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第2話 白のなか

(ここは……?)


 彼の目の前が白くぼやけている。何も見えない。


(夢……?)


 意識がはっきりせず、ふわふわとした感覚に彼はそのように考える。


[ザッ……カサッ……]


(ん?……っ!)


 何の音だろうかと思い、辺りを見渡そうとするが身体は言うことを聞かない。


(そういう夢もあるか……)


 そのことに一瞬不安を覚えたが、何故かすぐ気にならなくなった。


[カサッ……ザッザッザッ……]


(少し見えるようになったか……?)


 しばらくすると、ふたつの何かが視界で上下しているように見えてきた。


(何か跳ねてる……近い!)


 音を立てながら視界の下から入れ替わりで現れたり消えたりするそれに、彼は不安を覚えるが、視界が少しよくなり形が何となく分かってくると、


(……俺の足?)


 自分の足なのではないかという考えが浮かぶ。


[ザッ……カサッ……ザッザッ]


(にしては、なんか視点が低いような……)


 動くものが足かもと思うと、その周りに植物のようなものも見えた来た。どうやら、舗装されてない場所を歩いているようだ。

 さらによく見たら白くぼやけていると思っていたのは、霧か何かだった。そのせいでちゃんと見えていなかったのだ。


[ザッ……カサッ……ザザッ]


(変な夢だなぁ……あれ?)


 彼はここでもう1つの違和感を感じる。


[カサカサッ……ザザッ……ザッ]


(やっぱり俺以外の足音も聞こえる!)


 彼の足音と少しずれて別の足音も聞こえていることに気づいたのだ。


「ーっーーっ」


(な、なんだ……声?)


 はっきりと聞こえないが女の子の泣き声が聞こえた。


 そして初めて視点が動いた。後ろに振り向き、小さい影に近寄る。


(あれ、なんかまた……ぼやけて……)


 言うことを聞かない身体は小さな影の手を握る。だが意識の方は夢から醒めるような感覚に襲われ始める。


(手、冷たいな……)


 身体は小さな影に何かを言おうとする。不思議と意識の方も何を言おうとしてるかが分かった。


「だいじょーぶ、━━」



……………



「━━栞里は俺が護るから」


 倖茂はそんなことを口走りながら、目を開ける。右手は、夢とは逆に俺の方が包まれるように握られている。


「ゆ、ゆっくん!?やっと起きたと思ったら、なな、何言ってるの!?」


 栞里は倖茂の手を握りつつ恥ずかしそうに顔を赤らめ、小声で叫ぶ。


「あれ?ここは……」


 寝ぼけた頭がはっきりとしてきた倖茂は、やっと周りの状況に気づく。

 白い部屋にカーテン、窓の外は赤い。

 起き上がると自分が横たわっているのがベッドであること。同じものが部屋にあと3つあり、向かいの1つには人がいること。

 なんかそのおじいちゃんが凄いニコニコしてること。


「病……院?」

「そうだよ。昨日私が帰ってから急に倒れたって…本当に心配したんだから」

「昨日?……ちょっと待ってくれ。まだ状況が把握出来てない。変な夢……森……っそうだ!はるが居なくなった……いや、そこからもう夢だったに決まってるよな。そんなことあるわけが無……」


 倖茂は昨日の出来事を思い出すが、あまりにも非現実的であったためそのように思う。が、


「夢じゃないよ」

「え…」

「晴杜、森で居なくなっちゃったのは……夢じゃないよ」


 栞里に否定されてしまう。向かいのおじいちゃんの表情も険しくなる。


「そう……か。嘘……じゃないよな」


 倖茂ははっきりと思い出す。気を失う前に栞里が、晴杜が居なくなったと駆け込んできて泣き崩れたこと。居なくなった時の状況を聞いた時に頭痛がしたこと。栞里を見送った後に小さい頃を思い出そうとした時に酷い頭痛で気を失ったこと。


「なぁ、昨日倒れたって言ったよな?今って3日の夕方か?」

「うん、3日の6時過ぎだね」

「じゃあ1日以上眠りこけてたのか……」


(それにしては身体がだるいけど……いやそんなことより!)


「栞里、心配かけたよな。ただでさえ晴杜のことで大変なのに……本当に悪かった!」


 倖茂はゆっくりだが身体を栞里へ向け頭を下げる。


「や、止めてよ。他の人が変に思うかもしれないでしょ!」

「でも……」

「いいから、頭上げて。そりゃ倒れたって聞いた時はなんでまた無茶するんだって怒りたかったけど……そもそもは私が悪いんだから……」

「えっ?」


 倖茂はその言葉に思わず顔を上げる。


(私が悪いってどういうことだ?確かにきっかけは栞里の話だけど、そういう意味じゃない気がする)


 倖茂は栞里の言葉の真意が気になり原因を考える。そして1つの心当たりを見つける。


「栞里、今から変なことを聞くがいいか?」

「な、何?」

「俺達……"あっち"に行ったことあるんじゃないか?そこで何かあったんじゃないか?」

「…………」

「さっき夢を見たんだ。霧の中で舗装されてない道を歩いていた。栞里と二人で」

「……そっか、どこまで思い出したの?」

「いや、霧の中を歩いていたところしか見てない。ただ、栞里から聞いたはるの消えた状況と似ている気がして…」

「そう……うん。私たちはあっちに行ったことあるよ。小学2年生の時にゆっくんが家出した私を励まそうとして」


[ズキン]


「うぐっ」


 倖茂は軽いものであるが不意に来た頭痛に声を出してしまう。


「ゆ、ゆっくん!?」


 栞里は顔を青くし、握った手にも力が入る


「あ、ああ、大したことない」

「ホントに?本当に大丈夫?」


「少しだけ痛かっただけだ。……でも今はもう昔の話は聞かない方が良いかもしれない。また気を失って無駄に長く入院するのは馬鹿みたいだろ?」

「……うん」

「ゆっくりでも全部思い出すさ。栞里との大切な思い出だと思うから」

「もう無茶しないで」

「もちろんだ」

「思い出そうとするのは、私といるときにして」


 栞里は倖茂の目をまっすぐに見つめる。声はいつもより低いが怒っているのではなく、真剣がゆえだろう。


「お、おう。そうだな」

「……ちゃんと返事して」


 また同じような声だが、今度はちょっと怒気が含まれている。怖い。


「わかった!栞里といるときだけしか思い出そうとしないから落ち着け!」

「ふぅ……よろしい」


 栞里は満足げに頷く。


 そのとき病室にノック音が響き、扉が開かれ看護師が入ってくる。


「穗摘さん、そろそろ面会時間は終了…あ!森さん気が付いていらしたのですか。今すぐ先生を呼んできますね。穂摘さんもそのままお待ちください」


 それだけ言うと看護師は病室を出ていき、しばらくすると40代くらいの医者がやって来た。


「どうも倖茂くん。私は染崎(そめざき)という。気分はどうだい?」

「はい……特に悪くはないです」

「それはよかった。すまんがそこ良いかな?よしまずは腕を貸して……」


 染崎は栞里から椅子を譲ってもらって座り、倖茂の診察を始める。


「うん…じゃあ胸を出して…次は…」


 そのようにして一通り調べた後。


「特に目につく問題は無さそうだね。じゃあ今度は質問させてくれ。まず君の倒れた原因についてだ。眠っている間に色々検査したが何も異常がなかったし。君のお母さんに聞いても寝不足だったんだろうとしか言ってくれなかった、でもその様子も見られなかったんだよね」

「えっ、えっと…」


(やばい、どう説明すればいいんだ!?幼馴染が居なくなったってきいて、昔を思い出したら頭が痛くなって、もっと思い出そうとしたらもっと痛くなって気絶した。なんて言っても信じてもらうどころか、下手すれば脳とか精神の病院行きだろ!!)


「「そのぉ…」」


 栞里も一緒になって焦り始める。二人とも正直に言って良いものか決めかねているようだ。


「どうしても言えないこ…」

「先生やちょっといいかい?その二人は奥霧村の子達だろう?」


 奥霧村とは、倖茂の住む辺りの昔の地名だ。いまは大字として釜盛町奥霧といった形に残っている。


「辺見さん…ええそうです。しかし、どうして」

「いやな。べつに盗み聞きするつもりは…あったんじゃが、そうせずともその子らの丸聞こえな会話から考えたんじゃよ」


(((するつもりあったんかい)))


 倖茂、栞里、染崎は心の中でツッコミを入れる。


「なんじゃその目は!……まあ良い。その二人が森だの霧だの言ってたからの。奥霧村の伝承だなとおもったんじゃ」


 その言葉に染崎は大きく反応する。おもむろに倖茂の方へ振り向き、


「今の話は本当かい!?まさか君”あっち”に行ったのか?それとも誰かが行ったのを知っているのか?どっちだい?」


 とても興奮した様子で倖茂に詰め寄る。


「えっ!?あ、いや。どっちって言うか、どっちもって言うか…」

「どっちも!?つまり君は”あっち”に行ったことがあり、しかも他にも行ったことがある人を知っているということかい!?」


 倖茂は医師のあまりの急変に混乱し、他にも行ったことがある人と言われたときに思わず栞里の方を向いてしまう。染崎は倖茂の視線を追いかけ栞里を見る。


「ま、まさか彼女……なのか。長年の夢がついにっ……ぜひ聞かせてくれ!!”あっち”について、いつ行った?どんな所だった?何が起こった?あああ、そうだ。どんな化け物がいた!?」


[ズキンッズキンッ]


「うぐぁ!」


 矢継ぎ早の質問は倖茂の頭痛を引き起こさせるのには十分すぎた。質門されればそのことを思わず考えてしまうのは仕方ないことだろう。


「先生は黙ってください!」

「へ?は、はい!」


 何が起きたか理解できてない染崎は栞里のほんのちょっぴり迫力のある声に思わず敬語が出る。そんな医師を押しのけ倖茂の肩に手を置く。


「ゆっくん、大丈夫?思い出さなくていいからね、今はまだ」

「……ああ、大丈夫だ。うん、無理やり思い出そうとしたわけじゃないからもう痛みは引いてきた」

「良かった。……先生わかりましたか?」

「へ?」

「ゆっくんは"あっち"のことを思い出そうとすると激しい頭痛に襲われるんです。昨日もそのせいで気を失ったみたいだとゆっくんのお母さんから聞きました。なので無理やり”あっち”の質問をしないでください!」

「そう……だったのか」


 染崎は冷静さを取り戻してきているようだ。


「すまなかった。私は純粋にそういう不思議な出来事が好きで気になっただけで、決して悪気があったわけではない。許してくれ」

「いやぁ、まあ何も知らなかったわけですし…でも気になることがあるからってがつがつ質問するのはあまり良くないかと」

「そうだな、以後気を付ける」

「わしもすまんかった。その先生がオカルト好きと知っとったから話の切っ掛けになると思ったんじゃ。まさかそんなに大変だとは思わなかったんじゃ」


 向かいのおじいちゃんも申し訳なさそうだ。


「いえ、もう治りましたから」

「本当に申し訳なかった……倒れた原因については分かった。精神的な問題なら専門外なんだが誰か紹介しようか?」

「い、いえ。今はいいです」

「そうか……うん。そのことに触れなければ問題がないのなら退院しても構わないだろう。しかしさっきまで気絶してたんだ。大事をとってもう1日入院して行きなさい」

「はい、そうします」

「じゃあ明日迎えに来るね」


 栞里がそんなことを言う。


「えっ、仕事は良いのか?」

「うん、私の上司の人がウチのご近所さんと知り合いでね。その人から聞いて大変だろうからって明日からしばらく休みにしてくれたの」

「その上司の人、話を信じたのか?」

「うん、昔からおじいさんに、隣の村では神隠しがある。とか、俺のじいちゃんの兄貴は向こうに行ったきりになった。だとか聞かされてたんだって」

「そうだったのか」


 ここで倖茂は横の医師が目に入る。……ぷるぷるしてる。そう言うのが最も簡単な表現だ。恐らくその上司により詳しく聞きたい。そして思い出したように栞里に話を聞きたい。と考えているのだろう。


「ちょ、ちょっと良いかい?その話に興味があるんだ倖茂君の彼女さん」

「へっ!?ち、違いまふっ…違います!ゆっくんとはただの幼馴染みで…」

「何じゃと!?ずいぶんイチャイチャしとったから、てっきりアベックだとばかり…」

「細かいことはいい。君の上司さんの連絡先を聞きたいだけだ。いや君自身の話でも良いからこれから詳しく聞かせてくれないかい?」


 染崎は椅子から立ち上がり、ゆっくりと近付いて行く。端から見れば女の子に襲い掛かろうとする変態に見えるかもしれない。


「全然細かいことじゃないです!」


 すると病室の扉がいきなり開かれる。


「いったいなんの騒ぎで…染崎先生!森さんの彼女に何してるんですか!」


 先程の看護師がやって来て、さらに騒がしくなる。


「だから彼女じゃないですってー!」


 それから看護師長とかいう人が来るまでの数分はそれが落ち着くことはなかった。

 栞里が帰ったあと医師が「せめて連絡先を聞きたかった」と呟きながら看護師長に連れて行かれたのは気にしなくて良いだろう。


 その後、倖茂は軽く食事をして早くに眠り明日に備えることにした。


(色々あって忘れてたけど、まだはるが帰ってないんだな…確か3日帰れなかったら"こっち"に帰ってこれないって聞いたが明後日の同じくらいの時間までってことか、それと明日中にってことか…どちらにしても時間はない。……だが俺に出来ることが見つからない)


 そんなことを考えてしまい落ち着かない精神状態にも関わらず、倖茂は静かに眠りに落ちるのであった。



 ━━━━━



 よう!お馴染みの啓弥さんだぜ!

 今回も楽しく解説やってくぞ!イェイ!!


 前回は"あっち"がゲームっぽいって話だったな、それで伝承に出てくる妖怪やら獣やらの話をするって言ったはずだから、ほんの一部だけど早速行くぜ。


 ・「緑色の餓鬼」

 餓鬼はクソガキのガキじゃなくて餓死した子供が化けた妖怪のことだな。こいつはよくあるゴブリンに似てる気がする。伝承では何でも食べて、底なしの食欲を持ってるとかなんとか。


 ・「身丈7尺(約230cm)の鬼」

 こいつはオーガやらサイクロプスやら色々候補があるよな。確か1つ目入道もいた気がするし、サイクロプスはそっちかもな。まぁ普通に鬼って出てくるゲームもあるか。


 ・「イタズラ好きのひょうすべ」

 聞いた時はひょうすべってなんだって思ったけど、調べたら毛むくじゃらで人型の妖怪らしいから、コボルトっぽいと思ったんだ。


 ・「尻尾が炎の狐」

 尻尾が炎になってるって凄くファンタジーな感じだ。でも狐って言うと火か闇ってイメージなのはなんでだろう。ゲームで言うなら妖狐とかファイアーフォックスとかかな。


 ・「頭が2つある山犬」

 これはツインヘッドウルフとかよくありそうなモンスターだな。なんかケルベロスの仲間みたいな似たやつもどっかで見たな。


 極め付きは次のやつなんだよ


 ・「ぶるぶる」

 こいつの説明が、藍色のぶよぶよと動く水の固まりのようなもの。だって!もうはっきりスライムだって言えよって感じだよな!?


 な?なんかゲームに出てくるモンスターって感じだろ?だから中学の頃に俺は皆に話たんだよ。そしたら皆なんて言ったと思うよ!


「あぁー……そうだと良いな」

「お、おう。お前あれ信じてたんだな」

「そこまで言うならお前行って写真でも撮ってこいよ」


 とかだぞ!?大発見だと思ったのに……


 俺は倖茂と栞里が行ったことを知ってるから完璧に信じてるけど、他のやつは中学にもなったら、熊やら野犬が危ないからあの話があるって思ってたから信じてくれないんだよ。栞里は倖茂にそのことを聞くなとか言ったし、自分からも話したがらなかったし……くそぅ。


 ……気を取り直して!

 じゃあなんでこんなに色々な情報が残っているか気になるだろ?なるよな!

 それについては……また次回!!んじゃな~!

 遅くなりました。ごめんなさいm(__)m

 もともと不定期なので遅くなるもないと思いますが、流石に時間が空き過ぎかなと…

 正直に言いますとレポートがあっても、書く時間は割りとあったのですがゲームをやってしまったり、動画を見てたりとだらだらしてるうちに気が付いたら1ヵ月以上たっていました。

 あと、これからは書いてるときは30分ごとに保存するように気を付けます。


5/31追記、誤り修正

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