洞窟とサキュバス
俺達は馬車乗り場の出口から外に出た。セナはロボットを装着し、俺は屈伸をしてそれぞれ準備万端だった。しかしベルとアイラはスレイプニルの背の上で震え、全く準備できていなかった。
誠「…大丈夫か?」
アイラ「大丈夫な訳ないだろ…。」
誠「まあ、暫く我慢してくれ…。」
ベル「そんな…。」
誠「じゃ、出発するぞ!」
俺はスレイプニルの尻を平手打ちして、ダンジョンに向かって走り出した。それに続いてセナとスレイプニルがついてきた。
ベル「ひぃぃぃい!!」
アイラ「お、落ちるっ!落ちるっ!」
誠「落ちたら抱えてやるって。」
アイラ「ぜ、絶対だからなっ!?」
セナ「私も抱える…。」
アイラ「うわっ!!」
スレイプニルの上でバランスを崩したアイラは、宙に浮かび地面に向かって落下した。俺はアイラの落下地点にスライディングし、アイラをお姫様抱っこの形で受け止めた。
誠「ふう…。大丈夫か?」
アイラ「…ぅえ?あ…うん…。」
俺は抱えたアイラをスレイプニルの背に戻そうとした。が、その途端にアイラが暴れ始めた。
アイラ「待て待て!なんで戻すんだよ!?」
誠「いや、抱えたままだと疲れるし…。」
アイラ「私が重いって言いたいのか!?」
誠「……。」
アイラ「なんで黙るんだよ!!」
俺はアイラをスレイプニルの背に戻し、ダンジョンに向かった。その最中ベルとアイラが何度も落ちたがセナと協力し、なんとかダンジョンにたどり着くことができた。
セナ「到着…。」
誠「だな。」
俺はセナと「暗闇のダンジョン」と書かれた洞窟の前に立ち、ウキウキとしていた。すると後ろから、
ベル「うっ…ぐすっ…。」
アイラ「うぅ…もう二度と乗らない…うぐっ…。」
誠「泣くなよ…。帰りもあるんだぞ…?」
俺がそう言うと、ベルとアイラの目から光が消えた。そして顔を見合わせて共に頷き、スレイプニルの方に歩いていった。
アイラ「こいつを殺しちゃえばいいんじゃない…?」
ベル「実に名案です、アイラさん…。」
誠「帰れなくなるからやめろ。」
俺はベルとアイラを引きずりながらダンジョンの入り口に戻った。二人とも観念したのか嫌々ながらもやる気を出してくれた。
ベル「行きますか…。」
アイラ「そうだな…。」
誠「そういえばセナ、そのロボットで入れるのか?」
セナの装着しているロボットは、ダンジョンの入り口よりも明らかに大きかった。それに気づいたセナは腕輪に触り何かを操作した。するとロボットの一部が空へと飛んでいき、スマートになった。
セナ「これで大丈夫…。」
誠「よし。じゃあ行くぞ。」
ダンジョンの中に入ると、名前の通り真っ暗だった。しかしセナのロボットには発光機能があるらしく、セナがダンジョンに入った途端に周りが一気に明るくなった。
誠「本当に便利だな…それ。」
セナ「ありがとう…。」
暫く狭い道を歩くと広い場所に出た。普段なら真っ暗な場所なのだろうが、セナのロボットのおかげで凄く明るかった。
誠「何もない…のか?」
ベル「…変ですね。」
アイラ「次の場所への通路もないぞ?」
その場所はただ広いだけで何もなく、行き止まりになってしまっていた。俺達はそのまま無警戒に真ん中まで歩いて行った。すると地面が赤く光り、地面からけしからん格好の巨乳な女が現れた。
誠「なっ…!?」
その女は俺の体を舐めるように触れてきた。そして胸を俺に当てながら、耳に顔を近づけてきた。
女「ねえ…私と楽しいことしない?」
誠「…ほう?」
ベル「ちょ、ちょっと誠さん!?」
サキュバス「フフッ。実は私サキュバスなの。だからこの男はもう私の虜。あなたたちの敵。」
アイラ「冗談だろ…?誠…?」
誠「……。」
セナ「誠…?」
サキュバス「フフッ。無駄よ。この男はもう私の言うことしか聞かないの。」
サキュバスは俺に抱きつきながらそう言った。そして、地面に魔方陣を作ると俺の耳元で、
サキュバス「あの魔方陣、グロウル様に教えてもらった強力な拘束魔方陣なの。…あいつら邪魔だからさ…分かるでしょ?」
誠「了解したぜ…!」
サキュバス「なっ!?」
俺はサキュバスの巨乳に手を当て、逆の手で腕を掴んで大外刈をかけた。そのままサキュバスは魔方陣の上に倒れ、不思議な力で大の字に拘束された。
サキュバス「何故だ!?私の虜になったはずなのに!?」
誠「確かにお前の胸の触り心地は良かった。でも生憎、俺は貧乳派なんでな。」
俺は胸を掴んだ手を揉むように動かしながら、サキュバスにそう言った。ベル達の視線が冷たかったが、俺は無視することにした。
サキュバス「…私の敗けだ…。」
サキュバスが敗けを認めると、部屋の奥に宝箱が現れ俺は三人と一緒に宝箱を開けた。中にはキノコが一つだけ入っていた。
誠「なんだこれ…?」
セナ「ハツラツダケ…。」
ベル「刻んで汁物にすると元気になるってやつですね。」
誠「そのままじゃ使えないのか…。」
ベル「使えないこともないですけど…。そのまま食べると体が火照るくらい元気になっちゃうらしいですよ。」
誠「ふーん…?」
俺はハツラツダケを手に取り、大の字になったサキュバスに近づいた。そしてハツラツダケをサキュバスの口に無理矢理詰め込んだ。
サキュバス「んむっ…!?んんぅ…むぐ…っ!」
俺はサキュバスの顎に手を当てて無理矢理に噛ませて飲み込ませた。するとサキュバスは体を震わせ、吐息を荒くし始めた。
誠「よし、帰るぞ。」
ベル「わかりました…。」
アイラ「最低だなお前…。」
セナ「放置プレイ…。」
外に出るまでサキュバスの叫び声が聞こえたが、俺達は全員で無視して外に出た。すると外にはスレイプニルを愛でる人影があった。




