あの、透明な水を、この手に
2015年に開催した「作者名を伏せ」「作品のみを読み」「作者を当てる」物書きさんのためのWeb企画であり、長く続いている「覆面企画7」の作品を掲載しました。
もう終了していますがサイトはこちら→http://hkmnsk7.tumblr.com
継続して参加している「覆面企画8」はただいま開催中です。真北理奈は「えらいこっちゃ」とか「勘違い間違いがやばい」と噂のEブロックに配属されました。
サイトはこちら→https://hkmn8.tumblr.com
感想も沢山頂きありがとうございます。投票数は全作品最多の18票を獲得しました。
加筆修正したものは同人誌「ゼウス・ヘラ10の練習曲」に収録ほか男の子視点も追加されています。
全員から「あの子にチュー」「女を殴ろう」「ヤンデル男子」と呼ばれた作品です。
美しいものを見た。
眩しいものを見た。
決して華やかではないけれど、例えるなら月のように柔らかな光だと、思う。
優しい光だったから。
綺麗な宝石だったから。
まるで、子供の頃に欲しがった、イミテーションのように可愛らしいものに似てる。
潰れそうで、決して消えない光を、心から望んだ。
「おはよう!」
「おはよう? 今は夜だろ」
「私は今起きたから朝なの。だからおはよう」
「あ、そう」
「何か冷たい反応」
彼氏もいる同級生の女の子に親しく声をかけられたのは一、二ヶ月前。そのあとからぺちゃくちゃと纏まりのない雑談をしたら仲良くなった。
可愛い子だった。仲のいいやつからもタイプだって言われるような子だ。そんな子と親しく肩を並べて歩いていたら怪しまれるに違いないが、実際には何も起こらなかった。
可愛い女の子は、やっぱりクラスで一番のイケメンの彼氏がいたからだ。
でも、僕にはこうやってやたら引っ付いてくる。
最初はよかったのだ、これで。とても幸せだから、これで。
付かず離れずの距離はとても気持ちよかった。言い訳もできるから。
「ねえねえ、課題見てよーあとDVD借りてきたから一緒に見よ?」
近付くようになって、気持ちいい関係は苦しみを伴うようになった。
「彼氏と一緒に見なよ」
「それはそうなんだけど、いつも面白い話をしてくれるから、好きよ?」
好き。
くるしい、くるしい、くるしい、くるしい!
そんな簡単に使うな。
そんな簡単に言うな。
言うな、言うな、言うな、言わないでくれ。
「どうしたの? 最近具合悪いって聞いたから心配なの」
思わせ振りな態度をとるな。
心配なんかしないでくれ。
ああ、ああ、ああ……綺麗な光だ。
眩しい、光だ。
──可愛い、子。
「!?」
もう止められなかった。
どんな罰を受けても構わない。
無防備な可愛い子に、深いキスをあげた。
驚いて離れようとする。けど、もう知らない。
「わかってくれたかい?」
──残酷だね、君は。
けれど、優しくて器量もよい計算高い君だから、ずっと好きだった。
唇を放して、解放してやるとポロポロと透明な光を溢してる。
「……そんなこと、言わないで……」
──やっぱり、君は綺麗だよ……憎らしいくらい。
好きで、好きで、好きで、どうしようもない。
溢れる涙にさえ惹かれてしまうこの身が呪わしかった。