支援魔法と女
俺は今リビングの外でグロウルの性癖に驚愕していた。開いた口が塞がらないとはこのことかと実感していると、リビングでアイラの驚く声が聞こえてきた。
グロウル「あ…アイラさん起きたみたいですね…。」
誠「そ、そう…だね…。」
俺とグロウルは気まずい雰囲気なまま、グロウルに服を着させてリビングに戻った。リビングではアルスについての話で盛り上がっていた。
ベル「あ!誠さん!この子誰ですか!?」
誠「ああ…その子は…」
アルス「そういえば自己紹介してなかったですね!」
そう言うとアルスは立ち上がって、全員が見えるようにリビングの奥の方に小走りで移動した。そして胸を張りながら、
アルス「私は支援魔法使いのアルスです!ついさっきこのパーティに入れてもらいました!」
剣聖「支援魔法ってステータス上げるやつ?」
アルス「そうです!…ではでは…ハッ!!」
そう言いながらアルスは俺に両手をかざしてきた。すると俺の足元に赤い魔方陣が浮かび上がり、一瞬だけ俺の体が赤く光った。
誠「おお…!なんだか力が満ち溢れてきたぞ…!」
アイラ「気のせいじゃないのか…?」
アルス「そんなわけないです!私の支援魔法は凄いんですから!」
セナ「凄いってどれくらい…?」
セナの問いにアルスは体をくねらせて考え込んだあと、大きく頷いき人差し指を立てて大きな声で答えを返した。
アルス「上げるステータスを絞れば800は上げられますよ!」
誠「ええっ!?てことは…今俺の攻撃力は800上がってるってことか!?」
アルス「そうですよ!普通の支援魔法は全体的にステータスを上げるものですが、私のは一部をガッツリ強くするタイプなんです!」
誠「へー!凄いな!」
俺はアルスを称賛するために一歩前に出た。すると俺の足はリビングの床を突き破り、俺は床に突き刺さってしまった。
誠「お、おい!?どういうことだ!?」
アルス「攻撃力上がってますからね!」
誠「はあ!?これじゃまともに歩けないじゃないか!!」
アルス「まあ…そうですね…?」
誠「そうですねって…おい、効果時間はどれくらいだ…?」
アルス「一時間ですよ?」
誠「…冗談だろ…。」
俺は一時間の間ずっとリビングの床に突き刺さり、支援魔法が解けたあと床から抜け出した。そして椅子に座り、アルスの支援魔法について話し合った。
誠「…その支援魔法…加減できるのか…?」
アルス「できますよ!最大値が800ってだけですから!」
誠「ならいいけど…。」
アイラ「でも床に突き刺さってる誠、面白かったぞ!」
誠「…お前な…。」
俺が文句を言おうとするとアルスの腹が鳴り、俺の言葉を塞き止めた。俺はため息をつきながら立ち上がり、アルスを昼飯に誘いギルドに向かった。
リディ「あ、誠さん…その子は?」
誠「新しい仲間だよ。」
アルス「アルスっていいます!」
リディ「…また女の子ですか…?」
誠「というと?」
リディ「男性の仲間が欲しいとか思わないんですか…?」
グロウル「…確かに。」
誠「思わないよ!思うわけがないね!」
ベル「…力強く言いますね…。」
当然だ。今俺は現実世界で体験できなかったことを体験している。青春の「せ」の字も無かった俺にはハーレムなんて至高なわけだ。
誠「俺は絶対に男の仲間は作らない!!」
リディ「わかりましたから…とりあえず座ってくださいよ…。」
俺は一度落ち着いて言われた通り席に座った。そしていつも通り飯を食べながら話をした。暫く話していると俺達の座っていた席に、見覚えのある一人のガチムチの男がやってきた。
誠「…なんですか…?」
男「お前…俺のこと覚えてねーのか、おら!」
誠「ちょ、ちょっと…落ち着いてくださいよ…。」
男「うるせえ!ちょっとこっち来やがれ!」
誠「うわっ!?」
俺は男に掴まれて席から無理矢理に立たせられた。男は戦う気満々なようで、手をゴキゴキと鳴らしている。…確かこいつイベントの時のだよな…。
誠「まじかよ…面倒だな…。」
俺はそう言いながらアルスに目をやった。するとアルスは意図を察したのか、俺に向かって手をかざした。すると俺の体は一瞬オレンジに光った。防御力アップだ。
男「この間はよくもやってくれたな!!」
男は俺の頬にグーでパンチしてきた。すると甲高い音がギルドに響き、男の手は赤く腫れていた。男は手を抑えながら半泣きで、
男「なんなんだよ…お前…。」
と言って帰っていった。…何しに来たんだあいつ…。全く…これだから男の仲間はいらないんだよ…絶対面倒なことになるからな…。
誠「やっぱ女が一番だな。」
リディ「…いいから食べちゃってくださいよ…。」




