帰宅と金稼ぎ
誠「…ん…?」
俺はウトウトしながら体を起こした。上手く働かない頭を使って記憶を探っていき、疲れてギルドの床に寝てしまったところまでは思い出した。が、俺が今いるのはベッドの上だ。まさか何か間違いを…!?
誠「…落ち着け…。まずここはどこだ…?」
俺は近くにあった窓から外の景色を見た。しかしそこからは見覚えのない景色が広がっていた。困り果てた俺は頭を抱え込んだ。
誠「参ったな…。」
俺が悩んでいると、ドアの開く音が聞こえた。俺は反射的に布団に潜り込んで寝たふりをした。すると食器を置く音と、聞き覚えのある声が聞こえた。
リディ「いつまで寝るつもりなのかしら…全く…。」
俺は声を聞いた途端、冷や汗をかき息を荒くした。まさか俺は…俺はリディと間違いを起こしてしまったというのか…!?このままでは永眠する可能性も…!
リディ「いい加減に起きてください…!」
リディは俺が被っていた布団を無理矢理に引き剥がした。俺はビックリして顔を埋めて目を閉じていた。
リディ「…何してるんですか…?」
誠「…殺さないでくれ…!」
リディ「はい…?…もしかして何か勘違いしてます…?」
誠「…へ?」
リディ「私は何もされてませんよ…?というか、してたら今頃殺してます。」
誠「あ、ああ…そうなの。…よかった。」
殺すとか…この人のは冗談に聞こえないから怖いんだよな…。この間もドアぶっ壊したし…。はっきり言ってあんなの人間業じゃないぞ。
誠「てか、もしかしてここリディの家?」
リディ「そうですよ。ギルドで寝ちゃったから運んできたんです。」
誠「へー…。」
俺は改めて窓から外の景色を見た。ギルドからここまで直線距離でも1キロはある。ここまで俺を運ぶなんて…この女…やはり怪力女か…。
リディ「…今失礼なこと考えてたでしょ…。」
誠「い、いや…決してそんなことは…あはは。」
リディ「…はあ。…どうせ私は怪力女ですよ…。」
そう言いながらリディは近くのテーブルに置かれたコップを手に取り、不機嫌そうな顔で俺に渡してきた。温かいミルクココアのようだ。
リディ「それ飲んだら帰ってくださいね。私も仕事がありますから。」
誠「ああ、わかった。ありがとう。」
俺はコップを口に運び、一気に飲み干した。そしてリディにコップを渡し、ごちそうさまと挨拶をして外に出た。そしてギルドを経由して家に戻った。
誠「ふう…。ただいまー。」
ドアを開けながらそう言うとリビングからベル達が走って出てきた。そこにグロウルの姿はなかった。
ベル「誠さん!どこ行ってたんですか!?心配しましたよ!」
誠「ごめんごめん…。リディに頼み事されちゃってさ。…てかグロウルは?」
アイラ「ああ、そろそろ帰らないとって言って帰ったぞ。」
誠「そうか。わかった。」
セナ「誠…今日は何する…?」
誠「…とりあえず座ろうぜ?」
俺達はリビングの椅子に座って今日の予定を決め始めた。その結果今日は金稼ぎに行くことになった。食事代やら生活費やらで30億ジルも底が見えてきていたからだ。…見かけによらずかなり食うからなこいつら…。
誠「…じゃあ出発するか!」
俺達は家から出て門の外の近くにある洞窟に来ていた。ギルドの情報によるとこの洞窟に新エリアが発見されたらしい。要するに未開拓の地、だから金の臭いがするって訳だ。
誠「…さて、着いたけど…新エリアはどこだ?」
ベル「とりあえず入ってみましょうよ。」
アイラ「だな。」
誠「じゃあ行くか。」
セナ「わかった…。」
俺達は洞窟に入り道なりに進んでいった。すると途中から人が増え始め、いつの間にか行列になっていた。
誠「おいおい…なんだよこれ…?」
アイラ「皆金が欲しくてたまらないんだろ。」
ベル「まあ…私達も同じようなものですけどね…。」
セナ「退屈…。」
俺達は暫くの間その場で待たされてしまった。かなりの時間が過ぎ、俺はいつの間にか横になって寝てしまっていた。そして俺は大勢の人が走る足音と悲鳴を聞いて目覚めた。周りを見ると新エリアの方から人が逃げて来ているようだった。
誠「な、なんだ!?」
セナ「…何か聞こえる…。」
俺は目を閉じて音をよく聞いた。するとセナが言っていたとおり、悲鳴や足音以外の音が聞こえてきた。風を切るような音、大きな物が動く音。
誠「…何かいるな。」
ベル「音からして結構な大きさですよ…。」
アイラ「…い、行くのか…?」
誠「そうするしかないだろ。」
俺達は流れてくる人を避けながら奥へと進んだ。奥に進むにつれて何か変な、というより嫌な臭いが鼻を刺した。そして俺は立ち止まった。俺の目の前には大量の死体と、血まみれの石包丁をもったミノタウロスが立っていた。
誠「なっ…!?…酷いな…。」
ベル「うぅ…。」
アイラ「…あんなやつがいるなんて…。」
セナ「……。」
セナも珍しく緊張した顔をして、皆恐れ怯えているようだった。暫く様子を見ているとミノタウロスは石包丁を持っていない方の手で、俺達に岩を投げつけてきた。
ミノタウロス「ウオオオオオオオ!!」




