ゴールと必殺奥義
俺は麻痺から回復したベルとアイラに手を貸して立たせたあと、剣聖を先頭に先へ進んだ。すると道が二本に別れ、左側の道にセナの銃撃が当たっていた。
剣聖「左か…。」
誠「そうみたいだな。」
左の道に進むと道の奥に宝箱と右に進む道があった。それを見た途端に剣聖は宝箱に向かって勢いよく走っていった。
誠「あっ!おい!罠かもしれないだろ!」
剣聖「平気平気!」
剣聖が宝箱の手前まで来たとき、カチッという音と共に剣聖のいた場所の地面がパカッと開いた。…全く…だから言ったのに…。俺はそう思いながら急いで剣聖の手を掴み、引っ張りあげた。
ベル「大丈夫ですか…?」
誠「やっぱり罠だったじゃないか…。」
アイラ「結局宝箱も空だし…。」
剣聖「う…すみません…。」
剣聖を反省させたあと、俺達は右の道に進んでいった。そこは長い一本道になっていて、何やら真ん中の地面が抉れていた。疑いながら一歩前に進んだとき、後ろから巨大な鉄球が転がってきた。
アイラ「また罠かよ…。」
誠「古典的だな…。」
ベル「とにかく走りましょう!」
俺達は転がってくる鉄球から逃げるように一本道を走り出した。俺は自分の速さを見せつけるようにゆっくりとスピードを上げて、三人を追い抜いていった。もちろんドヤ顔で。
剣聖「何なのあいつ…!」
アイラ「剣聖も人のこと言えないだろ…。」
ベル「まあ確かに…。」
俺達は一本道の罠を攻略して次の道に進んだ。するとその先には、セナがロボットを装着したまま立っていた。迷路はこれで終わりのようだ。
セナ「これで迷路は終わり…。」
剣聖「案外あっけなかったね。」
誠「よく言うよ…宝箱に釣られて罠にはまったくせに…。」
剣聖「う…た、確かにそうだけど…で、でも…」
誠「はいはい…。それよりセナ、先導ありがとな。」
セナ「うん…。実は結構大変だった…。」
アイラ「そうなのか?」
セナ「うん…。なるべく罠のある道を行かせるのは大変だった…。」
誠「…え?」
まさかこいつ…俺達に罠のある道をわざわざ歩かせたのか…?こいつも中々に性格悪いな…。俺はセナの頭にげんこつを喰らわせて奥へ進んだ。
セナ「うぅ…叩かなくても…。」
誠「いいから行くぞ!…全く。」
奥には大きな扉が佇んでいた。それをゆっくりと開けると、そこにはグロウルと長髪の顔色が悪い男が立っていた。
剣聖「グロウル!?」
グロウル「フフッ。よく来たわね…。」
誠「…え?…ああ、なるほど…。」
俺はグロウルの口調に違和感を覚えたが、そのあとすぐに状況を察した。俺達以外の人の前ではキャラ作りをしてるようだ…。魔王も結構大変だな…。
グロウル「せいぜい足掻くといいわ…。」
グロウルは後ろに下がり物陰に隠れながら、俺達に何度も頭を下げて謝罪の心を示していた。俺は苦笑いをしながら同情の目を向けた。
誠「…で?まだ名乗らないの…?」
ダスト「あ、そうか…。すみません…ゴホン。…俺の名前はダストォ!!お前らをぶっ潰してやるぜぇ!!」
ダストと名乗る男は急にテンションを上げて、中指を立てながらそう言ってきた。…どうやらこいつも失敗作みたいだな…可哀想に…。
剣聖「なあ…。」
誠「なんだ?」
剣聖「正直私はあんな雑魚に用はない…。ドロップアイテムも高くなさそうだし…。」
アイラ「金にしか興味ないんだな…。」
剣聖「だから私はグロウルを…」
俺はバハムートを手に取る剣聖の肩を手で掴んだ。すると剣聖は何だと言いたそうな顔で俺の方を見てきた。俺はそんな剣聖にこう伝えた。
誠「やめておけ…。もしかしたらあのダストとかいうやつの方が金持ってるぞ…。」
剣聖「はっ!?」
ベル「確かにそうかもしれません…。」
剣聖「ええっ!?」
アイラ「あの魔王は貧乏だからな…。」
剣聖「なんでっ!?」
セナ「モンスターを作るのにも金がかかるらしい…。」
剣聖「あんなキチガイハイテンション野郎にもっ!?」
誠「口悪すぎだろ…。」
そんな話をしていると剣聖の肩に乗せていた俺の手に、紫色のオーラを纏った鎖が巻き付いてきた。鎖の先を見るとダストの手首についた器具に繋がっていた。
ダスト「この鎖はなぁ!グロウル様が作ったぁ所持金を奪い取る鎖だぁ!!」
アイラ「…な?貧乏臭いだろ…?」
剣聖「…確かに…。」
そんなことより…グロウルさん…?この間ジル渡してあげたのに、まだ俺からむしり取るつもりなのかい…?俺が若干睨むような顔でグロウルを見ると、グロウルはさっきの倍速くらいの速さで頭を下げていた。
誠「はあ…。」
ベル「あの…鎖ほどかないんですか…?」
セナ「同情してる…。」
アイラ「なるほどな…。」
誠「…そろそろいいか?」
俺はダストではなくグロウルを見てそう言った。するとグロウルは地面に膝を着き、深々と頭を下げた。土下座だ…俺は今、魔王に土下座をさせている…。
誠「じゃあいくぞ…!」
俺は奥の壁に思いっきり力を込めて向かったあと、壁の直前で止まった。すると鎖に繋がれたダストは壁にめり込むほど強くぶつかった。
誠「これぞ必殺奥義…!慣性の法則…!」
剣聖「だっさ…。」
誠「うるせえ!」
俺はもう一度、必殺奥義(笑)「慣性の法則」を使って剣聖にダストをぶつけようとした。が流石は剣聖、ダストに一閃を喰らわせ粉々に散らした。
ベル「案外弱かったですね…。」
剣聖「まあ私としては楽でいいんだけどね。」
セナ「でも張り合いがない…。」
アイラ「確かに…これじゃ活躍できないよな…。」
誠「活躍したことあったか?」
アイラ「なんだとっ!?」
俺は殴りかかろうとしてくるアイラを止めながら、グロウルのいた所を見た。しかしグロウルはいつの間にかどこかへ行ってしまったようだった。全く…奪うだけ奪いやがって…今度埋め合わせしてもらわんとな…グヘヘ…。




