第Ⅻ章 MILLENNIUM
復活した【救世主】イーヴァスと共に帰還したグレイたち。
救世軍の全員を召集して、イーヴァスは告げる。
命を失い魂を奪われたイーヴァスは、最後の力を使って、異世界から自らの代わりとなる人々を大量に召喚した。
それが、これまで戦ってきたグレイたち救世主だ。
その際、イーヴァスがグレイたちに何をしたのか。淡々と語る。
異世界の住人であるグレイたちの魂は本来、元いた世界と結びついている。その結びつきを断ち切ることで、グレイたちをこの世界――オクシデントへ召喚できた。
この時、イーヴァスは分割した自らの魂でグレイたちの魂に蓋をして自我を抑え、これまで救世主の使命を果たさせていた。
(たまごで例えるなら、黄身が元々持っていた魂で、イーヴァスは自分の魂を分けて与え、殻のように元々の魂を覆っていた。129話の回収です。)
死への恐怖、戦いへの恐怖。それらを感じることなく戦い続けて来られたのは、そのためだという。
そして、真の【救世主】が復活した今、グレイたち救世軍の役目は終わった。分け与えた魂を回収し、元の世界に帰すことが出来ると、イーヴァスは言った。
その方法とは、魂をオクシデントから解放すること。
つまり、死ぬことで元の世界へ帰れるというのだ。
(救世主が死んだ時の青い粒子は、魂が元の世界へ帰る証拠)
受け入れる者、拒絶する者――反応は様々だった。
グレイたちの自由意志を尊重して束縛・強制力を抑えていたため、イーヴァスの分け与えた魂による影響は人それぞれであったという。
イーヴァスは、生死も強制しないと言い、グレイたちに問う。
死んで分け与えた魂を返し、元の世界へ帰るか。
オクシデントを守る為、今まで通り戦い続けるか。
どちらにしても、死ねば元の世界に戻ることが出来る。
グレイたちの死の先には、救済がある。
どう死ぬのか――イーヴァスは、自由に決めていいと穏やかに言うのだった。
そして、それは純粋な自分の魂で決断するべきだと。
救世主たちの胸の中から、何かが解放され、イーヴァスへ還元されていった。
分け与えられた魂が、イーヴァスの元へ戻ったのだ。
その瞬間、これまでの記憶や感情の全てが、一気に流れ込んだ。
痛み。
死への恐怖。
戦いへの恐怖。
不安。
犠牲への悲しみ。
帰りたいという思い。
――仲間の死。
全てが。流れ込んできた。
その全てから、グレイたちは今まで守られてきた。
イーヴァスの魂に。自分自身の魂を覆った殻に。
悲鳴や絶叫。学院はパニックになった。
イーヴァスに死なせてくれと懇願する者。
帰りたいがために恐怖を圧し殺して自ら命を絶つ者。
精神の負荷に耐えられず心神喪失する者。
残存する救世軍は、3分の1にまで減ってしまった。
それでも、グレイたちは死を選ばなかった。
死ぬのが恐いから。
罪のない人々を、愛する人を守りたいから。
世界を救う強大な力が欲しいから。
理由は様々だったが、死にたくないという思いは共通していた。
イーヴァスは残る者、生きることを望む者を受け入れた。
イーヴァスは、生前に十字隊と異界へ赴いた際、トゥルムを1つ見つけたと言う。
残った救世軍で冥府へ向かい、破壊しようと言うのだ。
グレイたちは救世主としての苦悩、そして元の世界への葛藤など抱えつつも、戦いへ臨む。
2つ目の『火のトゥルム』には、前回の比にならない程の軍勢が待ち構えていた。
グレイたちはこれまで通りに戦えず、苦闘を強いられる。
一方、イーヴァスは大勢のクラウドを一度に相手取り、圧倒する。
メシアすらも退け、イーヴァスは単独でトゥルムを破壊する。
このまま残り2つのトゥルムも破壊しようとするが、ポルタが閉じるタイムリミットが迫り、更に混戦に紛れてクラウドがポルタを潜ろうとしていた。
退却を決断するイーヴァス。グレイたちも、閉じかけたポルタへ急いだ。
その時。グレイはメシアの妨害に遭う。
レインやクロムたちの尽力も虚しく、ポルタが完全に閉じてしまう。
グレイは、精神状態を表すようにひび割れたヤーグを構え、突撃する。
グレイは、無数のクラウドが蔓延る中、たった1人タルタロスに取り残されてしまったのだった。
比較的ダイジェストにしても長めになっていますが、割と流れをしっかり決めている章は、結構なにを描きたいかが集中している気がします。
その分、話の密度や情報量が増しているのかもしれません。
この辺りは、全編通しても特に物語が大きく進み、各キャラの持つドラマが発展し、深くなる予定でした。
イーヴァスに分け与えられた魂から解放されたことで、100パーセント純粋な自我を出せるようになったので、それを契機にキャラクターやドラマの掘り下げを一気に進められますし。
この辺は、本当にずっと描きたくて仕方なかった……。