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されど勇者は復讐を。  作者: りべら
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5話.「賢者の苦悩」


 やはり、間に合わなかったか―――。

 

 王の間で勇者抹殺の成功を聞いた二十人の上層部の中でただ一人、そんな事を思いながら苦悩するものが居た。

 

 幼少時代から天才と言われ続け、勇者に匹敵するほどの魔法の才能を持つ男、『ブルーイン・セステンバー』である。

 

 「全員死んでしまったと言うのか……。シエル、君も―――」

 

 彼は勇者となるべく、シエルと共に青春を共にした仲ではあるが生まれつき病弱な為ブルーインは勇者になることが叶わなかった。先述した通りブルーインはシエルとは旧知であり、勇者抹殺の計画を聞いた時、シエルの身に危機を感じ部下にその事を知らせるよう早馬を飛ばさせた。しか、その計画は急速に決まり、かつ迅速に実行された為知らせるには至らず、それは失敗したのだ。

 

 悔やむ彼だが一つ気になることがあった。それは『フィフス・フォース』の十人が何者かによって惨殺された件についてだ。

 

 死体の損傷具合から見て実行犯は何かしらの怨恨の情を持って行為に及んだ可能性がある。

 

 そして傷口に付着し、微量に残っていた魔力を調べたところ属性は闇と判明。また剣で切り裂かれ殺された者についても微量であるが魔力が検出され、使用された魔法の属性が一種類であり、性質も一貫している事から恐らくこれを実行したのは一人では無いのかと言うのが検死をした者の見解である。

 

 そして明日、国にデータ化された国民一人一人の魔力と検出された魔力の整合性をチェックした結果が判明する。

 

 エンデリオンでは殆ど全ての国で全国民の魔力をデータ化しその性質と主とする属性を保存している。

 

 魔力の性質と言うものは指紋やDNAと同じく一人一人によって特徴に違いがある。国内でもし犯罪等が発生すればそれの整合性を取ることで、犯人を容易に特定することができる。そして凶悪な犯罪に関しては国内だけではなく国外のデータも提供してもらい調べあげることがあるがそれは極めて稀なケースだ。

 

 二部隊とは言え魔法騎士団十人ををたった一人で相手にすることは容易ではない。それこそ魔力、剣技を合わせて各国で十人の指に入るような手練れで無い限り無理だろう。

 

 故に実行犯は戦いの実力としてはかなりの強さを持つと予想される。しかし、そんな人物がわざわざ魔法騎士団を殺す意味が無いのだ。そもそもここまでの事をする理由が無い。

 

 そして、ブルーインは一つの仮説に辿り着いていたのだ。

 

 「―――もし、勇者抹殺の策が失敗し一人でも生き残っていたとしたら……」

 

 生き残った者はオラクル国に復讐をしようと誓うだろう。国の人間を一人残らず無惨に殺そうとするだろう。

 

 もし生き残っていた勇者の内の誰かが魔法騎士団を襲ったのだとしたら説明はつく。だが一つ、腑に落ちない点が彼にはあった。

 

 それは検出された魔力が闇属性と言うことである。彼はオラクル国の中では上層部呼ばれる立ち位置におり、ある程度の人間の魔力データは把握しておりそれは勇者達のデータも例外では無い。

 

 そして、彼の旧知であるシエルの主たる魔力属性は光である。だが同時に、副属性として僅かに闇属性と火属性の検出もされていた。

 

 もし彼が生き残り、復讐を誓った結果、魔力の主属性たる光と副属性たる闇の比重が逆転してしまった場合―――。

 

 「シエル……もしかして、君なのか……?」

 

 データの結果が判明するのは明日。ブルーインは、胸騒ぎを抑えられずにいた。

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