放置とナンパ
誠「…ふう。」
俺は手を払いながら一息ついた。何をしていたかというと、あまりにもウザすぎた剣聖を縄で縛っていたのだ。
剣聖「んむむっ?むむむ~!」
ベル「…いいんですか?こんなことして…。」
誠「こいつがウザいのが悪い。」
アイラ「確かに…。」
誠「だろ?」
そんな話をしていると剣聖の口につけていたガムテープが剥がれ、またうるさウザい声が部屋中に響き渡った。
剣聖「も~!どうしてこんなに酷いことができるのかなっ?」
セナ「始まった…。」
誠「もう…放置するか…。」
アイラ「だな…。腹減ったしとりあえずギルド行こうぜ…。」
ベル「…本当にいいんですか?」
剣聖「キャピッ!」
誠「…いいってさ。」
ベル「ええ…?」
俺達は剣聖をそのまま放置してギルドに向かった。そしてドアを開けると何やらザワザワとしていた。よく見ると奥の方でリディが色白の男に絡まれていた。
男「なあ…金ならいくらでもやるからさ、俺のギルドに来なよ。な?」
誠「もしかしてナンパか?リディも案外モテるんだな。」
リディ「ナンパじゃないです!てかバカにしないでくれません!?これでもモテますから!!」
誠「…わ、わかったって…。」
アイラ「必死だな…。」
男「…てか、君達なに?あんまり俺の邪魔しないでほしいんだけど…?」
男は睨むような顔で俺達を見てきた。そして暫く見続けたあと、顔を覚えたのか俺達を見るのをやめてギルドを出ていった。
ベル「…怖い人でしたね…。」
誠「だな。…で、誰なのあれ?」
リディ「…知らないんですか?ここから少し離れたクルール王国の王様、ゲルグですよ。」
アイラ「…ああ、思い出した…あいつか。」
誠「アイラ知ってるのか?」
アイラ「これでも一応王家の身だからな…絶対忘れてただろ…。」
誠「…そ、そんなことない…よ?」
俺はアイラの質問を華麗にはぐらかしたあと、リディに話の本題を聞いた。なぜリディみたいな怪力女が他国から誘われていたか、だ。俺だったら絶対に誘わないぞ…。国一つなんて余裕で壊すだろ…この女…。
リディ「失礼なこと考えてないでしょうね…?」
誠「き、気のせいだよ…きっと…。」
ベル「…それで、何で他国の王様から誘いが?」
リディ「んー…可愛いから?」
セナ「…どう思う…?」
誠「無いな…。」
リディ「なによ!ふんっ!どうせ私は可愛くないですよ!」
どうやら機嫌を損ねてしまったようだ。…面倒くさい女だな…これでよく自分を可愛いだの何だの言えるよな…。
ベル「でも誘われるなんて嬉しいことじゃないですか?」
リディ「そんなことないですよ…。正直、死んでほしいくらいです…。」
誠「ええっ!?そんなに!?」
リディ「あの男は周りから悪魔とか死神って呼ばれてるんですよ…。」
アイラ「なんでも気に入らない人間は即死刑にするらしいぜ…。」
誠「へー…。」
俺は若干聞き流しながら曖昧な返事をした。正直この国にいれば安泰だからな。…あれ?そういえば俺ここの国名知らないぞ…?…まあ細かいこと気にしたら負けってことで…。
リディ「あ、そういえば皆さん何しに来たんですか?」
誠「あ、そうだ、飯食いに来たんだった。」
セナ「忘れてた…。」
リディ「そうだったんですか?じゃあほら、座ってください。」
俺達はリディに案内された席に座った。そしてそれぞれ好きなメニューを頼んで綺麗に完食し、ギルドを出た。その時外はもう暗くなっていた。
誠「…ふう。食った食った。」
ベル「帰りますか。」
アイラ「だな。」
セナ「うん…。」
俺達はゆっくりと家に帰りリビングで明日の予定を決めていた。結果、明日もダンジョンに行くことになった。そうと決まったらゆっくり寝て体を休めないとな。俺は部屋のドアを開けた。
誠「…忘れてた…。」
剣聖「あっ!やっと帰ってきたな~!」
誠「はあ…。」
俺は机に置いてあったガムテープを剣聖の口に当てて、ベッドに入り布団を頭から被るようにかけた。




