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くえすと・友達を助けて

 どうも、abyss 零です。なる早で書いて参りました。お待たせしてすみません。

 では本編どうぞ。

 グレイとブルートは、モニと共にペティの里を訪れた。そこへ現れたトカンの求めに応え、クァールに拐われたカルデトを助けに行くことになった。トカンたちが出会った『お客さん』は、もしかするとはぐれた救世軍の仲間かもしれない――。


 トカンがピョコンと跳んだ瞬間、グレイたちは森の中にいた。そして、目の前にはマントを羽織る見慣れた背中がいくつかあった。


「わっ!」


 スノウは跳び退くように驚きながら、突如として現れた4人を振り返る。


「グレイ! ブルート!」


 レインは満面の笑みを浮かべて駆け寄り、膝をついて抱き合う2人に跳びついた。


「レ、レイン……!」

「わー! ちょっと、あんた! わかったっ! わかったからっ!」


 グレイとブルートは態勢を崩し、レインに押し倒されるように尻もちをついた。


「むー(うわー)」

「えうー(ぎえー)」


 モニとトカンも、その巻き添えをもらう。


「なんか、消えたと思ったら増えてる……」


 クロムがじたばたもがくモニをジト目で見つめる。グレイとブルートの制止やモニたちの悲鳴を受けて、レインはようやく4人から離れた。


「よかったぁ……2人とも無事で……」


 レインは気の抜けた顔をして、へなへなと力なく座り込んだ。


「……ずっと、2人でいたんですか?」


 スノウがレインの傍らへ近寄りながら訊ねた。


「ああ。飛空艇から落ちた俺を、ブルートが助けてくれたんだ。それからは、ずっと一緒に行動してた」


 グレイは説明しながら、二手に分かれて仲間を探そうと提案した時、ブルートが露骨に不安がったことを思い出していた。不意にニヤけた口元を、咄嗟にそっぽを向いて誤魔化す。


「そう……なんですね……」


 グレイは、スノウの声音が、どこか落ち込んでいるように聞こえた。最近は、少し控えめな性格や振る舞いが段々と変わってきている印象を受けていたが――まあ、仲間とはぐれて不安になるのも無理はない。グレイは勝手に納得した。


「――ねえ、チルドたちは見た?」


 ブルートはレインたち3人に訊ねる。が、みな一様に首を横に振る。


「そっか……あたしたちも、まだ会えてないんだ」


 ブルートは肩を落として項垂れた。レインは、落ち込むブルートの傍へ寄り添った。


「無理もないよ……ブルートはグレイを助けてくれたんだもん。私たち、あの後どうすることもできなくて……墜落してく飛空艇の中で、クロムの言う通りしがみつくしかなかった。空間魔法で脱出はできたけど、他のみんながどうなったかは、分からないんだ……しばらくして、あっちの方ですごい爆発がしたけど…………」


 レインは伏し目で事の顛末を説明した。グレイは、グッと拳を握った。


「大丈夫。あいつらはこんなことで死なない。きっと、ちゃっかり脱出してピンピンしてるさ」


 言いながら、握り拳に力が入る。こうして仲間がはぐれているのは、自分のせいでもある。真っ先に飛空艇から投げ出され、ブルートやみんなをパニックにしたのだから。

 なんとしても、みんな無事に帰る――グレイは堅く決意した。


「そういや、お前らなんでトカンと一緒なんだ?」


 クロムが、重い空気を切り替えるように訊いてきた。


「あたしたち、この子と出会ってペティの里に行ってたの」


 ブルートは答えながら、モニの両脇を抱えてクロムに見せた。


「むぅ(こんにちは)」


 モニは短い片手を挙げ、クロムに挨拶した。クロムは『あぁ』と素っ気なく返す。


「で、里の長老……あれ、村長だっけ? まあ、ともかく偉い人と話してたら、トカンが来て、仲間の子がクァールに拐われたって聞いて、一緒に――」


 ブルートは途中まで話すと、スノウとほぼ同時に『はっ!』と息を呑んだ。


「そう……カルデトちゃんが猛獣に連れ去られて、食べられちゃいそうなんです! 私たち、突然の出来事で助けられなくて……トカンちゃんが『助けを呼ぶ』っていきなり消えちゃったから、ここで待ってたんです! 私たちだけでも先に助けに行こうって話してたら、グレイさんとブルートさんが…………」


 スノウが、木の幹にぽっかり空いた穴を指した。グレイは、そのクァールが入っていったという場所を覗き込んだ。


「そうか、この中へモニの友達は……結構深く続いてそうだな。俺が助けに行くから、みんなはモニたちとここで待ってて」

「えっ? 私も一緒に行くよ」

「モニたちにとってクァールは天敵みたいだし、危険な目には遭わせられない。それに万が一、他のみんなと入れ違いにもなりたくないからな。何人かは残った方がいいだろ。――ていうか、レインは『ロック・アート』で、近くに誰かいたら場所を報せられるだろ」


 グレイは、ふと思いついてレインに言葉を返した。『ロック・アート』は、レインが魔弓ニアから放つ魔法の1つで、凄まじい爆音を鳴らす。その魔法を使えば、仲間と合流しやすくなるはずだ。

 一方、レインは目を丸くしてグレイと見つめ合っている。クロムとスノウも、同様に沈黙していた。


「…………たしかに、そういう手もあったかも、な……」


 しばらくして、クロムが腕を組んで斜め上あたりを眺めながら言った。

 レインも、頭を抱えて即座にうずくまる。


「全然思いつかなかった……」


 呻くようなレインの語気から、彼女が急速に落ち込んだのは明白だ。


「み、みんなのことが心配で、それどころじゃなかったし……わ、私もこれっぽっちも気がつかなかったよ……ごめんね、レインちゃん…………」


 スノウがしゃがみ込んでしまったレインへ駆け寄り、そっと肩に手を置いて励ました。――厳密には、一緒に落ち込んだ。


「えぇ……まあ、こんな状況ならテンパらない方が無理だけど…………じゃあ、あたしがグレイと一緒にカルデトを助け出すから、あんたたちはここで待ってて」


 ブルートは、グレイのいる巣穴の傍へ歩きながら、レインたちに言った。


「……分かった。グレイ、レインたちは俺に任せろ。空間魔法であちこち探し回れるし、何があっても必ずこいつらは守る」

「うん……じゃあ、私は『ロック・アート』でみんなに居場所を報せてるね」


 クロムとレインは、この場に留まることに納得したようだ。


「私は…………トカンちゃんたちと一緒にいるね」

「むぅ(わーい)!」

「えうん(やったー)!」


 スノウが力なく言うと、ペティ2人はぴょんぴょん飛び跳ねながら喜んだ。


「了解。それじゃあ、行こう」

「うん」


 グレイとブルートは、穴のある木の前で屈んだ。穴の幅や高さは、グレイたちが通れないほど狭くはないが、身を縮こまらせなければつっかえてしまうだろう。


「むぅ、むぅむぅむぅ(クァールの歯は痛いですから、咬まれないようにした方がいいですよ)!」

「えうえうえうえうえう(カルデトがどこにいるかは、多分ずっと進んでたら分かると思いますけど、ヤバそうになったら耳を塞ぐんですよ)!」


 モニとトカンが、グレイたちにアドバイスのようなものを与えてきた。グレイとブルートは、互いの顔を見合わせた。気遣いは嬉しいが、内容がふわふわしていて、あまり役に立つ情報とは言えそうにない。

 グレイは当惑の気持ちからブルートを見たのだが、しかし対するブルートの表情は、ペティの里に着いた時のような緩みようだった。アドバイスなどは関係なく、ペティたちに見送られるのが嬉しいみたいだ。


「2人とも、気をつけてね……」

「身の危険を感じたら、すぐ引き返してくださいね……わ、わたし、治療しますから…………」

「ここは任せろ」


 レインたちも、グレイたちの身を案じてくれた。


「ああ。すぐ戻るよ」

「絶対カルデトちゃんを助けてくる!」


 グレイとブルートは、意を決してクァールの縄張りへと潜っていった。

 近日中に、定期的に更新できるようになる可能性があるかもしれません。皆様にコンスタントに物語を届けられましたら、これほど幸いなことはありませんので、頑張ります。

 次回も乞うご期待。

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