イイコトと新人
誠「…なんか面白いことないかな…。」
俺達はギルドで暇を持て余していた。ダンジョン攻略したあとはすることがなくなるから困るんだよな…。
グロウル「面白いことというと…例えばなんですか?」
誠「んー、そうだな…イイコトしたいなー。」
ベル「うわ…正直者ですね…。」
セナ「流石に引く…。」
剣聖「最っ低…。」
次々と俺に向けられる冷たい視線と罵声を掻い潜るように、俺は言い訳を考えて強めに言い放った。
誠「…仕方ないだろ、俺だって男の子なんだぞ。」
アイラ「だからって…。」
アルス「リディさん、イイコトって何ですか?」
リディ「…さあ?」
誠「イイコトっていうのは…」
そこまで言ったところで俺の言葉は、リディのげんこつによりうめき声に変わった。リディのげんこつ毎回毎回痛いんだよな…。
ベル「そもそも何で男の子ってイイコトしたくなるんですか…?」
誠「なんでって…しないと生きていけないから?」
剣聖「なら勝手にやってればいいじゃん…。」
誠「相手がいないから困ってるんだよ…。」
グロウル「ならサキュバス作ってあげましょうか?」
誠「いらないよ…他人の聖剣にイイコトとかしてもらいたくないっつーの…。」
アイラ「相手なんかいなくても自分で済ませればいいじゃん…。」
誠「自分で済ませるってどうやるのかな?教えてほしいな~?」
アイラ「…お前本当に最低だな…。」
…確かに今のは酷かった…。まずい…イイコトができなさすぎて理性を失いつつあるみたいだ…。結局俺はどこに行っても非リア充な存在みたいだな…。
誠「ああ…。」
ベル「急にテンション下がりましたね。」
誠「あ~あ…彼女欲しいな…。」
リディ「彼女なんかいても疲れるだけだと思いますよ?」
誠「彼氏いないやつに言われてもな…。」
リディ「はい?」
誠「な、なんでもないです…!」
俺は殺気を感じて立ち上がり後ろに退いた。このままバカにし続けたら、いつ殺されるかわかったもんじゃないぞ…。
誠「じゃ、じゃあ俺はそろそろ帰ろうかな…!」
俺は逃げ去るようにギルドのドアを開けて外に出た。するとドアを出た直後、ギルドに入ろうとしていた茶髪の女の子とぶつかってしまった。
誠「痛てて…ハッ!だ、大丈夫!?」
俺は女の子とぶつかって倒してしまったことを理解し、すぐに立ち上がって無意識に手を伸ばしていた。
女の子「す、すみません…。」
女の子は俺の手を握って立ち上がった。女の子と手を握る体験が無かった俺には、とても貴重かつ驚かざるを得ない状況だった。
誠「あ…えっと…。」
女の子「えへへ…ありがとうございます。…誠さん。」
誠「ど、どういたしまして…。」
胸がドキドキしている…!こんな感覚初めてだ…!この世界に来て女には出会っているが…こんな出会いは初めてだ…ん…?なんだ?何か変だ…。
女の子「…それでは。」
誠「あ、うん…また…ね。」
女の子は顔を赤らめて笑顔でギルドに入っていった。ギルドの外で俺は女の子を見ながら立ち尽くしていた。するとギルドから皆が出てきた。
ベル「誠さん?何やってるんですか?」
誠「……。」
アイラ「おーい…?」
誠「…ハッ!?ご、ごめん…ボーッとしてた…。」
アルス「どうしたんですか?」
誠「…えっ?い、いやなんでもないよ!ごめん…もう帰ろう。」
家に帰ったあとも俺はあの女の子の謎を抱えて、他のことに集中できなかった。でもその謎がなんなのかピンと来てはいなかった。
誠「……。」
剣聖「ちょっと誠…?本当にどうしたの?」
誠「いや…ごめん、なんでもない…。」
セナ「…?とりあえずお腹空いた…。」
誠「え…?」
俺は驚いたように窓の外を見た。するといつの間にか日は暮れて、月が昇っていた。考え事が過ぎたようだ。
誠「もう夜か…。」
アイラ「ギルド行こうぜー。」
誠「ああ、わかった…。」
俺はモヤモヤを抱えたままギルドに向かった。ギルドに入ると、大勢の人で賑わっていた。話の内容からすると、どうやら凄い新人が現れたようだった。
リディ「あ、誠さん!聞いてください!凄い新人が現れたんです!」
誠「凄い新人…?」
俺は人の波を掻き分けて中心に向かった。するとそこにはあの謎の女の子が立っていた。その女の子は俺を見つけると走りより、
女の子「また会いましたね、誠さん。」
誠「…っ!?」
これだ、この子から感じた違和感は。この子は知るはずもない俺の名前を知ってる…なぜだ?ギルドの外から聞こえたのか?いや、この大勢の声もギルドの扉を開ける前は聞こえなかったし…
女の子「あの…誠さん?」
誠「えっ!?な、なに…?」
女の子「私をパーティに入れてくれませんか?」




