充電と看病
俺達は門の外で歓迎会をすると共にセナの腕輪に異常が無いか調べていた。セナの腕輪は問題無く動き、問題無くロボットが俺を轢いて空から現れた。
誠「…おい、そのロボット前見えてるのか…?」
セナ「今のはそこにいた誠が悪い…。」
誠「…そうかい。」
セナは人型のロボットに乗り込み、手を握ったり離したり、空を飛び回ったりして、動きを確認した。暫くすると地面に戻ってきた。
ベル「問題無さそう?」
セナ「大丈夫…。」
アイラ「攻撃の確認しなくていいのか?」
セナ「…確かに。」
そう言うとセナは空に飛び、ロボットの腰にかかった銃を取った。そして近くにいた雑魚モンスターに向けると、ロボットの背中の一部が銃と合体した。
誠「おお…!」
セナ「エネルギー充填完了…。」
セナが銃を構えると、銃口に紫色の電気が集まり球体になっていった。その球体は雑魚モンスターに向けて放たれ、半径数キロにわたって爆発した。
アイラ「すっげ…。」
ベル「想像以上です…。」
誠「だな…。」
銃をしまい、セナは再び地面に戻ってきた。そしてロボットから降りると、ロボットは飛行機型になって空に帰っていった。
誠「…なあセナ?」
セナ「…?」
誠「…あのロボットってどれくらい速いんだ?」
セナ「ステータスでいえば300~400。人型になると少し落ちる…。」
誠「そうか…。」
良かった…。これで俺とほぼ同じ速さだったらタイトル詐欺もいいところだからな…。俺はそんなことを考えつつ、三人を連れて家に帰った。
ベル「…それにしてもセナちゃん、凄かったですよね。」
誠「そうだな…。」
アイラ「…てかセナは?」
誠「部屋ですることがあるって…」
二人に説明していると部屋の電気が一斉に消えた。ブレーカーが落ちてしまったようだ。もはや理由は一つしかあるまい。
セナ「…ブレーカーが落ちるなんて思わなかった…。」
誠「俺も今凄いビックリしてるよ…。」
アイラ「どうすんだ?充電しないと使えないんだろ?」
ベル「せっかく直したのに…。」
誠「…まあ待て。俺に作戦がある。」
セナ「…作戦…?」
俺達は外に出て自転車と回路を用意した。古典的な発電方法だ。俺は自転車にまたがり勢いよくペダルを動かした。
誠「ぬおおおおおおおお!」
ベル「凄いです!どんどん充電されていってますよ!」
アイラ「…派手なのか?それとも地味なのか…?」
誠「ハア…ハア…。…どうだ…?」
セナ「充電できた…。ありがとう…。」
誠「…そうか…。…よかった…。」
俺は汗だくになりながら家に戻り、よろめきながら風呂場に向かった。疲れたままお湯を浴びていると、いつの間にかのぼせてしまい倒れてしまった。
誠「…ん…?…あれ?」
ベル「大丈夫ですか…?」
アイラ「お前、風呂場で倒れてたんだぞ。」
セナ「…私が助けた。」
誠「…はっ!?」
俺は驚きながら起き上がった。この女…俺の裸を見て、更に俺に服まで着させたと言うのか…!?正気の沙汰とは思えん…!
誠「…お、俺はもう寝るっ!」
俺は立ち上がろうとしたが、足に力が入らない。と言うよりは痛くて動かせなかった。充電のせいで筋肉痛になってしまったようだ。
誠「痛たた…。う、動けない…。」
ベル「大丈夫ですか!?」
誠「だ、大丈夫…。ただの筋肉痛だから…。」
セナ「私の腕輪のせい…?」
誠「まあ、そうだけど…別に気にしなくていいぞ…。」
アイラ「でもほぼ毎日あれやらないといけないんだぞ?」
誠「……。」
ベル「し、失神しちゃいましたよ!?」
セナ「とりあえず部屋に運ぶ…。」
アイラ「そうだな。」
俺は布団の上で目を覚ました。相変わらず足は動かず、立ち上がるどころか寝返りすらうてない。自転車だけでこんな風になるとは思わなかった。
誠「こ、これじゃ飯も食いに行けないぞ…。」
ベル「…確かにそうですね。」
アイラ「作ってやろうか?」
誠「まじで!?」
アイラ「任せな!」
暫くするとアイラが料理を持ってきてくれた。かなり豪勢な見た目に、俺は思わず唾をのんだ。そして俺は箸を持ち、美味しそうに焼かれた肉を口に運んだ。
誠「いっただっきまーす!」
アイラ「…どうだ?」
誠「……んぐっ!?」
なんだこれは…?本当に焼き肉か…?味付けを間違えたとかいう次元じゃない…。もうこの世の食べ物じゃない。あ、ここ異世界か。なら仕方ない…
誠「ってなるかっ!」
アイラ「えっ!?」
誠「お前は俺を殺す気か!?」
アイラ「お、美味しくなかった…?」
誠「美味しくないとかそんなレベルじゃないぞ!?」
アイラ「ご、ごめん…。」
セナ「…誠の筋肉痛は私のせい。…だから私が看病する…。」
そう言いながらセナはどこから出したのかもわからない、電気の流れる太いケーブルを両手に持って近づいてきた。
誠「待て待て待て!俺はロボットじゃない!」
セナ「…そうか。」
誠「お前も俺を殺す気だな…?」
ベル「…私も看病したいですけど…料理できないので…。」
誠「うん。それが正しい。無理に作るどこかの誰かよりな。」
アイラ「う、うるさいな…!」
誠「…とにかくギルドに相談してきてくれ…。」
セナ「わかった…。」
三人が家を出た後、暫く待つかと思ったが案外すぐに帰って来た。なんでもギルドが快く受け入れてくれたらしい。俺も有名になったな…。そう考えているとドアをノックする音が聞こえた。
誠「あ、入って平気ですよ。」
俺がそう言うと見覚えのある女の人が、見たこともない料理を持って立っていた。リディだ。その顔は笑っているように見えるが、明らかに心が笑っていない。
誠「…あ、どうも…。」
リディ「筋肉痛だそうですね?ならしっかり食べないといけませんよね?」
誠「い、いや平気ですよ…!」
リディ「遠慮しなくてもいいんですよ?」
誠「ま、待って!落ち着いて!」
リディ「はい。あーん。」
誠「い、いやあああああああ!」




