傑作と暴発
セナとアイラが活躍したあと、俺達は次の階に向かうべく階段を上っていた。すると活躍できない組の愚痴が後ろから聞こえてきた。
アルス「さっきも結局活躍できませんでしたね…。」
女神「ですね…。」
ベル「もっと明るくいきましょうよ…。」
千夏「そ、そうですよ!ポジティブにいきましょう!」
アルス「そうですよね…頑張ります…。」
女神「私も…頑張らないとですね…。」
女神とアルスは俺達に向かって笑顔を見せたが、ひきつり過ぎているせいで空元気なのがよく伝わってきた。
誠「まあ…なんというか…あんまり気に病むなよ…。」
女神「はい…。」
アルス「…でも女神さんはいいですよね…。」
女神「なにがですか…?」
アルス「だって誰かが死ねば活躍できるってことですよね…。それに比べて私は最初しか…」
女神「…はっ!なるほど…つまり誰かを殺せば活躍できるってことですね…!」
剣聖「確かに。」
誠「確かにじゃねーよ、お前らサイコパスか。」
俺は冗談に聞こえない仲間の発言に、若干引きながらそう答えた。そのあと前を向こうとした時、俺の前を歩いていたアイラとセナが立ち止まった。
アイラ「…あれ?なんだここ?」
セナ「なにもない…。」
誠「…?なにもないってどういう…」
セナとアイラを押し退け様子を見ると、確かに魔物もいなければ何か置いてあることもなかった。不思議に思い見回していると、
誠「あ、ここ俺が片付けたとこか。」
ベル「ああ、なるほど。」
アイラ「…てことはもう終盤か?」
誠「多分な。」
俺はそう言いながら奥の階段の方に向かった。すると皆もついてくるように階段に向かって歩き始めた。階段を上りきり部屋を見ると、グロウルが一人で立っていた。
誠「お、グロウルか。」
グロウル「誠さん、よくここまで来ましたね!」
誠「テンション高いな…どうした…?」
グロウル「実は凄い魔物を造ることに成功したんです!」
ベル「凄い魔物ですか…ワクワクしますね!」
誠「だな、早く見せてくれよ。」
グロウル「もちろんです!」
グロウルがそう言うと突然塔が揺れだし、俺達は外に放り出されてしまった。何が起こったかわからず周りを見ると、さっきまで塔だったはずの物が巨大な人形の像に変わっていた。
千夏「な、なんですかあれ!?」
ベル「凄い魔物って言うだけありますね…!」
アイラ「てか落ちてる!落ちてるんだけど!」
女神「…はっ!ここで皆死ねば活躍できる…!」
誠「言ってる場合か!」
このまま落ちれば間違いなく全員死ぬ。なんとかしようにも策が浮かばない。そんな絶望的な状況になったその時、像の右手が俺達を握り地面に下ろしてくれた。
誠「な、なんで助けたんだ…?」
グロウル「私が操作してるからですよ!」
声のする方を向くと、像の頭の上でグロウルが腕を組み、ドヤ顔をしながら立っていた。すると像も一緒に腕を組みドヤ顔をした。
グロウル「さあ!正々堂々と戦いましょう!」
誠「お、おう…。」
セナ「魔王が正々堂々…」
誠「言ってやるなよ…。」
グロウル「いきますよ!」
そう言うとグロウルは右手を握りしめ、思い切り突き出した。すると像もグロウルと同じ動きをして、俺達に殴りかかってきた。
誠「いいね…!お前ら手出すなよ!」
アイラ「はいはい…。」
千夏「頑張ってくださいね!」
俺は剣を抜き像の握り拳に向かって飛びかかった。そして剣を像の拳に突き刺し体を剣で支えながら、前宙して像の腕を駆け上がった。
グロウル「フフン…!叩き潰してあげますよ!」
誠「やってみろよ!」
グロウルは左手を右腕に叩きつけるように、勢いよく振り下ろした。恐る恐る上を見上げると俺に向かって像の左手が迫りよってくるのが見えた。
誠「へっ…遅いな!」
俺は足に全力で力を入れ、像の頭に向かって勢いよく飛んだ。そしてギアブレイクを発動させ、X字に斬り裂いた。すると像は四方八方に飛び散り、俺とグロウルの体は空に向かって飛んでいた。
誠「わ、悪い!久々に使ったから加減が…ってグロウル?」
グロウル「ああ…私の魔物が…傑作だったのに…ブツブツブツ…」
誠「お、おいグロウル!しっかりしろ!そして何とかしてくれ!」
グロウル「ブツブツブツ…。」
段々と血の気が引いていく。そして俺はこの日この瞬間、生まれて初めて走馬灯というものを見た。




