復活と変態神
俺は筋肉痛で動けなくなってしまい、部屋のベッドで三人とリディに看病してもらっていた。俺は女性からの看病なんて、母さん位しか経験が無かったから実は喜んでいた。が、こいつらの作る飯は非常に不味い。このままではいずれ死んでしまう。
誠「な、なあ簡単に治す方法ってないのか?」
リディ「私の料理を食べればいいんじゃないですか?」
誠「ノ、ノーサンキューです…。」
アイラ「リディさんって結構怖いよな…。」
誠「お前も同類だからな…?」
アイラ「…そんなに不味かった?」
誠「リディといい勝負だったぞ…。」
そんな会話をしていると、ベルのお腹が鳴った。全員がベルに目を向けるなか、ベルはお腹に両手を当てて照れ笑いを浮かべた。
ベル「…あはは…お腹空いちゃいました…。」
リディ「フフッ。じゃあ一度ギルドでご飯食べましょうか。」
アイラ「そうだな!」
セナ「私もお腹空いた…。」
誠「…え?俺一人ぼっち…?」
ベル「す、すみません…。すぐ戻ってきますね!」
誠「あっ…。」
俺が手を伸ばしても誰も待ってくれず、皆ギルドに行ってしまった。俺はため息をつきながら手をベッドに降ろした。ふと回りを見ると、いつも使っているポーチに目が移った。俺はポーチを手に取り、中から薬草を取り出した。
誠「まさか…な。」
俺は薬草を口に運んでムシャムシャと咀嚼した。…苦い。ゲームの勇者達はこんなものを顔色変えずに食ってるのか…。そう思いながら俺は足を動かした。
誠「…痛くない…。」
…治ってる。「良薬は口に苦し」とはまさにこの事。でもまさか本当に薬草で筋肉痛が治るとは…。俺はベッドから降りて、ギルドに向かった。ドアを開けると奥の方で、三人とリディが飯を食べているのが見えた。
誠「お、いたいた。」
ベル「あれ!?誠さん、もう大丈夫なんですか!?」
誠「薬草食べたら治った。」
アイラ「あっさりしてんな…。」
セナ「ごちそうさま…。」
リディ「…ふう。私もお腹いっぱい…。」
ベル「皆食べ終わりましたね。じゃあそろそろ帰りますか。」
誠「そうだな。」
俺達は会計を済ませた後、外に向かおうとした。しかしドアの手前まで来たところで、筋肉ムキムキの男達にドアを塞がれてしまった。非常に目付きが悪い。
誠「…何の用ですか?」
男A「そのかわいこちゃん達…俺達にくれよ。」
誠「…は?」
男B「だから…その子達をくれって言ってんだよ。」
男は俺の肩に手を乗せて揺さぶってくる。以前の俺ならこいつらを売って逃げていただろう。でも今の俺には力がある。人を助けるための力が。
誠「嫌に決まってんだろ。」
男A「…ハッ!そうか、死にてえみてえだな!」
男は俺に握り拳を向けてきた。俺は咄嗟に足に力を入れて、男に思いっきり突進した。俺と男はドアを突き破り、そのまま数百メートル飛んでいった。男は突然飛ばされたせいで、気絶していた。
誠「…あと一人。」
俺はギルドに向かって飛び、そのままの勢いで男の顔面を掴み、床に叩きつけた。木製の床は簡単に壊れ、男の顔は床に埋まった。俺は一息つきながら両手をはらった。
誠「よし…帰るぞ。」
俺達は家に帰り暖炉の前で明日の予定を決めていた。今日は特に冒険者として活動をしていないから、明日は活動をしようと話をして部屋に戻った。
誠「…明日はダンジョンに行こうかな…。」
俺はゆっくり目を閉じて明日を待った。次の日、目を覚ますと辺りは真っ暗だった。早起きしすぎたかと時計を見たが、針は八時を指していた。俺でも流石にほぼ丸々一日以上寝たりはしない。
誠「なんだ…?」
ベル「た、大変ですっ!」
誠「ど、どうした!?てか、ノックしてください…。」
ベル「そんなこと言ってる暇無いですよ!」
ベルは俺の手を掴んで外に連れ出した。そのまま何が起こっているのかも言わずに、門の外まで連れていった。門の外には沢山の冒険者が立っていた。そしてその先には禍々しく淀んだ空と、黒い鎧を纏った男が八本足の馬にまたがっていた。
誠「なんだあいつ…。」
セナ「戦神オーディンとスレイプニル…。」
誠「神様がなんでここに…?」
セナ「わからない…。」
俺達は汗を流しながら唾をのんだ。そしてオーディンは一歩前に出て、手に持った槍を冒険者達に向けた。
オーディン「…剣聖はどこだ…。」
冒険者A「剣聖って…あの剣聖か…?」
冒険者B「ああ、それしかないだろう…。」
誠「剣聖…?」
リディ「知らないんですか!?どんなモンスターも一撃で倒してきた剣士ですよ!」
誠「(チーターじゃねーか。)」
ベル「でも剣聖さんって今遠くの町に行ってましたよね?」
オーディン「…何?おい小娘…その話、詳しく聞かせろ…。」
オーディンは槍をベルに向けて脅迫するような強い、重い口調で言い放った。その途端ベルは震え上がり、声にならない悲鳴をあげていた。
オーディン「フッ…。まあいい。一つ一つ町を壊せばいいだけだ…。」
オーディンはスレイプニルの向きを変え、次の町へと向かっていった。俺はそれを見た後すぐに家に戻り、剣を腰にかけてオーディンを追いかけた。俺の動きを察したのか、セナがロボットを装着した状態で待っていた。
誠「遅れるなよ!」
セナ「わかった…!」
俺とセナは一気に加速してオーディンの横に並んだ。オーディンはスレイプニルに怒をとばして加速したが、それでも俺とセナは横に並んだ。
誠「案外遅いんだな、その馬。」
オーディン「なっ!?なんなんだお前ら!?」
誠「それはこっちの台詞だ。」
セナ「剣聖の攻撃は一撃必殺…。」
誠「なのに何で会いに行くんだ?お前マゾか?」
オーディン「ち、違う!おい!スレイプニル!もっと速く動けぬのか!」
スレイプニルはオーディンの期待には応えず、オーディンを振り落とした。振り落とされたオーディンはゴロゴロ転がった。そして転がり終わると、
オーディン「ああ…。」
誠「…は?」
オーディン「ち、違う!今のは…」
セナ「歓喜の声…。」
オーディン「違うと言っているだろう!」
誠「ふーん…?」
俺は剣を抜き、オーディンに軽く突き刺した。その度にオーディンは嬉しそうな声をあげた。こっちが恥ずかしくなってくる。
誠「はあ…。セナ、あとは頼んだ。」
セナ「わかった…。」
オーディン「なっ!?待ってくれ!俺は剣聖に殺されたいん…」
セナ「安心して…。私の攻撃も一撃必殺…!」
オーディン「や、やめろ!やめてくれ!あああああ…!」




