし、攻撃するということだけを考えているからどうしても防御は弱いのだ。


「魔法職には、そんなわけでいくつも反射特技を覚えるってオプションが付いてる。どれも完全反射でダメージが貫通しない、ありがたい仕様だ。おまけに反射した分は相手の耐性に関係ないダメージを与えられると来てる」




――ってえわけだから、どんだけ強い相手だろうが、魔法を撃ってきたんなら反射の餌食になっちまうってわけだ。単発魔法ならなおさらな。物理モンの完全反射は存在しないが、単発魔法だけなら無敵の対抗手段があるんだよ。



 着地した瞬間、ぐっと踏みとどまって完成した魔法の火球を見据える。


「〈リフレクトミラー〉」


 三つある完全反射魔法のうち、ひとつを詠唱する。クールタイムは五分、「無敵の対抗手段」ではあるけど、それは切り札だった。


 どす黒く燃え盛り、オレンジ色の炎をぐるぐると渦巻かせて、炎の球体はこちらへと迫ってくる。そして、空中の鏡面に少しだけ沈み込んだあと、来たときよりも早いくらいの速度で戻っていった。


『そんなっ……』


 相手の強さの秘密は――と考えていたけど、そんなものはない。対応の速度も私と同じくらい、性能や戦い方も同じだ。避けようとした体の横の部分に火球が炸裂し、大爆発を引き起こして、相手は地面に落っこちる。


「なら、攻略法も同じ」


 反対なのは弱点だけだ。


 魔法使いと妖術師を両方取ると、そこそこの魔法耐性が手に入る。「氷雪術師」によって耐性が変動したぶん火に弱く、氷に強くなってはいるけど、それでもマイナスではない。私には魔法耐性があるので、基本的にそれを心配する必要はなかった。


 掴まれただけで服が裂けて血がにじんだ事実の通り、私には防御力が足りない。鎧を着るとかもう少し防御力のある服を買うことはできなかったので、どうしても「服」という枠からは抜けられない、最低限の防御力だけだ。


「〈断雷刃(イカズチノタチ)〉!」


 氷属性は物理ダメージも伴っていて、相手の防御が薄いところに当たるとダメージがかなり上がる。ダメージ変動がないということは、相手は物理耐性だけ妙に高い、欠陥品の装甲しか持っていないということだ。そして、私と同じく「使う魔法と逆」属性には弱くて、関係ない属性はそれなりに通る。


 実を言うと光属性と水属性は、あまり使っていないこともあって勝手が分からない。ただし「裁きの力を持つ」魔法は別で、奈落から来たという竜虫に対してはとてもよく通じるらしいと聞いていたので、練習として少しずつ使っていた。


「……というか、交戦経験ないんだ?」


 知能のあるモンスターは人間よりも厄介だ、と聞いている。その理由はいくつかあった。


 まず、こちらの攻撃を「本能的に」だけではなく避けることがあるからだ。魔力の流れが分かったりする生き物はたくさんいるから、そういう回避はある。でもこちらが出した攻撃をすべて覚えていて、避け方や防御方法を自分で編み出してしまうモンスターがいる。


 そして、それが極まると人間を狩りに出ていくモンスターが現れる。人間はモンスターよりずっと弱くて、数もたくさんいる。ちょっとしたおやつにはもってこいなのだろう。人間を狩っているなら、人間への対処方法はそれなりに知っているはずだった。というか知らないなら出てこないはずだ。つまり、相手は殲滅してから残りをつまむようなスタイルで狩りをしていて、人間とまともに戦ったことは一度もなかったのだ。


『くうぅッ……!!』


 相手の方から、何か細長いものが飛んできた。それは左腕をドスンと貫いてそのまま私を引きずり、地面に突き刺さる。一瞬は短剣のように見えたけど、異様に大きなトゲだ。痛覚をもっと下げておけばよかった、といまさらのように思いながら、私はできるだけ痛くないようにそれを引き抜こうとした。


『〈フォールン・ゼニス=セーブ〉』


 怒りを込めた、包丁を向けるような声だ。


「〈カウンター・プロテクション〉!!」

『〈フォールン・ゼニス=バースト〉』


 光が滝のようにあふれ出す。どこから来た光なのかはわからないけど、それは夜が突然昼になったとかそういうレベルではない、目がつぶれたと確信できるような明るさの――まるで星の光を間近から持ってきたような、そんな光だった。


「――ァあ、――ッ!!」


 体全体が焼き焦がされていく。光というより熱で、全身がボロボロになるのが感覚として分かった。音と光と、おかしくなりそうなくらいのやけどの熱。


『ああ――ああっ……、熱いっ』


 オーゼルクは苛立ったような泣きそうな声で、少し怒っていた。


 私が使ったのは、防御力を上げる――と見せかけて、減算したぶんのダメージを跳ね返す支援系の特技だった。受けるダメージは半分ほどしか減らないけど、逆に言えば半分は相手に返せる。反射系特技の中ではかなり効果が低い特技だと思うけど、それでも十分だった。耐性による減算、防御力のぶんの減算、――もちろん、それは相手が受けるダメージでも計算される。


 私が減らした分のダメージ、プラスもともと反射することが決まっている分のダメージがある。それが相手が受けるダメージ……の、基本となる数字だ。だから、相手の防御力や耐性が低ければ、私が減算したより多くのダメージを与えることができる。弱いといえば弱いけど、使いどころによっては強くもなる。


『喰ってやる……!! 絶対に許さないんだから!』

「私だって、こんな光景許したくない!」


 知っている。


 透明な「ガルさん」が殺し尽くしたおかげでプレイヤーはすごく減っていた。瘴気への耐性を切らしてしまった人は苦しみながら息絶えて、デス・ペナルティーを受けた人は何にやられたのかもわからないまま、倦怠感と恐怖に押しつぶされている。


 死屍累々だった。突撃することしか知らない竜虫はひたすら死に続けて、私たちも闇討ちで殺されまくって、めちゃくちゃだった。


『食いちぎってやるっ!!』


 片目が潰れていても、反射で大ダメージを受けていても――痛みでパフォーマンスが落ちないのがふつうの生き物だ。むしろ人間はあまりにも弱すぎて、痛みさえ与えれば動きを封じられると誰もが知っている。


 でも、オートでやる動きは阻害されない。


 魔法の威力を5パーセント増す動きをさっと済ませた瞬間、私はがしっと掴まれた。


『この距離ならぜったい逃げられない……焼き尽くす!!!』


 光を呼び出す魔法〈フォールン・ゼニス=セーブ〉が放たれようとしたそのとき、私も一手を打つ。


「〈ラピッドヒット〉!」


 飛んできた黒い針が、あさっての方向に飛んでいく。


『あっ、まず』


 エヴェルさんの言葉を思い出す。



――敵が特技を使用したら、一度目は必ず回避、二度目も観察しながら回避だ。特徴をすべて見抜いたら、それを利用して相手を追い詰める……どうかな? さほど難しいことではないと思うがね。



 一回目で見抜いたから誉めてくれるかな、なんて考えてはいない。


 敵の攻撃の中でも、とくに大きな特徴を持つ攻撃はチャンスだと言われた。



――相手の必殺の一撃は、致命の隙でもある。付け入られることですぐさま危険をもたらすからだね。チャージ時間が必要な大技は筆頭だ。



 ネビュラサフィーアの〈フォールン・ゼニス〉は「ガイドビーコンを打ち込んだ場所に、高熱の光を出現させて相手を攻撃する」という大技だ。でも、この技にいくつも制約があるのはすぐにわかった。致命的すぎて、使わせる気があるのかと思ったくらいだ。


 ひとつ、ガイドビーコンを打ち込んだ場所にしか出てこないこと。当たり前すぎるけど、それは場所の調整をこちらが奪えるという意味でもある。


 ふたつめ、相手は発動タイミングをコントロールできないこと。時間差で撃てば私なんて簡単に倒せたはずなのに、そうしなかった。一瞬で使い尽くす、しかもタイミングの制御は不可能というめちゃくちゃな特技だ。


 みっつめ、これはもうギャグの部類だけど――彼女自身が光属性に弱いことだ。いったいどこの誰を相手にするつもりだったのか知らないけど、ふつうのプレイヤー集団なら反射特技のひとつやふたつ、最低でも半数が持っているはずだった。超火力に圧倒されて気付かなかったのかもしれないけど、彼女は自分の不得手とする属性も使える天才。それが仇になるなんて、考えていても実際には起こらなかったのだろう。


 ――だから。


 ガイドビーコンが自分のすぐ近くに来てしまえば、連鎖的に『それ』は起こる。


 ドウッ――――と、光の滝が噴き出した。中心点にまず着弾して一瞬で地面を真っ赤に燃え上がらせ、視界がゆっくりになるなんて言葉も燃え尽きるほどの速度でこちらに迫ってきて、神のように、その熱ですべてを平等に照らす。点が描いた図形の範囲内のみに対して光は降り注いだ。


『ぎゃああ――ッ!?』

「ぐ、っぐ……ぅ」


 熱耐性がぎりぎりで命をつないで、私はおかしくなった視界がゆっくりと戻ってくるのを感じた。図形の範囲内にいるものすべてが、耐性に応じてダメージを受けている。


『あ……あ、ぅあ』


 パーティーメンバーのステータスを見ると、メアの体力がいつの間にか回復していた。いいのか悪いのかは分からないけど、あっちも決着がついたみたいだ。そしてそれは、継続回復の復活を意味していた。


「終わら、せる……」


 片方の目がおかしくなっていて、右目しか見えない。


「――〈バスター・ボルト〉」


 暗雲の中を這っていた雷が、その色を変える。


 轟音が聞こえた瞬間、視界にあった大きな影は少しだけ動こうとした。でも、身じろぎした瞬間に細いシルエットの先がぼろりと欠け落ちて、その動きが止まる。


 激しい雷光の中で、黒いものが確かに消えたのを確認して――私は、気を失った。

 反射ダメージ強すぎる……自分でもガバ加減に驚いてます、なんやこれ。理屈としては……


(FZ一回目)

ユキカ:ダメージ半分カット+光耐性高め=大幅減算

オーゼルク:反射ダメージ半分+光耐性低=大幅加算


(FZ二回目)

ユキカ:ダメージ半分カット+光耐性高め=大幅減算

オーゼルク:反射ダメージ半分+光耐性低+直接浴びた=超大ダメージ


 のはずなんですが……体力自体がかなり少ない&魔法には弱いので、ゆっちゃんが頑張って削ったところに自滅攻撃しちゃったんでしょう、きっと。裁きの力があるというと光・雷、あと聖術師で覚える火・水あたりですかね。読者に解説しながら自分の理解を深める人間の屑。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ