暇潰しと金の亡者
俺は転移魔法を使って入浴中のグロウルに財布を渡してからギルドに帰ってきた。…いやはや、偶然とはいえ中々のナイスバデ…ゲフンゲフン。
とにかく…グロウルの裸を見たなんてリディに知られたら間違いなく殺される…。悟られてはいけない…。
誠「ゴホンッ…ただいま。」
リディ「おかえりなさい…どうしたんですか?汗かいてますけど…?」
誠「な、なんでもなくてよ…?」
リディ「はい…?とりあえず…財布は渡せたみたいですね。」
誠「…じゃあ、俺はこれで…。」
俺は逃げるようにギルドを出た。外は日が昇り暖かく明るくなっていた。俺は軽く深呼吸をしてから帰路をたどり家に戻った。ドアを開けてリビングに入ると、ベルとセナがソファーに座っていた。
ベル「あ、誠さん、どこ行ってたんですか?」
誠「早起きしたからちょっとギルドにな。」
セナ「何してきたの…?」
誠「フッフッフ…聞いて驚け!俺は魔法を使えるようになったのさ!」
ベル「へー!凄いですね!どんな魔法ですか?」
誠「それは、転、移、魔法、だ!」
俺は一語一語ごとに転移魔法で瞬間移動しながら自慢気に話した。それを見たベルとセナは拍手を鳴らした。
ベル「凄いですね!」
誠「だろ!」
セナ「でも速さカンストなら別にいらな…」
俺はセナの口を人差し指でふさいで、セナを洗脳するかのように「それは言わない約束だ…。」とだけ言った。するとセナは黙って頷いた。
誠「よし…てかアイラと剣聖は?」
ベル「二人ともぐっすり寝てますよ…。」
誠「…起こすぞ。」
俺達はまずアイラの部屋に行った。ドアを開けるとへそを出して、大の字で眠るアイラがベッドにいた。
ベル「…気持ち良さそうですね…。」
セナ「こっちまで眠くなる…。」
誠「…おい、起きろー!」
アイラ「…んー…もう少し…。」
誠「…はあ。」
ベル「起きないですけど…どうしましょう…?」
誠「…こうする。」
俺はアイラに転移魔法を使った。移動先はここから遥か上空だ。今頃空中で泣き叫んでいるところだろう。そして俺はもう一度転移魔法を使って、アイラをベッドに戻した。その表情は恐怖に満ちていた。
誠「起きたか?」
アイラ「お、起きた…。」
誠「次からは自分で起きろよ。」
アイラ「ぜ、善処します…。」
誠「…次は剣聖だな。」
俺は起こしたアイラとベルとセナで剣聖が寝ている部屋(俺の部屋)に向かった。ドアを開けると布団に抱きつくようにして眠る剣聖がいた。
誠「…よく寝るな…。」
アイラ「誠が言えたことじゃないだろ…。」
誠「アイラもな。」
俺はアイラと同じ方法で剣聖を起こした。おそらく二人の俺に対する好感度はゼロ、いやマイナスまでいっていることだろう。
誠「…さて、今日は何するか。」
俺達はリビングで今日の予定を決め始めた。疲れがたまっているからダンジョンは行かない、というところまでは決まった。が、その先が全く決まらなかった。
誠「うーん…。」
ベル「決まりませんね…。」
セナ「退屈…。」
アイラ「…眠い。」
剣聖「…同じく。」
俺はまとまりの無い会話にため息をつきながら、暇を潰せるような所を思い浮かべた。暇を潰せる所…もしくは暇してそうな人…。
誠「…ってことで来てみた。」
グロウル「…私にだって忙しい日くらいあるんですよ…?」
アイラ「そう言う割には何もしてないけど?」
グロウル「ち、違います!今はどんなモンスターを創ろうか考えてたんです!」
剣聖「…え?てか何?あんた達…魔王と仲良いの…?」
ベル「まあ、優しいお方ですからね。」
俺達は魔王グロウルの本拠地…なのかも分からないヒビ入った城で、グロウルの手伝いをしながら暇を潰すことにした。グロウルはどうやら金を稼げるモンスターを創りたいらしい。…金にしか興味ないのか…この魔王様は…。
グロウル「どうすれば金を稼げるモンスターを創れますかね…?」
ベル「前みたいに金を奪い取る鎖を創ればいいじゃないですか?」
グロウル「あれはちょっと…人道的じゃないので…。」
剣聖「人じゃないくせに…。」
グロウル「うう…それを言われると返しようがないです…。」
セナ「なら低コストかつ強いモンスターを創ればいい…。」
グロウル「それができれば苦労しないですよ…。」
…金の事を考えてる魔王とか…ちょっと印象悪いな…。しかも割りと真剣に考えてるっていうところも良くない…。
誠「…なら金でモンスターを創ればいいんじゃないか?」
グロウル「どういうことですか…?」
誠「金でモンスターを創れば金の塊みたいなモンスターができるかも知れないだろ?」
グロウル「そうするとどうなるんですか?」
誠「そのモンスターの…排泄物?とかが金になるんじゃないか?」
ベル「ええ…?」
セナ「汚い…。」
グロウル「そうですよ!汚いじゃないですか!」
誠「あのな…お前は金の亡者なんだよ!いいか!?恥を捨てろ!プライドを持つな!もっと貪欲になれ!!」
グロウル「…わ、わかりました…。」
アイラ「これはひどい…。」
剣聖「心に刺さる…。」




