賢者とガチンコ
俺達は武器屋から出たあと飯を食うべくギルドに向かった。そして飯を頼み、食べているとリディが話しかけてきた。
リディ「誠さん、明日は何する予定ですか?」
誠「明日?特に決めてないけど…ダンジョンかな?」
リディ「やっぱりですか…。」
セナ「どうかしたの…?」
リディ「いやだって、もう最後じゃないですか。」
誠「…え!?」
ベル「えって…忘れてたんですか…?」
セナ「忘れてた…。」
誠「同じく…。」
俺は次が最後のダンジョンだということを知り、飯を食いながら物思いに更けていた。が、正直ろくな思い出がなかった。
剣聖「そっか…もう最後か…。」
誠「お前も忘れてたのかよ…。」
剣聖「うっ…。」
リディ「今までよくやってこれましたね…。」
アイラ「確かに…。」
千夏「否定しましょうよ…。」
そんな会話をしたあと俺は急いで飯を食い、飯を食べ終えてから素早く立ち上がった。そして皆の方を見て、
誠「よし、帰るぞ。」
アルス「もうですか?」
誠「明日に備えるんだよ。」
女神「ああ、なるほど。」
少し早歩きで家に帰りすることを済ませ、俺は布団に潜り込んだ。色々と思うこともあった、はずなのに俺はすぐに眠りにつき昼まで爆睡していた。
誠「…ん…。」
ベル「やっと起きましたか…。」
剣聖「毎度毎度よくそんなに寝れるね…。」
誠「わ、悪い…。」
セナ「誠…そろそろ出ないとまずい…。」
誠「お、おう…!」
俺は急いで家を出る支度をして外に出た。外にはいつも通り皆が待っていた。俺は少し嬉しさを感じ笑みを浮かべながら皆に近づいた。
アイラ「なにニヤニヤしてるんだ…お前…?」
女神「ちょっと気持ち悪いですよ…。」
誠「わ、悪かったな!」
いつもと変わらず下らない話をしながら、馬車で最後のダンジョンに向かった。今回のダンジョンは闘技場のような形状をしていた。
千夏「着きましたね…!」
誠「だな…!」
ベル「行きますか…!」
剣聖「うん…!」
俺達は足並みを揃えてダンジョンに入った。ダンジョンの中に入ると巨大な何かが真ん中にあり、その手前に自慢気な顔のグロウルが立っていた。
グロウル「来ましたか…誠さん…!」
誠「おう…!」
グロウル「もう言葉はいりませんね…では最後のダンジョン攻略頑張って下さい…!」
そう言うとグロウルは転移魔法で闘技場の観客席に転移した。そしてそれと同時に巨大な何かが動きだし、人の形を造り出した。
アイラ「な、なに…あれ…?」
アルス「巨大な…人…?」
巨大な人影は日を浴びその全貌を見せた。顔が三つ、腕、足が六本、それぞれ意思を持つように動いていた。
グロウル「どうです?驚きましたか?」
誠「驚いたというか…キモいんだけど…。」
グロウル「なっ!?その方は賢者様なんですよ!失礼です!」
誠「け、賢者!?」
ベル「賢者って確かダンジョン造った人ですよね…?」
アイラ「なんでこんなところに…?」
俺達の表情を見て可笑しく感じたのか、賢者と呼ばれる化け物の三つの顔が同時に笑い始めた。…笑うと余計にキモいなこいつ…。
賢者1「頼んだんじゃよ…」
賢者2「あそこの魔王様に…」
賢者3「最後のダンジョンは我々に守らせてくれ、とな。」
アルス「そ、そうだったんですか。」
賢者1「…さて、無駄話はこれくらいにして…」
賢者2「そろそろ戦おうではないか…」
賢者3「さあ!正々堂々一人ずつかかってくるがいい!」
そう言って賢者は六本の手を互いに付けて唸り始めた。すると手と手の間から光が漏れ、手を離すと六本の剣が現れた。
誠「せ、正々堂々って…お前三人分じゃん…。」
賢者1「若者よ…」
賢者2「小さいことを気にしていると…」
賢者3「立派にはなれないぞ。」
誠「うっせえな!じゃあ俺一人でやってやるよ!」
女神「ま、誠さん…一応偉い人なんじゃ…」
誠「いいから下がってろ!」
俺は若干ヤケになりながら剣を抜き構えた。そして賢者も剣を握り、俺に向かって六本一気に振り下ろしてきた。
誠「くそったれが…!」
俺は六本の剣を避け闘技場の壁を足場に、賢者に向かって全速力で飛びかかった。が、流石は賢者だった。俺の動きに反応して賢者は剣を構えていた。
賢者1「フッ…」
賢者2「近頃の若者は…」
賢者3「この程度か。」
誠「いちいちうるせえな!」
俺は空中で無理に体を捻り、剣の間を潜り抜けて賢者の胸元を斬りつけた。すると賢者の顔つきが変わった。
賢者1「素晴らしい…」
賢者2「反射神経だな…」
賢者3「小僧…!」
誠「そっちこそな…!」




