決闘とかいてデュ○ルと読む
『私とやろうだなんて貴方ほど愚かな天使は見たことがないわ。アウラ?』
『ふんっ!そっちこそ、私に勝てるなんて思ってるの?流石、胸の乏しい悪魔は知能すら足りないようだね?イチカ』
『なにやってるんだ?お前ら』
ここは、私立白砂魚学園の東校舎三階の端に位置する地学準備室。
ちなみに、放課後は俺たち超常生物研究同好会の活動場所になっていたりしている。
そんな、地学準備室にて二人の少女がお互いに睨み合いながらトランプの様なものをしていた。
一人は、闇よりも黒い、まさに漆黒という異名がふさわしいほどの長い黒髪を持つイチカと呼ばれた少女。
感情表現に乏しいのか冷たさすら感じる無表情だが見る者全てを魅了するような綺麗な顔が目に映る。
胸の乏しい触れるだけで折れそうな細い身体に白砂魚学園特有の薄桃色の制服を身に纏っている。
もう一人は、全てを照らすような光をイメージさせる銀髪を持つアウラと呼ばれた少女。
イチカとは逆に天真爛漫と言う言葉が似合う様な可愛らしい笑顔を顔に浮かべゲームに興じている。
体格もイチカとは違い小柄なのに自己主張が強い制服では隠しきれない胸元が彼女が動く毎に揺れている。
『あら、ヒロ。遅かったわね。貴方も入りなさい。我が眷属として主に尽くしときなさい』
『ヒロ君やっほ!ヒロ君もトランプやろうよー。私の眷属なんだから私の味方をしてよね!』
二人してそう話しかけてくるが俺はどちらの味方をすればいいのだろうか。
と言うか、眷属とか専門用語を出して読者が困惑しちゃうだろ。
まったく。
説明させてもらうと、イチカとアウラは人間ではない。
今でこそ人間フォルムでいるが俺が最初に出会った時は二人とも現実離れした姿をしていた。
イチカの本当の姿は大公爵・アシュタロス。
悪魔の中でも高位のランクにいるサタンを含む四大悪魔の一人である。
出会った時は、ドラゴンの様な姿をしていた。
また、アウラの本当の姿は熾天使・ミカエル。
天界の中での9階に於いて最も高位の天使であり四大天使の一人でもある。
どちらも高位の天使と悪魔である。
なぜそんな二人がこんな校舎の端の部室にいるのかと言うと天界の主・ゼウスと魔界の王・ルシフェルの戦争が原因である。
聖書などではルシフェルの敗退に終わっているのだが現実では違う。
天界と魔界の抗争は、時代を越えていまだ続いている。
戦いが長引き過ぎて天界と魔界が既に荒廃してしまっている程に長引いていた。
長引き過ぎてしまった事が原因でお互いの主は狂い始め人間界に目を向けてしまった。
人間を自らの眷属として戦わせることで勝敗を決める。
戦争をそんな単純で簡単なゲーム感覚にしてしまったのだ。
それで俺は眷属になったのだが‥
まあ、4月の時点で色々あって俺はイチカとアウラ、二人の少女の眷属になったのだった。
はい、説明終わり。
『なんのゲームをやってるんだ?お前らが仲良くなんて珍しい』
『『ババ抜き』』
『二人きりでかよ!』
つまらないだろ絶対に‥
荷物を端の机に置いて二人の手札を覗いてみる。
イチカ:1.3.8.13.9.サイクロン
アウラ:1.3.8.9.13.ジョーカー
明らかにおかしいカードがある‥
全力で東○に土下座しなきゃいけないくらいにおかしいカードが‥
ツッコミ待ちなのだろうか。
ツッコミを入れてもいいんだろうか。
『私のターン!ドロー!』
イチカがアウラからカードを引き抜く。
引き抜き様にバックに武藤○戯が見えたのは気のせいだと思いたい。
引いたカードは1。
イチカの手元にも同じ数字があるのでイチカはカードを捨てる。
『ふっ‥貴方は私のデスティニードローには勝てないわ。諦めなさいアウラ』
『ふんっ!負けないよ!私のターンだ!ドロー!』
今度は逆にアウラがイチカからカードを引き抜く。
もう、二人のバックに見える伝説の○闘者の姿は気にしないことにしよう。
そうしよう。
それから数分間。
同じ動きが繰り返されているので割愛。
『ふっ‥ラストターンよ。アウラ』
『さぁ、自分の命が尽きる音と共に消えるといいよ。イチカ』
睨み合いながらイチカとアウラは同時に相手の手札を引き抜く。
さぁ、勝敗はどうなったのか!
俺は部屋の隅に置いてあったショートケーキを食べながら戦況を見守る。
うん、久しぶりに食べたせいかいつもより美味く感じる気がする。
『私の勝ちよ。マ○ク』
どうやら、数字を引いたのはイチカだったらしい。
イチカはカードを天に掲げながら勝ち誇った顔をしていた。
『そんな‥馬鹿な‥』
『さぁ、受けてもらうわよ!パニッシュ○ントゲーム!』
イチカが地にひれ伏しているアウラに向け叫びながら指を刺すとアウラの様子が変わり始めた。
白砂魚学園の薄桃色の制服が段々黒く変わっていき所謂ゴシックロリータファッションと呼ばれる様な格好へと変わっていった。
『うぅ‥』
アウラは恥ずかしそうに顔を赤らめながら前を隠そうとするが彼女の自己主張の強い胸元がそれを許さない。
ちなみに、かなり可愛い。
アウラの光るような銀髪に黒いゴシックロリータがよく似合っていた。
まあ、恥ずかしいから言わないけど。
『さぁ、その格好のままご奉仕して貰おうかしら?まず手始めに私が買ってきたそこのショートケーキを‥』
イチカはこちらを向いて沈黙する。
ん?なんだ?
なぜ、こっちを見て‥
『ヒロ。貴方今何を食べているのかしら?』
何って
そりゃ、ここに置いてあったショートケーキを‥
って、まさか!
『‥まさか、これってイチカの?』
俺の質問にイチカは頷く。
‥あっちゃあ。
『私の楽しみにしていたケーキを食べるなんていい度胸ね?ヒロ。覚悟は出来てるのかしら?』
そう言うイチカからはなにか闇のオーラが巻き上がっている。
‥あれ?俺、ピンチじゃね?
そう思った瞬間には既に遅かった。
『灼熱の○掌!』
イチカの腕から灼熱の熱風が巻き起こり俺は窓から吹き飛ばされた。
『うっそだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!』
そうやって俺は地面へと落ちていった。
ちなみにアウラはご奉仕をせずに済んだからかホッとした様な表情を浮かべながら親指を立てていた。
ちくしょう‥
てか、俺の名前がまだまともに出てねえし!
そんな事を考えながら地面が近付くのを感じるのだった。