弁解と至福
俺は滅茶苦茶に荒れた自分の部屋で震えながら、剣聖のバハムートを避けていた。
誠「お、落ち着けって!」
剣聖「殺す…!」
誠「ご、誤解なんだってば!」
ベル「ど、どうしたんですか!?」
俺の叫び声に気づいてベルが勢いよくドアを開けて来てくれた。逆に言うとアイラとセナは、俺の叫び声には気づかずに爆睡している。…泣きそう。
誠「た、助けてくれ!」
ベル「わ、わかりました!」
ベルは剣士の腰にしがみつき、剣聖の動きを止めてくれた。安心した俺は一息ついて、誤解を解くために話をしようとした。しかし、
剣聖「離せ!あいつは私の髪の臭いを嗅いでたんだぞ!?」
ベルはそれを聞いた途端固まり、今まできつく掴んでいた剣聖の腰からゆっくりと手を離した。
誠「おおおおい!!」
俺は剣聖の腕を掴み、必死になって耐え続けた。すると剣聖はゆっくりと手の力を緩め、話を聞く姿勢をとってくれた。
誠「…ふう。よかった…。」
剣聖「……。」
誠「そ、そんなに睨まないでくれよ…。」
剣聖「なんで髪の臭いを嗅いでたか説明して。」
ベル「そうですよ。」
誠「…ゴホン。…俺の顔に見覚えないか?」
剣聖「はあ?私の質問聞いてた?」
誠「だから、見覚えないか?」
剣聖「そんなの…あるわけ…」
剣聖は俺の顔をじっくり見ると何かに気づいた顔をして、俺のことを指差した。どうやら思い出したようだ。
剣聖「もしかして…トラックに轢かれたときの…!?」
誠「そうそう、君を助けようとしたイケメ…」
剣聖「あの凄いダサい人!?」
ほう…?この女…助けられた(助けきれてない)にもかかわらず、礼の一つもないとは…。中々に性格悪いぞ…。
誠「はあ…。」
ベル「…剣聖さん…知り合いなんですか?」
剣聖「こんな変態、知り合いじゃないわよ。」
誠「…俺は変態じゃない。てか、そろそろ帰れ…。」
剣聖「…え?」
誠「…は?」
剣聖は暫く目をパチパチしながら俺を見つめてきた。その後、顔を下に向けてモジモジし始めた。…この女まさか…。
剣聖「…こ、ここに泊めてください!!」
誠「はあ!?」
ベル「ええ!?」
誠「宿屋に泊まればいいだろ!金無いのか!?」
剣聖「調子に乗って全部町に寄付しちゃったの!!」
誠「(救えねえ…!)」
ベル「泊めてあげた方がいいんじゃ…」
俺はベルの言葉を無視して剣聖に宿屋に泊まれるだけのジルを渡した。すると剣聖は泣きそうになりながら頭を下げてきた。
剣聖「お、お願い!宿屋ってなんか臭くて生理的に無理なの!」
誠「お前…本当に性格悪いな…。」
剣聖「お願い!今晩だけ泊めてくれればいいから!」
誠「…今晩だけだぞ。」
そう言うと剣聖は顔をあげて嬉しそうに目を見開いた。そしてあっという間に俺のベッドに入り、あっという間に寝息をたて始めた。
誠「もう寝てるし…。…はあ。」
ベル「どうします…?もう部屋が無いですよ…?」
誠「俺はソファーで寝るよ…。あー疲れた…。」
俺は眠い目を擦りながら、リビングに向かうために部屋を出ようとした。するとベルが俺の背中を掴んできた。
誠「ん…?どうした?」
ベル「あの…。私の部屋で寝ます…?」
誠「…えっ!?いや…でも…!」
ベル「ソファーでねたら…風邪ひいちゃいますよ…?」
誠「あ…えっと…うわっ!」
俺はベルに無理矢理に引っ張られ、ベルの部屋に連れて来られてしまった。そして、ベルは俺の手を離して、ベッドに入った。
ベル「…ここ、空けときますからね…。」
誠「え…?あ、おう…。」
ベルはベッドの左側を空けたまま、寝息をたてていた。俺は暫く立ち尽くした後、ゆっくりと空いたベッドに横たわった。
誠「…案外大胆なんだな…。」
俺は暫く胸が高鳴って眠れなかった。目の前で気持ち良さそうに眠るベルから目をそらし、俺はゆっくりと目を閉じた。
そして俺は朝、ベルに起こされた。
ベル「誠さん?そろそろ起きてください。」
誠「ん…もうちょっと…。」
ベル「…起きないと皆が来ちゃうかもしれませんよ?」
誠「…確かに…。」
俺は目を擦りながら起き上がった。リビングに着くと暖炉の前でセナが一人ソファーに座っていた。俺は椅子にベルはソファーにそれぞれ座った。
誠「…セナ一人か?」
セナ「そう…。」
ベル「他の人達、起こしてきましょうか。」
誠「あ、頼む。」
セナ「誠…。」
誠「ん?どうした?」
セナは俺に腕輪を渡してきた。その腕輪には「充電してください」と書かれていた。…朝っぱらからハードだな…。




