だるさと癒し
誠「ただいま…。」
返事はなかった。もう夜も遅いし皆寝てしまったのだろう。まったく…あの暑苦しい男共め…絶対に許さん…。
誠「ふう…。」
俺は風呂に入ったあと自分の部屋のベッドに飛び込み、ゆっくりと目を閉じた。疲れていたからかすぐに眠ることができた。
誠「…ん…。」
俺は目を覚ました。起き上がろうかと思ったが疲れがまだ残っているようで、俺は起き上がるのをやめてもう一度眠りに付いた。
誠「…ん…?」
ベル「あ、やっと起きましたか。もう昼過ぎですよ。」
誠「ああ…うん…。」
俺はだるさを感じながらもリビングに向かった。そして椅子に座り皆の話を聞いていると、何回か眠気が襲い意識が飛びかけた。…こんなに疲れていたとは…。
セナ「大丈夫…?」
誠「…え?なにが…?」
アルス「なんだか疲れた顔してますよ?」
誠「ああ…まあ確かに…疲れてるかも。」
アイラ「ちゃんと寝たか?」
誠「…そりゃもうグッスリと…。」
二度寝までしたというのにこの気だるさ…一体なんなんだ?…というか回りにこんなに女がいるのに疲れを感じるなんて…。
誠「……。」
俺はふと皆の顔を見つめた。皆かわいい…かわいいんだけど癒しを感じない…。女神のような癒しがない…。
剣聖「…どうしたの急に?」
千夏「あんまり見つめられると恥ずかしいですよ…。」
誠「……。」
皆を見つめていると、不意に女神に会いたくなってしまった。俺は黙って癒しを求めるべく、リビングに置いてあった自分の剣を手に取った。そして剣先を自分の腹に向けた。
誠「…ふっ!」
ベル「ちょ、ちょっと!何やってるんですか!?」
誠「頼む…!死なせてくれ…!」
ベル「何言ってるんですか!」
千夏「そうですよ!急にどうしちゃったんですか!?」
誠「俺は癒しが…癒しが欲しいんだ…!」
アルス「お、落ちついてください!」
誠「死なせてくれえええ…!」
俺は頑張って死のうとしたが、皆に止められてしまい死ぬことができなかった。更に部屋に閉じ込められ、何もできなくなってしまった。
誠「ああ…誰か身近に癒しをくれる人…いないかな…。」
俺は思考を巡らせた。転移魔法があるから行こうと思えばどこへでも行ける。しかし…皆の前に現れたら、きっとまた部屋に連れ戻されるだろう…。多分リディも忙しいだろうし…。
誠「…待てよ?人じゃないけど頼れる奴がいるじゃないか!」
俺は早速自分に転移魔法を使った。着いた先は見覚えのある、若干ボロボロな城内。そう、魔王グロウルさん家だ。
グロウル「…何の用ですか。」
誠「実は最近疲れがとれなくてさ、だから俺を癒してくれな…」
グロウル「嫌ですよ…。」
誠「なんでっ!?」
グロウル「私は今仕事中なんですよ…。」
誠「そんなの後でいいじゃん!」
グロウル「凄い身勝手ですね…。はあ…。」
グロウルはため息をつきながら地面に座ると、膝の辺りをポンポンと叩いた。その手には耳掻き棒が握られていた。
誠「…耳掻きしてくれるのか!?」
グロウル「仕方ないですからね…。」
誠「ありがとう…!」
俺は喜んでグロウルの膝に頭を乗せた。柔らかく暖かい感触だけで俺は癒しを得た。そのあとグロウルの耳掻きが始まった。
誠「ああ…幸せだ…。」
グロウル「はあ…仕事が…。」
誠「…仕事ってどんな仕事なんだ?」
グロウル「新しい魔物の考案ですよ。」
誠「なるほどな…手伝おうか?」
グロウル「えっ、いいんですか?」
誠「任せなさい。」
俺は魔物のイメージを膨らませた。やっぱり魔物と言えばドラゴンとかだろうか。でもそんなのできるのか?
グロウル「どうですか?何か思い付きましたか?」
誠「んー…微妙だな…。」
グロウル「そうですか…あ、片耳終わりましたよ。」
誠「お、ありがとう。」
そう言いながら俺はグロウルの膝の上で体を回転させ、逆の耳を上に向けようとした。が、グロウルはそれを手で防いだ。
誠「なんで嫌がるんだよ…!」
グロウル「お腹の方向くのはダメです!」
誠「なんで!?」
グロウル「絶対変なことしますから!」
誠「しないよ!てかお前確か変態だろ?ならいいだろ!」
グロウル「ち、違います!今は…ほら、仕事モードなんです!」
誠「…なるほどな…なら俺がそっち系のモードにしてやるよ…。」
俺が手を揉むように動かしてグロウルに近づくと、俺はグロウルからげんこつを喰らった。
グロウル「帰ってください…!」
誠「ま、待って…逆の耳やってからにして…。」
グロウル「…やりますから、やったら帰ってくださいね!」
誠「ありがとうございます…。」




