優しさと恩返し
今俺は玄関で激闘を繰り広げている。仕事を増やされたリディが怒り狂いながら玄関に現れたのだ。俺はドアに挟みこんできたリディの足を蹴り押しながら、ドアを力強く引っ張った。
誠「ちょっと…!ドア壊れちゃうんだけど!」
リディ「開ければいいじゃないですか!」
誠「そっちこそ何で足引っかけてくるんだよ!セールスマンか!」
リディ「…いい加減に…開けてください…!」
リディはドアに手をかけて握ってきた。するとドアはミシミシと音をたてながらひび割れ、ついにはドアごと持っていかれた。嘘だろ…この怪力女め…。
リディ「…とりあえずゆっくりお話しましょうか…。」
誠「は、はい…。」
俺はリディを家に入れてリビングでゆっくりと話をした。まず俺はなんとかリディを説得し、今回のダンジョン崩壊は俺のせいじゃないことを伝えた。
リディ「…つまりそちらの魔王を助けるために剣聖と戦った…と。」
グロウル「すみません…私のせいで…。」
ベル「グロウルさんのせいじゃないですよ。」
誠「そう。悪いのはあの剣聖だ。全く…。」
リディ「というか、ギルドとしては魔王を助けた人を見過ごすなんてできないんですけど…。」
誠「その辺は黙っててもらえると…。」
リディ「はあ…。人が良すぎるのも考え物ですよ…?」
誠「気を付けます…。」
リディ「全く…。まあ今日のところはこれで失礼します。次は無いですからね…!」
俺達は深々と頭を下げてリディを見送った。そして俺は次からは気を付けようと改めて決心し、大きく頷いた。
アイラ「それにしても、リディさんって優しいよな…。」
セナ「いつも許してくれる…。」
グロウル「普段からあんな感じなんですか?」
誠「まあ…確かに助けられてるかな…。」
グロウル「それなら…恩返しとかした方がいいんじゃないですか?私も見逃してもらいましたし…。」
ベル「なるほど…。誠さん!やりましょうよ!」
誠「恩返し…か。よし!やるか!」
俺達はグループに別れて町に買い物に出かけた。リディに渡すプレゼントを選ぶためだ。俺とグロウル、セナとベルとアイラでそれぞれ町に出た。
誠「さて…グロウルさん。」
グロウル「はい?」
誠「グロウルさんは何を貰ったら嬉しいですかね?」
グロウル「なるほど…。でも私の意見って参考になりますか…?」
誠「なりますとも!」
グロウル「じゃあ…お金…ですかね。」
誠「……。」
グロウル「…やっぱり駄目ですか…。」
誠「まあ…現実的だけど…それはちょっと…。」
グロウル「じゃあ…話し相手…?」
誠「…苦労してるんすね…。」
暫くの間、俺とグロウルは何を買おうかすら決められずにいた。そんな中セナとベルとアイラは、アクセサリーショップに向かっていた。
ベル「やっぱりプレゼントといえばアクセサリーですよね。」
アイラ「まあ無難だな。」
セナ「いいと思う…。」
ベル「どれがいいですかね…。」
セナ「力の腕輪とか…。」
アイラ「ぶっ飛ばされるぞ。」
選んでいるとあっという間に日も暮れて、俺達は一度リビングに戻ってきていた。そして何を買ったか話し合っていた。
ベル「誠さん達は何を買ったんですか?」
誠「俺達は買ったっていうか…なんていうか…。」
アイラ「なんだよ…もったいぶるなよ。」
グロウル「私達のは肩たたき券です…。」
ベル「ええ!?肩たたき券!?」
誠「やっぱり大事なのは気持ちかな…なんて。」
セナ「聞こえはいいけど…。」
誠「…そう言うお前達は何買ったんだよ?」
ベル「私達はですね…。」
そう言いながらベルはポーチから薄い紙のような物を取り出した。それには綺麗な花が挟まれていた、どうやら栞のようだ。
グロウル「綺麗ですね!もしかして作ったんですか?」
ベル「そうなんです!」
アイラ「やっぱり大事なのは気持ちだよな。」
誠「結局そうなるよな。」
グロウル「いいことだと思いますよ。」
誠「そうだな。…よし!渡しに行くか!」
俺達は皆でギルドに入った。ダンジョンの件は落ち着いてきたのか、ギルドはゆったりとしたいつもの雰囲気だった。そして俺達は歩いていたリディを呼び止めた。
リディ「どうしたんですか?皆揃って…。」
誠「これ…いつもお世話になってるお礼です!」
ベル「…私達からの気持ちです!」
リディ「えっ!?あ、ありがとう…。」
リディはそう言って俺達の栞と肩たたき券を受け取った。そしてクスッと笑ったあとに目に涙を浮かべた。
リディ「…フフッ。…別にいいのに…ぐすっ…。」
誠「喜んでもらえましたか…?」
リディ「当たり前じゃないですか…!」
嬉しそうに泣くリディを見たアイラがリディに抱きつき、それに続いて皆でリディを囲んだ。そのあとはリディと一緒に宴のように飲み食いをした。そして夜も更けた頃。
誠「じゃあそろそろ帰るか。」
アイラ「そうだな!」
セナ「わかった…。」
誠「じゃあリディ、これからもよろしくな!」
リディ「…ええ。こちらこそ。」
俺達がギルドのドアに近づいた時、俺はリディに呼び止められた。振り向くとリディは肩たたき券を俺に差し出していた。
誠「もう使っちゃっていいのか?」
リディ「忘れちゃうといけないしね。」
誠「なるほどな。」
俺は軽い気持ちで受けたが、その後五時間程リディの肩たたきをさせられた。俺は帰る頃にはクタクタになってしまい、ギルドで寝てしまった。




