第6話 移るとき 前編
滑りこみスライディング土下座!
こんな駄作を待っていて下さるような方がいらっしゃるか分かりませんが、申し訳ありません!!!
約3ヶ月も放置してしまいました。
就活やらで忙しくほとんど手を付けられませんでした。
さらにこの話で書きたかったことの半分しか書けませんでした。
なので前編などということになってしまいました。
誠に申し訳ございませんでした‼
父親と店を継ぐかの言い争いの後、倖茂は自分の病室の前で思い返す。
「晴杜が居なくなって、俺が倒れて、栞里にプロポーズしたことになって、で店を継がないために店の売り上げをのばすことになった、か。はぁ、なんだか大変なことになったな。でもまぁ頑張ってみるかぁ」
倖茂はそう呟き、病室に入る。
病室内は腰をさすっている辺見とまだ目を覚ましていない栞里がベッドに横たわっている。
倖重は栞里に近づき寝顔を見る。どうやら深い眠りについているようだ。
よく見ると目の下には隈ができている。
「そうだよな、まともに寝れる状態じゃなかっただろうから……」
倖茂は引き寄せられるように栞里の頬に手を当て、目の下を軽くなでた。
顔を触られたためか、彼女は瞼を1度きつく閉じてゆっくりと開けた。
それを見た倖茂は手を離す。
「ごめん、起こしちゃったな」
それから数秒の間は目の前を見つめるだけであったが、唐突に顔を真っ赤にして起き上った。
そして周りを見渡し必死に状況を理解しようとしているようだ。
「えっ、あれは夢?でも病院だよね……いやでも……あれ!?」
「と、とりあえず落ち着いて深呼吸しよう」
「わ、わかった」
すー、ふー。と栞里は少し浅めの深呼吸を何度か繰り返し、落ち着いた様子になった。
「えっと……ゆっくん。私、気を失ってたの?」
「うん。俺の、その……プロポーズを聞いて顔を真っ赤にして」
「っ!……そっか。夢じゃ、無かったんだ」
栞里は少し顔を下げる。顔は少し赤くして嬉しそうな顔をするが、すぐに目尻が下がってしまう。
「栞里、勢いに任せて畳み掛けるように告白して悪かった。自分の気持ちを押し付けてばかりだったよな。嫌だったら言ってくれ」
「違うよ!……ゆっくんが嫌なんじゃなくて、やっぱり晴杜ことが気になって……」
「……そうだよな。でも晴杜のことも俺が何とかしてみせる。できなきゃ栞里を護ったなんて言えないだろうから」
「……うん。なんだか二人でなら何とかなりそうな気がしてきた。ごめ……ううん。ありがとうね、ゆっくん。」
栞里は今までにない笑顔になるが目尻には涙が溜まっている。
その姿をみ見た倖茂は思わず栞里を抱きしめる。自分の馬鹿力を知っているので思いきりではない。
「うへぇ!?」
「やっぱり俺は栞里が、しーちゃんが大好きだ。幸せになろう」
「えっ、えっと……私もゆっくんが大す……っ!!」
栞里は自分も腕をまわして思いを伝えようとした時に見えてしまった。倖茂の肩越しにおじいさんにやにやと、看護師が顔を赤くしながらこちらを見ていることに。
倖茂に抱きしめられてさらに、栞里にとって2度目の今度は直接的な表現のプロポーズを受けて赤くなっていた顔がさらに赤くなり、湯気が出始める。
「ゆ、ゆっくん……みんなが見てるからちょっと待って」
「あっ、ああ。そうだった、ごめん」
倖茂も急に恥ずかしくなり、ばっと離れる。
「いやいや、わしらに構わずにいちゃいちゃしてていいぞ」
「はい。私たちはただの背景だと思ってください。ささ、もう少しどうぞ」
「「しません!!」」
……………
そんなこともありながら二人は帰宅を始めている。時刻は10時半くらい。
とりあえず善は急げと栞里の母親に話をしようと倖茂が提案した。
母親の紗枝は家にいるということなので、早速栞里の乗ってきた車を倖茂が運転し栞里の家に向かうこととなった。
「ゆっくん大丈夫?病み上がりに運転なんかして……」
「いっただろ?寝不足の人に運転は危ないだろって、さっきも気絶しちまったんだし。俺は体はなんともないから安心して少し眠ってろ」
「分かった。ありがとう」
栞里は目を瞑りしばらくすると寝息を立て始める。目的地までの40分弱だけだが栞里はゆっくりと休むことができた。
……………
栞里の家に着き、彼女を起こした倖茂は玄関の呼び鈴を鳴らす。
ガチャリと玄関が開き、少し元気のない穂摘紗枝が出てくる。
「あら倖茂くん、いらっしゃい。栞里、おかえり。倖茂くんは体はもう平気なの?」
「うん、ただいま。お母さん」
「はい、お陰様で。……実は今日は大事な話があってきました」
「大事な話?……ふふ、何となく分かったけど、とりあえず上がって」
紗枝は倖茂と栞里の真剣な眼差しに何のことかすぐに察したようだ。
二人を家の中に迎え、椅子に座らせ冷たいお茶を用意した。そして話を切り出す。
「さて、あなたから言いたいことをはっきりと聞かせて」
「分かりました。……娘さんを僕にください!」
倖茂はテーブルに額がつくぐらいに頭を下げた。
「随分と今さらでもあって、突然でもある話じゃない?」
「はい。とても身勝手なことだとわかっています。ですが、俺は栞里が苦しんでいる姿を見たくないんです。なので、栞里のことを一番近くで見守って、助けて行きたいんです」
「……私はあの人を亡くしてから一人で二人の子供を育ててきました。教師の仕事と子育ての両立は難しいことでした。でも私の子供はとてもいい子たちだった。進んで家事もやってくれるし、文句もあまり言わないし。私もそんな子供たちのために大学に行かせてあげられるように頑張って働きました。そして、その子供の一人が行方不明になった翌々日にもう一人の子供を連れて行きたいという男が来ました。私はそれを許すと思いますか?」
「お、お母さん……」
「それは……その……でも認めてもらえ……」
紗枝は捲し立てるようにこの一家の略歴を話し、倖茂に質問する。
気圧された彼は一瞬答えに詰まるが、あきらめずに言葉を発した瞬間それを遮るように、紗枝が発言する。
「答えは、『許す』ね」
「……るよう、に……え?」
「い、いいの?お母さん」
「ええ、私が今まで子供のためって思ってやってたことが最善じゃなかったって行方不明の子に嫌ってほど教えてもらっちゃったから。もう気を張り過ぎないようにしなきゃって思ったの。これからはもっと自由に栞里は自分のやりたいように生きなさい。倖茂くん、栞里を頼むからね。この子にとってあなたは一番の支えなんだから」
「うん、ありがとう。お母さん」
「へ、あ、はい!必ず幸せにします!」
最後は締まらなかったが、無事に結婚の了解を得た二人は笑顔になる。
ふと、栞里が思ったことをいう。
「でも、お母さんは寂しくないの?」
「寂しいけど、近所なんだしすぐに会いにいけるから」
「はい、いつでも来てください。えっと、お義母さん」
「あら、なんだか不思議な気分ね。そういえば、あなたのお母さんに話はしたの?」
「いえ、まだです」
「じゃあ、いまから一緒に行きましょう」
「「えええ」」
……………
そして正午の少し前くらい、森商店の前に車を止めて3人は店に入って行く。
店番をしていた華澄が気付く。
「あ、倖茂、お帰りなさい。もう大丈夫?あら、栞里ちゃんに穂摘さんいらっしゃい」
「「お邪魔します」」
「母さん、実は話があるんだけど、座って話したいから店を閉めて、リビングの方にい行こう」
「あらそう?じゃあお昼休みってことで閉めましょうか」
華澄は店の鍵を閉めて、4人でリビングに移動した。
座布団を並べて、麦茶を全員分用意して一息つき、倖茂が話を切り出す。
「母さん話っていうのは……」
「あらやだ、もうそんな畏まらなくて良いわよ。結婚したいって話でしょ?もう全然OK、大歓迎よ」
「「「……」」」
倖茂たちも全く反対するとは思わなかったが話す前にOKをもらえるとは思っていなかった。
「少しは空気を読んでよ、母さん。というかよくわかったね」
「大体分かるわよ、あなたの母ちゃんなんだから。まあさっき父ちゃんから電話で軽く事情も教えてもらってたんだけどね」
ぐだくだであったが、とりあえずお互いの親への報告は完了した。
すると続いて華澄が口を開く。
「それで、店の売り上げを2倍にしたらウチを出て行くんだったかしら」
「えっ、ゆっくん聞いてないよ!」
「そうだったの?」
「あ、あはは……父さんとの喧嘩の中で継ぐ継がないの話に
なってつい。ごめん栞里とちゃんと話し合わなきゃいけないことだったよな」
「ゆっくん。私はどこでも付いて行くつもりだけど、晴杜のこともあるからしばらくはここにいさせて」
「……はい、もちろんです」
「ま、新婚は何かと入り用だし、どっちにしろ売り上げを増やす必要も出てくるわよ」
「倖茂くん、売り上げを増やす計画はあるの?」
「そっ、それはこれから検討していこうかと……」
「さぁ、まだ話はあるけど、ひとまずお腹が空いてるだろうから皆でごはん食べしましょう。これからのことはその後でゆっくりしましょ」
倖茂は二人の質問に萎縮してどもり始めたので、華澄は話を切り上げて食事の提案をした。
時刻は12時半前なのでちょうど良いだろう。
「じゃあ、皆でお弁当好きなの選んで持って来ましょう。サービスにするから」
「えっ悪いですよ、ちゃんとお金払いますから」
「いつもサービスしてもらってるので今日はちゃんと払います」
「良いの、良いの。簡単な結婚祝いだと思って」
「「いえいえ」」
「いえいえいえ」
しばらくいえいえ合戦を繰り返した後、なぜか4人とも2番目に安い唐揚げ弁当を食べることになった。
因みに1番安いのは白身魚のフライの乗った海苔弁である。
(何だろう、思った様子と少し違う気がする。俺結婚するんだよな?これからどうなるんだろう……)
倖茂はいまいち結婚の実感が湧かないこの状況で唐揚げを食べながらこれからのことを漠然と考えていた。
こんなところまで読んで頂き誠にありがとうございました。
次はできるだけ早く書きます。