魔王の存在とじゃじゃ馬
誠「ぬおおおおおお!!」
俺は朝っぱらから自転車を全力でこいでいた。セナの腕輪の充電をするためだ。充電が終わりリビングに戻ると、ベルがアイラと剣聖を起こしてソファーで待っていた。
誠「やっと起きたか…。」
アイラ「いつも昼まで寝てるくせに…。」
誠「うっせ。」
そんな話をしていると、ベルが薬草で作ったお茶を俺に渡しながら今日の予定を聞いてきた。
ベル「ところで、今日は何するんですか?」
誠「今日はダンジョンに行こうと思う。」
剣聖「えっ!?」
俺がダンジョンに行くと言った途端、剣聖が跳び跳ねるようにビックリして大きな声をあげた。
誠「なんだよ…。」
剣聖「今ダンジョンは危ないんだよ!?」
誠「…ダンジョンは危ない物だろ。」
剣聖「全く…何にも知らないんだね。」
かなり上から物を言う剣聖に若干の苛立ちを覚えつつ、俺は話を促すことにした。
誠「というと…?」
剣聖「ダンジョンは今魔王に乗っ取られてるの。モンスターが強くなるだけじゃなく、罠とか内部構造まで変わっちゃってるんだよ?」
誠「魔王…?」
剣聖「そう。グロウルっていう魔王が冒険者の強力化を防いでるんだって。この間なんてダンジョンごと崩落させたんだから!」
誠「…ああ、そう…。」
剣聖「とにかく、ダンジョンは危ないの。」
誠「…わかったよ。」
剣聖「じゃ、私はそろそろ行くから。」
剣聖は喋るだけ喋ったあと、神剣バハムートを持って何処かへ行ってしまった。俺はため息をつきながら暖炉の火を消して、
誠「…ダンジョン行くぞ。」
セナ「わかった…。」
アイラ「またダンジョン…?」
誠「しっかり戦えよ。」
アイラ「はあ…。」
ベル「アイラさんなら大丈夫ですよ。」
アイラ「ありがとう…。」
俺は馬車乗り場に着いたあと、料金を払おうとした。その時、この間よりも料金が安いことに気づいた。走る距離はこの間よりも長いのにもかかわらず、格段に安くなっていた。
誠「あ、あの。料金が安いんですけど…大丈夫ですか?」
馬車乗り場のおじさん「ん?ああ、それは向こうに行きゃわかるさ。」
おじさんはニヤニヤしながらそう答えた。俺は戸惑いながらも、三人を連れて馬車の並ぶところに向かった。
誠「んーと…俺達が乗る馬車は…。」
俺はおじさんに貰った切符を手に持ちながら、指定された場所に向かった。するとそこには見覚えのある、八本足の馬が力強く立っていた。
誠「スレイプニル…!?」
ベル「これに…乗るんですか…!?」
アイラ「てか、運転手いないぞ!?」
俺達がビックリしていると、さっきのおじさんが俺の肩に手を乗せてきた。そしてニヤッと笑った。
馬車乗り場のおじさん「乗りこなせたら今度からタダで乗らせてやるよ。ガッハッハ!」
誠「いや、普通のでいい…」
馬車乗り場のおじさん「じゃ、頑張れよ!」
誠「あっ!」
おじさんは俺達を応援したあと、笑いながら元の場所に戻っていってしまった。俺は改めてスレイプニルを見つめた。こんな生き物に人がまたがれば間違いなく死人がでてしまう。
セナ「私はロボットがあるから平気…。」
誠「…俺も走りで追いつけるから…。」
ベル「え…?」
アイラ「は…?」
誠「…てことで、出発!」
ベル「ちょ、ちょっと待ってください!」
アイラ「あんなのに乗れって言うのか!?」
ベルとアイラがそう言うのも無理はない。でも俺だってあんなのに乗りたくない。ベルとアイラには悪いが、スレイプニルには二人に乗ってもらおう。
ベル「うぅ…落ちそうになったらちゃんと支えてくださいよ…?」
誠「任せろ。」
アイラ「…こえぇ…。」
セナ「私も支える…。」
誠「じゃ、出発するぞ。」




