序章
初めての投稿作品になります。
遅筆ですがどうぞお付き合いくださいませ。
とある部屋の中で少女は嘆いていた
「どうしてこうなった…」
「どうしたのベティー?顔色悪いけど大丈夫?」
ベティーと呼ばれた少女は気だるそうに顔をあげて話しかけてきた女子生徒に答える。
「ううん、大丈夫よレーナ。ちょっと自分が置かれた状況を思い返しているだけだから…」
「大丈夫ならいいけど無理しないでね?ここ最近ずっと表情暗いからちょっと心配かな」
「だから大丈夫だって、そんなに心配しなくても死にはしないよ」
ベティーは心配そうに見ているレーナに引きつった笑顔で返した
「大富豪のお嬢様のヒモになりたいって夢見てたけど…まさか自分自身がその大富豪のお嬢様になってしまったなんて…」
ベティーは自分の身に起きたことを振り返る。
ベティーが「少女の姿になる前」はごくごく平凡な男であった。
学生時代の成績は中の上から上の下くらい。平均より成績はいいが、いわゆる天才秀才には遠く及ばない
容姿も平凡のそれである。強いてあげるならば少し童顔で細身なくらいしか特徴がない
どこにでもいる平凡な少年だった。
やがて少年は私立高校に進学するも状況は大きく変わらず。
気づけば内部受験で進学した大学も卒業し、社会人になっていた。
…なっていたはずである。少なくともあの時までは。
その日の朝もいつものスマホのアラームで目覚めて、簡単な朝食をとっていた。
「たしか、会社行くために駅まで歩いて、電車に乗ったのは覚えているんだけど」
自分の置かれた状況に納得できないでいた。
いつもの通勤電車に乗ったのまでは覚えている。
普段見かけない服を着た女の子と目があったのも印象に残っている。
そして珍しく座席が空いていたので座ったところ急に眠気が襲って来たのだ。
男であったときの記憶はそこで途切れている。
電車で寝ていたはずの男はなぜかふかふかのベッドの上に寝ていた。
「悪い夢を見ている…わけじゃないよなぁ…」
鏡に映っている外見年齢はどう高く見積もっても15歳ほど。
二次性徴前なのかどうかは判断しかねるが起伏の乏しい体型。
元々声は高いほうであったが、それとは明らかに異なる声質。
「小説ではよく異世界に転生!って作品読んでたけどまさか自分が女の子になっているとは」
常日頃こんなお嬢様に養ってもらいたい、そう妄想していた少女になっていた。
鏡を見ながら動揺していると部屋の外から声が聞こえる。
「ベティーナお嬢様どうかされましたか?朝からそんな大声出されまして?」
部屋の外から聞いたことが無いはずだが違和感もない女性の声が聞こえる。
「い、いえ…なんでもな…ありませんわ」
「それならいいのですが…。朝食の準備はできておりますので冷めないうちにお召し上がりくださいませ」
「う、うんすぐ行くわ」
どうやら本名はベティーナ・ヘルマン、ヘルマン家の一人娘のようだ。
部屋にあった本を見ると元々いた世界の近代ヨーロッパに近い世界ということらしい。
らしいというのもいわゆる西暦表記ではなく別の表記で、世界史はそこまで得意ではなかったがそれにしても聞いたことのない暦だったからである。
「この服も初めて見るはずなのに、どうも初めてって感じがしないんだよな」
「お嬢様?そこにどなたかいられるのですか?」
不審に感じたメイドが再度部屋の外から声をかけてくる。
「な、なんでもないですわ。すぐ行きますから準備しててくださいな」
「かしこまりました、お嬢様」
メイドが部屋の扉から離れる気配を感じた。
「そもそもここってどこなのさ…」
少女はため息をつきながらハンガーにかかっている服に手を伸ばした。
「この部屋で考えても答えは出ないからとりあえずご飯食べますか」
ベティーは手際よく着替えて、食堂に向かうのだった。
次回は5月中には投稿できたら…