表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺だけが神速の異世界で  作者: apple_pie
55/84

戦術と勝利

俺は暫くの間、ギルドでリディと話しながら時間を潰していた。八時頃になるとギルドの扉が開き、皆が入ってきた。


ベル「あ、誠さんおはようございます。」


誠「おはよう。」


アイラ「今日は随分早起きだな。」


誠「何故だろうな…。」


セナ「ソファーから落ちたの…?」


誠「ご名答…。」


皆はそれぞれ席に座り、朝ごはんを頼んだ。飯を食べながら話をしていると、アルスが今日の話をしてきた。


アルス「誠さん…今日大丈夫なんですか…?」


誠「…なにが?」


剣聖「ダメだこいつ…。」


誠「…なんかあったっけ?」


グロウル「誠さんの偽物のことですよ!」


誠「ん?あー…まあ、平気じゃない?」


リディ「軽いですね…。」


誠「だって相手は俺だろ?ならきっとどこかで凡ミスするさ。」


アイラ「自分の事低く見すぎだろ…。」


当然だろう。我ながらこの世界に来てから暫く経つが、一度もかっこよく敵を倒した覚えがない。どうせ俺なんて無駄に足の速い能無しなのさ…。


誠「はあ…。」


千夏「どうしたんですか…?」


誠「いや…なんでも…。それより、夜までなにするかな…。」


剣聖「確かに…夜まで結構時間あるしね…。」


誠「…よし!じゃあ夜に備えて準備するか!」


ベル「…なんでニヤニヤしてるんですか…?」


俺は皆を連れて外に出た。着いた先はピンクの装飾が施された、いかにも危ない感じの店だ。それにしても…なんだか皆の視線が冷たい気がするな…。


アルス「誠さん…なんでこんなところに…?」


誠「はあ…仕方ない…説明しよう。まず相手は俺だ。そして俺はエロい事に目がない。つまり…皆がエロい格好をすればきっと…」


アイラ「するわけないだろ!」


誠「…え?」


剣聖「え?じゃないでしょ…。」


誠「嘘だろ皆…勝ちたくないのか…?」


ベル「いや…他の勝ち方考えましょ…」


誠「思い付かない。」


ベル「…即答ですか…。」


誠「うん、全っ然思い付かない!」


グロウル「…ね、熱意が凄いですね…。」


誠「やっとわかってくれたか!」


グロウル「いや…そういうわけでは…。」


何故だ…何故こんなにも熱弁しているというのに皆して俺を否定するんだ…。わからない…わからない…。


ベル「あの…誠さん?もうギルドに戻りませんか…?」


誠「…チッ。あーあ…チッ。わかりましたよ…チッ。戻ればいいんでしょ戻れば…チッ。」


アイラ「どんだけ舌打ちするんだよ…。」


ギルドに戻ったあと俺達は、結局なにもすることなく夜を迎えた。俺は嫌々ながら重い足を門の外に運んだ。そこには月に照らされた俺の偽物が立っていた。


誠?「よう、やっと来たか。」


誠「…来てくれてありがとうございます、だろ?」


誠?「ヘッ…大口叩けるのも今の内だぜ?俺はお前を倒して…」


誠「ああ…もうそういうのいいから始めようぜ…。」


誠?「…我ながら冷たいな…お前…。」


誠「ほらいくぞー!」


俺は全力で偽物に突っ込み、不意打ちを狙った。が、流石は俺の偽物。素晴らしい反射神経で俺の剣を受け止めた。流石は俺の偽物。


誠?「ヘッ…不意打ちのつもりか?」


誠「はあ…たまにウザいのが難点だな…。」


誠?「お前…それ自分に言ってるようなものなんだぞ…?」


そう言いながら俺の偽物は俺の剣を軽く弾き、俺を蹴飛ばした。皆の方まで飛ばされた俺は違和感を感じた。


誠「…なあグロウル?あいつって俺と同じステータスなんだよな…?」


グロウル「え?そうですけど…?」


誠「だよな…。」


おかしい…あいつはノーモーションで俺をここまで蹴飛ばした。もし俺がノーモーションで人を蹴飛ばしたら、ここまでは飛ばないはず…。


誠「なあグロウル…魔物って夜になると強くなるのか?」


グロウル「そ、そうですけど…あっ!」


誠「だから夜に呼んだのか…。」


誠?「そういうことだ…!」


偽物は剣を俺の方に向けて、とてつもない速さで近づいてきた。俺はその剣を受け止めるのが精一杯だった。力負けするのも時間の問題だろう。


誠「ぐ…ぐぬぬ…!」


誠?「ヘッ…どうした?その程度か?」


誠「この野郎…調子乗んなよ…!」


俺は偽物から少し離れてから剣で、思い切り地面を斬りつけて砂煙を起こした。相手は俺だ、きっと勝てる。


誠?「くそっ…時間稼ぎのつもりかっ!?」


砂煙が晴れて偽物は俺に気づき、その途端俺に斬りかかってきた。俺は恐れることなくその場から動かなかった。


誠?「ヘッ…諦めたか?…じゃあこれで終わりだ…ギアブレイク!」


誠「…ギアブレイク!」


互いの剣がぶつかったとき、辺りは轟音と衝撃に包まれた。そして俺の目の前には折れた剣を持ち、血を流す俺の偽物が映っていた。


誠?「ガハッ…!ば…かな…!力は…俺の方が上の…はず…!」


誠「残念だったな。今の俺の力は999、カンストだ。」


誠?「そん…なの…ありえない…!」


誠「ありえない…か、じゃあ教えてやるよ。実はな砂煙を起こした時に、アルスに支援魔法をかけてもらってたのさ。」


誠?「なん…だと…!?」


その言葉を最後に、俺の偽物は粉々に散った。俺が剣をしまうと、皆が安堵の表情で近づいてきた。


セナ「お疲れ誠…。」


アルス「流石です!誠さん!」


誠「いやいや、アルスのおかげだよ。」


千夏「誠さん…怪我はないですか?」


誠「大丈夫だよ。ちょ、大丈夫だから…触りすぎ…触りすぎだ。」


千夏「…よかった。」


グロウル「誠さん…その…ごめんなさい。迷惑かけてしまって…。」


誠「平気平気。気にすんなって。」


俺は暫く皆にチヤホヤされた。こんな感覚は久しぶりだったので、俺の鼻はどんどん高くなっていた。そして、


リディ「じゃあ、そろそろ帰りますか。」


アイラ「誠!今日は宴会だな!」


剣聖「どうしたの誠?来ないの?」


誠「いや…支援魔法切れるまで動けないんだけど…。」


アイラ「…じゃあ先行ってるからな!」


誠「えっ!?ちょっと待って!置いてかないでよ!」


俺は約一時間もの間、その場に立ち尽くす羽目になってしまった。…やっぱりアルスの支援魔法は使いづらいな…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ