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081 集う戦士

 活動報告で思わせぶりなこと書いちゃってすみません、もう少しだけ書き溜めようと思ったけど放出しておきます。


 どうぞ。

 アーグ・オンラインの「プレイヤータウン」は、ほかのゲームとは違うところがたくさんある。種族ごとに分かれていることは大きな特徴であり、明確な差別があることは大きな話題になった。差別問題をどう考えているのか、と物議を醸したのも記憶に新しい。


 それ以外にプレイヤーへの直接の影響力を持つところとして特徴的なのは、すべてに耐久度が設定されており、破壊可能であることだろう。


 無論これには理由があり、気象図などで確認できるが、「災害モンスター」なる生物が一定周期で訪れるためである。何が壊れても残っている建物があっては不自然だ、というのが運営の主張だった。当然のことながら、災害は一週間に一回などの頻度で訪れるわけではないうえ、原因のモンスターを討伐・殺害すれば未然に防ぐことが可能だ。「基本、台風と同じ」とされる彼らが訪れるのは一年のうちある時期に集中しており、それ以外の時期は平和なものだった。


 一定周期とはいうがどれほどか、という質問がなされることがあるが、これは無意味な質問だ。地震はいつ来るか、台風の進路を完璧に予測しろ、と言われてもどだい無理な話で、極端にランダムに設定されたタイミングを完璧に把握することができない。


 しかし、唯一の例外が一か所、ある山のふもとに存在する。




 プレイヤーのメタな都合として、必要経験値が多くレベルアップが遅い種族には、より多くの戦いが与えられるべきである。そのような理由でモンスターの襲撃が三か月周期、春夏秋冬それぞれに起こるのが竜人の小国「ルグーニオン」だった。


 プレイヤーが選択できる種族の中でも「竜人」はレベルアップがもっとも遅く、多くの戦いに出なければならない。それを解消するためかルグーニオン周辺にはモンスターが多く、国を大きくすることは容易ではなかった。加えて恐るべきことに、強大な力を持つ彼らの守護神「龍」をも食物とする化け物どもが、この世界には存在している。


 ルグーニオンにほど近い「禁忌の山」中腹にある洞窟は、やむにやまれぬ事情があって山に立ち入ったときにでも、決して訪れられることはない。その場所こそがこの世の地獄、剣山のような岩に覆われた地面、始終鳴り止まぬ何者かのおぞましい声、数々の呪われた逸話に彩られた「奈落の巣穴」である。


 転んだだけで全身を血みどろに砕いて死ぬとされる「剣の岩」、意地の悪いことに滑りやすい苔が生えた地面や、洞窟の奥から聞こえる嫌な音、声。そしてなによりこの洞窟から季節ごとに龍を恐れない虫どもが湧いて出ることもあり、竜人からは爆破して埋めるよう要請があるほど忌み嫌われ、恐れられる場所だった。


 しかし、不思議なことに洞窟を爆破して埋めることはできても、次の日にはそれが復元されていることに彼らは気付いた。望遠鏡で様子をのぞいたものが発狂したという噂もあるが、それは嘘である。正確には、内側からどろどろとしたなにかが湧いて出て、器用にも崩れた岩を貼りつけ、形をもとに戻したというのだ。


 竜人に付きまとう呪い、その姿はある洞窟という形で表される。


 そしてそんな洞窟の中でも、季節は夏になろうとしていた。




 たぷん、と黒い液体が揺れる。波にはいちいち意味があるが、それを読み取るのは至難の業だ。異文字解読系スキル「読書」を究め「解読」へと至り、さらに「異形解読」へと成長させなければ何を感じ取ることもできない。


 同じものが連続し、大きな波、小さな波、雨が降るように色とりどりの雫が垂れる。限りなく美しい光景であるが、意味するものは「怨念」、それも数十ではきかない死が積み重なって物理的に何らかの影響を及ぼす域へ至ったものだ。どろどろとした何者かの怨念が凝り、固まり、黒い液体をとぷ、たぷと揺らす。


 悲鳴やうめき声、苦鳴、泣き声、狂笑が絶え間なく響いているが、大した問題ではない。むしろ怨念の集まる場所にそれらすべてが揃っていない方が不健全だ。音の発生源はもちろんのこと液体なので、この世のものらしい音は出てこない。当たり前のことだった。そんないつもの様子から、少しだけ離れた光景が広がる。


 何かの触覚のようなものが生まれ出て、即座に死ぬ。


 複眼がにゅっと突き出すが、瞬間に引っ込み、二度と出てこない。


 爪を備えた足が壁を掴んだが、恐ろしい力で引き戻され、暴れながら消えた。


 出て行こうとするものの足を引っ張っているわけではない。何が出て行こうが自由、生まれ出でたものはみな等しくすべてに忌まれ呪われており、まさかぬるま湯に浸っていたい怪物などいようはずもない。

 であれば――永劫に澄むことがない黒い液体の中に、何かがいるのだ。


 この「奈落の巣穴」から生まれる呪われし者どもを己の糧に変えんがため、生まれたそばから喰らい尽くす何かがいるのだ。闇に生まれ怨を喰らい、呪を糧として穢を寝床とするような、恐るべき怪物の成長を見過ごしていることになるのだろう。


 立ち入っただけで獄毒を吸い込み血を吐いて死ぬ、とされる「奈落の巣穴」は、いつもとは少しだけ違う様子だった。



 ◇



 私はルグーニオンに来ていた。いつも通りメアも一緒で、キューナもいる。


「いつ見ても強そうだよね、キューナ」

「えへへー、そうでしょ? 修行の日々は厳しかったんだよ」


 もう夏も真っ盛りだ。始めて三か月は経つので、私たちもかなり強くなっている。私は「大魔法使い」「氷雪術師」「妖魔術師」「踊り子」「聖術師」と五つも職業を持っていて、最後のもの以外はレベルの上がりもいいので、じきにもっとランクが上がる予定だった。


「ガンナー系って消費が大きいから、サポートと組み合わせるの必須なんだよ。最初のときは強かったけど、最近きつめ」

「消費MP軽減を常にかけておかないといけませんね」


 カートリッジ式の法銃は、何種類かの魔法をあらかじめ仕込んでおいて、MPを注いで引き金を引いた瞬間に弾丸として撃ちだす仕組みになっている。普通の魔法より消費が少ない分、引き金を引く手間やわずかなタイムラグが命取りになりがちらしい。


「ダンジョンのボスをソロで倒したってほんと、キューナ?」

「うん。無理かなって思ったけど、ユニークボスじゃなかったし」


 ユニークじゃなければ倒せるっていう自信は何なんだろうか、すごい。


「でも、銃は二丁か四丁持たないとダメなんだよね……」

「多すぎない? なんで?」


「武器の特徴とか橋川から聞いてない? 物理精製弾(マテリアル)魔法弾(マジカル)は一緒に装填できないからだよ。マテリアルはもう、ほんとお金かかる」


 いちおう、いわゆる「二丁拳銃」スタイルみたいだけど、その二丁が片手ずつで違うらしい。属性の使い分けならいいけど、物理と魔法の使い分けはすごくめんどくさそうだ。同じ銃を何丁も、というと現実よりコストが大きいと思う。


 持ち手にカートリッジを差し込むタイプの拳銃に似ているけど、入っているのは弾丸じゃなくて魔法の術式か弾丸の材料だ。術式が入っているタイプは持ち主の魔力を変換して魔法の弾丸に変え、撃ち出す。弾丸の材料入りタイプは魔力を注入することで弾丸を作って撃ち出す。どっちにしてもMPは消費するけど、物理弾の方が撃ち出す瞬間の消費は少ないみたいだった。


 辺りを見回すと、普通のプレイヤータウンみたいな雰囲気ではなく、これから戦いが始まることが決定されているような、かたくこわばった空気だった。


「パルベンテイスは居心地よかったのに……」

「季節柄、殺伐としているのは仕方ないことです」


 決定されているような――というよりは、文字通り存亡の危機だからだ。戦いに使える力を持たない人たちはあらかじめ避難しているし、レベルが低かったりしても最前線には出されず、後ろの方で待機することになる。ぎりぎり二つ名の成長ボスを倒せるかどうかというくらいのプレイヤーが最前線で相手を削り、倒しそこねたり負けたりすると後ろに控えているベテランが倒してくれる、ということになっていた。


「今回の相手は、ベテランの手にとってはそこそこの強敵だそうです」

「……それ、初心者向けじゃないよね?」


 キューナが呆れている。私も同じことを思った。


「成長ボスはそんなもの……なんだとか。相性のいい悪いが半分、本人の力が残り半分。私たちにその力があれば、きっと倒せます!」

「いいことを言うね。……時間だ、こちらへ来てくれたまえ」


 エヴェルさんの褒め言葉に「はい」とあいさつを返してから、私たちはルグーニオンの防衛を何十年もやってきたというザルグ・バ・レクド師のところに集まった。




「諸君、きみたちには関係のない事情であるにも関わらず、今夜ここに集ってくれたことに最大限の感謝を。時間がないので手短に説明する」


 奈落のモンスターは全部「竜虫」という虫型のモンスターで、攻撃性能が異常に高い。その代わりに防御は薄くて、防ぐか避けることさえできればたくさんの数を倒せる、という説明だった。


「いつもならボスが外に出てくるのは今日が最初で最後だが、今回は外に出てきたうえ、その様子や能力を詳しく知ることができた。敵は一体、ドラグーンフライの上位種であるドラグサフィーアの変種「ネビュラサフィーア」である」


 魔法攻撃や噛みつき、爪のひっかきを高速飛行しながら行う、わりと強い敵だ。レベルはふつう五百くらい、成長ボスなので最大で七百くらいだろう、ということだった。


「これだけの人数で行うので、誰が報酬を手に入れるかなど考えないように。ランダムドロップだと考えてもらいたい。それでは部隊を分ける」


 パーティー単位で組んでいる人はそのまま、ソロの人もそのままらしい。レベルや熟練度ごとに「ルーキー」「ミドルクラス」「ベテラン」に分けて、ルーキーとミドルクラスが直接戦闘に打って出る。


「ミドルクラスは斥候としてボスを探し、ルーキーたちが苦戦しているところを見かけたら率先して助けるように。ルーキーはひたすら先へ進み、多くの敵を倒し、できればボスをも倒してもらいたい。世界人への被害を減らすため、遊生人たちに率先して山へと登ってもらう……以上」


 確実に成長ボスの討伐報酬が手に入るからだろうか、動き出した人数は百人くらいいるようだった。その中で、私たちもと思った瞬間――


「来たぞ!!」


 砂鉄の塊がどろどろ流れてきたような、恐ろしい霧が山から下りてきた。


「魔力は吸収されるため、通信や伝達はいっさい行えない。健闘を祈る!!」


 メアが何かを唱えて、私も吸収耐性の動きをとって、パーティー三人に「吸収耐性」のバフがついた。


「これってさ……本当に大丈夫なのかな?」

「不安がっていても仕方ありませんよ」


「そうそう。ユキカらしくないよ?」

「うん……がんばる」


 歩き出したルーキーたちの装備は、みんな似たり寄ったりのレーティングらしい。ミドルクラスの人たちだと妙にいい鎧を着ている人もいるみたいだけど、私たちは中級に到達するかしないかくらいの装備だ。


「目的が何であっても、結果はいいことなんですよ」

「あ、それもそっか」


 報酬装備目当てでも、街は守られる。


「行こっか」


 キューナが歩き出したのを、私とメアも急いで追った。

 ちょっくら時系列シャッフルしてあります……奈落で液体の中に潜んでるの、今回のボスちゃん幼虫時代。あれ以降は……。法銃の使い方が作者の中でしっかり定まったので、キューナの使ってる銃の細かい使い方も出てきたり、説明書を書いたり。


 ルグーニオンが狙われる理由はかなり後にならないと出てこないはず。いま出てきてるのはブラフ、もしくは表向きの説明ですかね……襲撃イベント最終話あたりで、うっすらと見えるかな?

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