水着と長考
俺はパンツを買ったあと、馬車乗り場に向かっている三人を追いかけていた。海に誘うためだ。そして数秒走っていると、前に三人の姿が見えてきた。
誠「おーい!」
アイラ「お、パンツ買ってきたか。」
ベル「聞かなくてよくないですか…?」
誠「買ってきた。」
ベル「答えなくてよくないですか…?」
誠「さてと、てことで行くぞ。」
アイラ「…ダンジョンか…。」
誠「いや、海だ。」
ベル「はい…?」
セナ「海…?」
誠「そう、海。」
ベル「ダンジョンはどうするんですか!?」
誠「んー…後回し?」
アイラ「後回しってお前な…馬車はどうするんだ…?」
セナ「おじさん待ってる…。」
誠「平気平気!ほら行くぞ!」
ベル「ええ…?」
俺は三人を服屋に連れていった。そしてそれぞれ水着を買う流れになった。ちなみに俺は普通の黒い海パンだ。…え?いらない情報だって?
グロウル「誠さん…どれを選べばいいかわからないんですけど…。」
誠「なるほど…任せたまえ。」
グロウル「すみません…。お願いします…。」
誠「じゃあとりあえずこっちだな。」
そう言いながら俺は布地の少ない水着コーナーに歩いていった。その瞬間、俺はリディのげんこつを喰らった。
誠「痛って…。」
リディ「何やってるんですかっ!全く…!」
誠「い、いやグロウルが…これがいいって…。」
グロウル「言ってないですっ!」
リディ「はあ…。グロウルさん、私が選びますよ…。」
誠「ちっ…。」
リディ「なにか…?」
誠「な、なんでもないです…!」
俺は水着を適当に選んだせいで時間が余ってしまっていた。まだ女組は皆水着を選んでいた、一人を除いて。
誠「お前随分速かったけど…どんなの選んだんだ?」
セナ「普通のやつ…。」
誠「普通の…?」
セナ「そう…普通の…。」
そう言ってセナは着ていたパーカーのチャックを開けた。パーカーの中には白いスク水が覗いていた。
誠「…それは普通であって普通じゃないぞ…。」
セナ「そうなの…?」
俺は見なかったことにしてその場から立ち上がった。そしてあまりにも遅い女組に「先に海行ってるわ。」と言ってセナと海に向かった。
誠「…そろそろ着くかな?」
セナ「塩の匂いがする…。」
海に向かって歩いていると、ずっと道の横に並んでいた建物がなくなり、視野が広がって海が見えてきた。
誠「着いたー!」
セナ「いい景色…。」
俺は元気よく海に向かって走り出した。そして足が海に入った時、俺はそこで立ち止まった。…このまま一人で楽しんでいいのか…?ここは皆を待ってから楽しむべきではないのか…?
セナ「どうしたの…?立ち止まって…?」
誠「皆を待とう…遊ぶのはそれからだ。」
セナ「…うん、賛成…!」
俺とセナは一度砂浜に刺さっていたパラソルの下に座り、皆が来るのを待った。…やっぱり思いやりって大事だよな…。
誠「はあ…。なあセナ…あれから何分経った…?」
セナ「十分弱…。」
誠「十分経って誰も来ないって…どういうことだよ…。」
セナ「迎えに行く…?」
誠「…だな。」
俺とセナは立ち上がり来た道を戻った。すると服屋の前に着いたとき、ちょうど皆が店から出てきた。
ベル「あれ、誠さん?」
グロウル「先に海に行ってたんじゃなかったんですか?」
誠「行ってたよ…行ってたけど遅かったから迎えに来たんだよ…。」
リディ「う…で、でも女の子の準備って時間がかかるって言うじゃないですか…?」
誠「お前…セナのことバカにしてるだろ…。」
セナ「私も女の子…。」
リディ「あっ、いや違うんですっ!その…何て言いますか…。」
セナ「別に気にしてないから大丈夫…。」
リディ「す、すみません。本当に…。」
誠「…セナが優しい女の子で良かったな。」
リディ「そうですね…。」




