人との仲の深め方
物語の進みが遅い…。頑張らねば。
「………………」
「………………」
片や薄く笑い、片や睨むようで微妙に笑うという、奇妙な顔をしつつ、零司と燈静は対峙する。
それを困惑しながら、切は見ていて、穂波は「何をやってるんだか」とでも言いたげな目を向けていた。
そして、零司の前に入ってきた女性は、
「雰囲気出してないで座れっ!」
ドゴッ!と響くほどの威力で、零司の脇腹を殴った。
殴られた零司は息が詰まったのか「こふっ」という音を口からも漏らし、崩れるように椅子に座り、机に顔を突っ伏した。
「…………えーと」
その一連を見て、燈静はどうしたものかと困惑の声を上げる。というか、上げる他なかった。
机に突っ伏してプルプルと震える零司を見ると、何とも言えなくなるのだから。
そうやって燈静が困っていると、隣に座っていた切が突如立ち上がり、小さく呟いた。
「……さって、俺はいい加減に仕事に戻るかな」
「待って!?」
席を離れようとする切の腕を、燈静は咄嗟に片腕で掴んだ。そしてそのまま、決して逃がさないとでもいうように力を入れる。
「離せ燈静…!」
ギリギリと腕が締め上げられながらも、切は必死に逃げようと足に力を入れる。
「絶対に断る…!」
対して燈静は、掴んでいない方の手でテーブルを掴み、切とは逆方向に力を入れる。
「店の備品に何してんだ燈静…!今すぐその手を放しやがれ…!」
「嫌ですよ…!そんな事したら切さん逃げるじゃないですか…!」
「当たり前だこの野郎…!一々めんどい事に首突っ込んでたまるか…!」
「今更過ぎますよ…!というか慣れっこでしょう…!?」
「お前のせいで確かに慣れたがなぁ…!それでも、好き好んで首を突っ込むわけあるか…!」
「そんなこと言わずに…!」
そんな言葉の応酬と共に引っ張り合いを続ける二人。
この瞬間の二人は頭から抜け落ちているが、今二人がいる場所は、店の中である。一応、切が気絶した燈静を連れ込んだ際に配慮して、店の中でも割と端の方ではあるが。
ともかく、端の方とはいえ、店の中は店の中である。
騒ぎを起こせば普通は注目を集めるものである。
……普通、ならばである。
だが、生憎と|この店《Pace della mente》は普通とは言い難い。
何せ、毎日のように従業員が何かしらのアクシデントを起こすのだ。そんな事が毎日起これば、常連はそれを知るし、常連じゃなくとも噂などで知る。
その証拠に、店員と客が引っ張り合いを起こしているというのに、従業員はおろか客さえ特に気にせず自分たちのことをしている。
時折、何だ何だと見る人もいるが、すぐに視線をそらして食事なり仕事なりに戻っていく。その際に、皆「何だいつもの事か」と呟くのも皆同じである。
まぁ、そんな事もあり、燈静と切の奇行は特に気にされることもなく、五分後に切が足を滑らせ、テーブルに頭をぶつけ気絶するまで続いた。
因みに、穂波と女性も特に目の前で起こっていた奇行を気にせずに、メニューを広げて何を食べようかと選んでいた。
奇行に慣れているのか、どうかは知らないが、無視できるあたりこの店に入るだけの人物であるということである。
* * *
それから大体二十分が経過した。
燈静は切と引っ張り合いという運動をして多少腹を空かしたおかげで、残っていたピザを捨べて食べ切り、零司はいつの間にかケロッと復活して、穂波と女性が注文をした時にさらっと注文を載せていたりした。
そんなこんなで、穂波たち三人が注文した料理がテーブルいっぱいに並んだ。
『…………』
そう、いっぱいに。である。テーブルの隙間が殆ど見えないほど、いっぱいに。
「……おいこれ誰だ頼んだの」
頬を引き攣らせつつ、零司が隣に座る二人に聞くと、二人はさっと目をそらした。犯人が確定した瞬間である。
そんな仕草を見て、呆れたのか零司は大きくため息をつき、「まぁ、最初からわかってたけどさぁ…」と呟く。
その呟きに、女二人はバツが悪そうに髪を弄ったり、頬をかいたりと反省してるのかどうか微妙な仕草を始めた。
「いーかげんにしろやー…」と怒りと呆れの混じった声で零司がそう言うと、穂波が髪に視線を向けたままぽつりと、
「いやまぁ……お腹減ってるし、平気かなって思ってさ」
「お前、そんな大食感でもねぇだろ」
「朝飯も昼飯も食べてないし……な?」
「いや、な?じゃなくてよ」
穂波の言い訳を聞くにつれて、どんどん零司の怒りのボルテージが上がっていくのが、テーブルの反対側にいる燈静達からでもよくわかった。
そんな様子を見て、燈静達はこそこそと、
(今にも爆発しそうですねぇー)
(だなー。つか、残すことを俺が許すわけないんだがな)
(……そういえば切さんも食べ物残すの許せない人でしたね)
そんなどこか呑気な会話をしていた。
とはいえ、零司の怒りが今にも爆発しそうなところを見ると、さすがに二人も少しは気が気ではない。
もし怒りが爆発した際の被害を考えたくもないというのもある。が、それよりも、そうなった際に止めるのは近くにいる自分たちであろうから、起こって欲しくないというのが本当の本音である。
なので、迷惑が自分らにかからなければいいなー。なんて二人とも思っていた。
そして、そんな二人の願いが届いたのか、零司と穂波の間に座っていた女性が「まーまー」と二人をなだめるように手を広げた。
「なんすか姐さん。ひとまず説教くらいさせてくださいよ」
「いやまぁ、それは帰ってから零司じゃなくてエルあたりにしてもらえばいいじゃん?それよりも、お二人さんが困ってるからひとまずストップしなー。ってこと」
女性が親指で燈静達を指し示すと、零司も視線をそっちにやった後、「むぅ」とだけ漏らし、傍から見て分かった怒りを霧散させた。
穂波は零司のその行動にほっと安心したような息を吐いていたが、すかさず女性は「穂波は後で覚えときなよ」と言うと、一瞬で青くなった。
(何が起こるんだろう…)
青くなった穂波の顔があまりにも青かったので、気になった燈静であるが、多分聞いたら色々と後悔するだろうと思い、自分の中に留めておくことにした。
というか、それよりも非常に気になっていることが一つ。
「あのー」
「はいはい?」
「すごく今更感満載なんですけど……どちらさまで?」
本当に今更である。
そして、聞かれた本人といえば、
「……………あ」
と、呆けた声を出した。
「忘れていたんですね?名乗るの忘れてたんですね!?」
「うん、すっかり忘れてた」
「忘れるもんなんですかね!?名前名乗るのって忘れるものなんですか!?」
「俺らが引っ張り合いしてたっつーのも一因だろうけどなー」
「それは切さんが全面的に悪いいででででででっ!!?」
何やら適当なことを言い出しそうだったので、切が脇腹を抓り燈静を黙らせ、続きを継ぐ。
「………まぁ、それはどうでもいいとして名乗ってくれ。俺は全員知らないんで、そっちのちびっこから順に頼む」
「ちびっこ言うな。……まぁいい、私は三虎穂波。横の二人の主だ」
両腕を組み、胸をそらして偉そうな態度をとる穂波。とはいえ、背が小さいせいか可愛いとかそういった風にしか見えない。本人は偉いぞーとでもやっているつもりなのかもしれないが。
「んで、あたしは霧詰つみれ。そこのちびっこのメイドをやってるよー」
よろしくねー、と笑顔で手をひらひらと振っているつみれ。燈静から見れば、親しみやすい人という印象が強い人である。
「そんで、俺は大神零司。姐さんと同じでそこのちびっこの執事やってる。後、風峯との関係はまぁ、なんつーか……戦った仲?」
苦笑しつつ、そう言う零司。切はそんな零司に何か引っかかるものがあったが、それよりも気になることが一つ。
「このご時世に、その関係性っておかしくね…?」
戦った仲とはいったい何なのか。平和な今には些かおかしい関係性ではないのか。そう思う切だが、隣の燈静が遠くを見つつ、
「切さん、お金持ちには常識が通用しない場面が多いんですよ…」
と言うので、それ以上は何も言わなかった。そしてまた、一つ気になったことが新たに浮上した。
「なー、燈静」
「何です?」
「お前さっき、お金持ちっつたけどよ……お前今、どんな状況なんだ?具体的には、誰に拾われた?」
聞き方がどこか犬猫のそれに近いが……特に燈静は気にすることなく「えーと、十鳳家ですねー」と答えた。
「……………え、マジで言ってやがる?」
「嘘言う必要もないですけど」
「マジで?三大名家の一角に拾われるって、お前何やったの?」
「何で、何かやった前提で話を進めようとしてるんですかね?怒りますよ?」
拳を握りつつ、笑顔でそういう燈静に、切は「いやいやいや」と手を振って否定する。
「何がどうやってどうなったら、一般人だったお前が金持ちの家に拾われるんだよ…。マンガじゃねーんだぞ?」
「それはこっちが聞きたいんですけどもねぇ…」
拾われた理由が理由なだけに、燈静としてもおかしくない?と言いたいところである。
まぁ、文句を言ったところでどうにもなるわけではないので別にいいのだが。
「というか、切さん。お金持ちなら目の前にもいるじゃないですか」
「……あぁ、そういや三虎も三大名家の一つだったわな。目の前のちびっこがそうとは思いづらいから忘れてたわ」
「ひみっほふうは!!|ほんほうはら、ほほふほほはわ、ほうりがふまいふぁらふるふ《本当なら、怒るところだが、料理がうまいから許す》!!」
「うん、口の中のもの全部食ってから話そうか?というか、いつの間にか食ってやがるし…」
もぐもぐと口いっぱいに、料理を入れながら話す穂波に、呆れて突っ込みを入れる切。
というか、今さっき自己紹介した時から今までの間でいつ、口に詰め込んだのだろうか。
そう切が疑問に思っていると、自分で頼んだピザを口に運びながらつみれが「まぁ、お腹空いてるしねー」と軽く言う。
腹が空いてるからというのは、理由にはならないが、疲れている切は、もうそれでいいや。と諦め、全体重を椅子に預けた。
うぁー。と呻く切の姿に、綺麗にパスタを食べていた零司も、油のついた指を舐めていたつみれも苦笑した。
その間、穂波は手当たり次第にテーブル上の料理を口に詰め込み、燈静はその光景を見て、吐き気を催し口と腹を押さえていたが……それはともかく。
五皿ほど空にして、穂波が燈静と同じような状況になったり、男だからという理由で残りの料理を零司一人で食べさせられそうになったり、そこで何故か切が食べるようなことになったりと色々あった、三十分後。
「なぁなぁ!デザート食べていいか?」
全ての料理が空になったところで、穂波が無邪気にそんなことを言い放った。
その言葉に、零司は首を傾げながら、
「お前さっきまで吐きそうじゃなかったっけ…?」
「え?デザートって別腹だろ?」
「それは女だけじゃね…?」
一概にそうとは言えないが、女性のイメージとしては間違ってはいないだろう。
まぁ、男子でも普通に食べる人はいるが、零司は別にそうではない。
「軽い偏見な気もするが……まぁいいや。何にしよっかなー」
「おい俺、いいなんて一言も言ってないんだが」
「つみれが親指立ててるから、いいかなって」
「姐さぁん!?」
「吐きはしないでしょ……多分」
「不吉すぎるっ!」
零司が小さく叫んだところで、対面で見ていた切が「あ」と何か思い出したように燈静に向き直った。
「そーいや、燈静。お前まだ残ってたよな?」
「ごめんなさい本当に許してくださいデザートでも胃に入れたら吐きます絶対に…!」
今にも土下座で謝りそうなほどの勢いに、切は「お、おう…」とやや引いた。
まぁ、確かに普通じゃありえない量を一人で食わせたのだ。デザートくらいは免除してやってもいいかもしれない。
だが…、
「俺がその程度で許すと思ってるのか?」
「ですよねぇ!!」
切はそんな程度では罰を撤回したりはしないのである。
「つってもま、撤回はしない。が、ちっとは緩めてやる」
「…へ?」
突然言われた言葉の意味を燈静が理解できないうちに、切は「そこの三人」と対面の穂波たちに声をかける。
声をかけられた三人は、メニューから顔を上げ、「何―?」と代表でつみれが返事をした。
「今からお前ら、デザート頼むんだろ?」
「あたしと穂波はねー。零司はわかんない」
「軽いもんあったら頼みますよ。今は見てるだけっす」
「だそうだよ?」
「そかそか。んじゃ、俺から一つ提案」
そう言い、切は一つ指を立て、
「デザートを店で奢ってやる。だから、実験台になってくれ」
もっと別の言い方はなかったのだろうか。
「そこは試食してくれ、でいいんじゃない…?」
実験台という言い方は、どうにも不安を煽ってくる。
怪しいものでも入っていて、人体実験でもされるのかと思ってしまう。
(まぁ、もしもそうなれば、零司に全部食わせれば問題ないか)
そう考え、うん。と一つ頷き「いいよー」と返事を返す。
「んじゃ、ちっと待ってなー」
そう言い、切は手をポキポキと鳴らしながら厨房へと入っていった。
(……なんで、手を鳴らしたのかな…?)
気合を入れる意味でもやったのかもしれないが、燈静としては切がそうすると今から喧嘩でもしに行くのかと思ってしまう。
(いやまぁ、絶対にないだろうけども)
それでも、どこか信じられない燈静であった。
「……………」
「……………」
「……………」
「……………」
そして、切が去ってから五分が経過した今。
誰もしゃべらず、店の喧騒が遠く聞こえるほどにそこは静かだった。
燈静は未だに気を抜くと胃から込み上げてきそうなものを必死に抑え、零司はどこを見ているか定かではない目で水を飲み、つみれはそんな二人を見て小さく笑い、穂波は今にも爆発しそうなほどにプルプルと震えていた。
「………………だぁーっ!!!何か喋れーっ!!!」
そして、とうとう静寂に耐え切れなくなり、穂波が爆発した。
「お前ら何なの!?普通にしゃべることくらいできるだろ!?」
「や、別に喋らなくてもいいじゃん?」
「いや、喋れよ!?私がイラつくから喋れよ!?」
「それはどうなんですかね、三虎さん」
「あとそれ!」
ビシッ!と人差し指を穂波は燈静に突きつける。その行動に、何が?と燈静は首を傾げ、それがさらに穂波の理不尽な怒りを加速させた。
「何で、名前呼びなんだよ!!」
「いや、まだ二回しか会ってませんし。一回目は互いに見ただけですし」
「知るかっ!今すぐ呼べっ!!」
「えぇー…」
呼べ、と言われると何故か呼びたくなくなるのは何故なのか。
そんな思いを抱きつつ、燈静は穂波の従者である二人に助けを求める意味で、視線を投げた。
視線を受けた二人は、
「まぁ、穂波がいいって言ってるならいいんじゃね?」
「あたしらは別にいいしねー」
好きにしろと、そう取れる言葉だけを返してきた。
それに燈静は諦め、ため息を一つつき、
「穂波さん、でいいですか?」
「呼び捨てがいいが……そこまで強要する気はないしな。それでいいぞ!」
「強要してる自覚はあったんですね」
「そりゃな!」
いい笑顔で言われてしまった。あまりにもいい笑顔だったので、燈静も毒気を抜かれてしまった。
「そんじゃ、あたしもこの流れに乗ってみる。そんなわけで」
「呼べと?名前で呼べと?」
「うん」
「……………」
ノリが軽いなぁ。と思いつつも「つみれさん」と呼ぶと、つみれは大人びた微笑みを返してきた。
その笑顔を見て、人の笑顔ってそれぞれ違うんだなー。と妙な感想を抱いた燈静であった。
さて、穂波、つみれときたら残るは一人。
三人は、残る一人……零司に一斉に視線を向けた。
「……流れに乗れと?」
「乗らないと、ノリが悪いことになるぞ?」
「いや、俺別にそこはどうでもいいんだが…」
「ノリが悪いぞー」
「姐さんは軽すぎやしませんかね?」
明らかに、今までの流れに乗りたくないといった会話。
とはいえ、あくまで乗り気ではないだけであって、名前呼びに反対しているわけでは決してない。
零司の中にある、名前呼びのハードル……というとさすがに大仰だが、条件はクリアしている。
なので、別にこの場で呼んで呼ばれてでも構いはしないのだが…。
(なーんか、それだとつまらんのよなぁ)
面白さを求めているわけではないが、面白味があった方が零司的にはいい。
何か面白い方法はないか。と横から聞こえる穂波の声を無視しながら数秒考え、ある一つの案が思いついた。
「なー、風峯」
「何です?」
「お前この後暇か?」
「今日一日、暇もらってるので暇っちゃ暇ですけど」
「そかそか。んじゃ、この後ちと付き合え」
「……どこ行く気ですか?」
怪しげに零司を睨む燈静に、零司は小さく笑い、
「ついてくりゃわかるさ♪」
と言った。
* * *
「はぁ……はぁ…」
「あー……きつ…」
薄暗い場所で、二人は互いに息を切らせながら三メートルほどの距離で向かい合っていた。
だが、零司は額に軽く汗をかいているだけなのに対し、燈静は額には大粒の汗、上の服は二の腕あたりまでまくられていた。
これだけで、どっちの方が疲れているかなど一目瞭然である。
「ふぅー…」
額から顔の右側を伝って垂れてきた汗を右肩でぬぐいつつ、燈静は両手でそれぞれ持っているものを確かめる。
右手に握っているのは、凸のような形をした、硬いモノ。これは零司も持っている。
対して、左手に持っているのは、今は燈静だけが持っているモノ。丸く平たい形をしたそれは、触ればスベスベとした感触を与えてくれるのだが、今触れば、ところどころがザラザラとしてる。
「……………」
燈静は、そのザラザラとした感触を指先で二度三度と感じた後……ソレを自分の頭より少し高い位置になるように放った。
そして、投げたソレが頂点に達し、落ちようとした瞬間、
「―――フッ!」
右手を鞭のようにしならせ、手に持っていたモノで叩きつけるように殴った。
カァン!!と小気味いい音を鳴らし、放たれたモノは、勢いよく零司へと飛んでいく。
飛んでくる物体に、零司は笑い、
「―――ッ」
左手に持っていたモノで、威力を消しつつ、高く上にあげるように飛んできた物体を腕を横薙ぎに振って弾く。
零司によって弾かれ、くるくると回転しながら上昇する物体。
それを視界に収めた零司は、腕を振った勢いそのままに時計回りに軽く回転する。
一回転、二回転と周り、そして百八十度回転したところで、零司は頭を下にするように跳躍した。
体勢的にはオーバーヘッドキック……といよりもまさにそれである。
ともかく、零司の天と地が逆になり、打ち上げた物体もちょうど頂点に達した瞬間、零司の右足がしなり、またもや物体を蹴り返した。
燈静が打ち出した時よりも、速く、鋭く迫りくるソレに、燈静も笑みをこぼし、右手のソレを強く握った。
そして、迫りくるソレを打ち返すべく、振りかぶるーーー!
一方、燈静と零司がヒートアップしていくのを、少し離れたところで見ている、穂波とつみれの二人。
ガガガガガ!と機関銃でも撃ってるかのような音が聞こえるなか、音にかき消されそうなほどの声量で、穂波はポツリと呟いた。
「……あれって、ああいう遊び方するもんじゃないよなぁ…?」
どうやっても、アレがあんな遊び方には決してならないだろうと、思いつつ。
そしてその小さな声を、そばに控えていたつみれが拾い、苦笑しつつ、
「まぁ、そうだけど……流石にしょうがないんじゃない?」
と返す。
しかし、つみれはそうでも、穂波は一切納得できず、噛みつくように叫ぶ。
「いやいやいや!?普通、出来ないだろあんな事!?」
「……あたしら、出来るやつ多いよ?」
「うちはそうだったなぁ!」
そういえばそうだった!と頭を抱え、穂波は嘆く。ただでさえ、普通じゃない連中が多いのに、それを再確認させられたためだ。……まぁ、そばにいるつみれもその、「普通じゃない連中」のひとりなのだが。
ぬぉぉ…。と頭を抱えてしまった穂波を、視界に収めつつ、つみれはある物を打ち合う二人に、視線を移す。
(……確かに、あたしらもできるけど……あそこまでは無理な気がするんだけどねぇ)
つみれが思う通り、つみれ他何人かの人はまぁ、燈静達のように数合打ち合うことは出来るだろう。ただ、五回以内にはどっちかが打ち返せなくなってしまうだろう。
そう考えると、二人ともおかしいレベルである。
(つかまぁ、使ってる物もおかしいんだけどさ)
そこまで考えると、つみれは自分の近くに置かれている、かなり大きい台に目を向ける。
目を向けたその台は、台をちょうど二つに割る位置にネットがかけられている。本来なら、そのネットは綺麗な緑色をしていただろうが、今はネットの下の方が軽く焦げている。
そして、肝心の台の表面なのだが……本来ならば、軽く白線を引かれた青色をした台なのだが……今は、その色が見えないほどに黒ずんでいた。……いや、正確には焦げていた。
(よくもまぁ、摩擦で焦がせるもんよね……というか、あの台って焦げ付くもんなの?)
そう考えながら、つみれは台……エアホッケーの台から目を離し、零司たちに視線を戻した。
さて、今更ながら燈静達が今いる場所を説明しよう。
燈静達四人がいるのは、ゲーセンの中である。あの後、デザートを食べた後、切に別れを告げて零司がここに連れてきたのである。
そして、零司と燈静がいるのは本来なら、エアホッケーの台が中心に置かれた、直径五メートル程の店の天井ほどの高さの柵に囲まれた場所である。今は、台が端っこに置かれているため零司と燈静が向かい合いつつ円盤を打ち合い続けている。
つみれと穂波は、その柵から少し離れたところで二人を観戦している。
それで、何故燈静と零司がエアホッケーで勝負しているかというと……単に、零司がゲーセンについた途端に「もっかい、勝負しようぜ」と吹っ掛けたのである。
それに燈静も乗り、何で勝負するかと話し合った結果、エアホッケーになったのだ。
そして、なったのはいいのだが……このエアホッケー、決して普通とは言い難かった。
そもそも、柵に囲まれてやるエアホッケーなど聞いたこともないし、普通のエアホッケーは時間制限があるのだが、このゲーセンのエアホッケーはそれがない。三十点先に先取した方が勝利という、少し変わったエアホッケーなのである。
まぁ少し変わっていたのはいいとして。二人は普通に始めたのだが……普通に零司が始めはしなかった。
一番最初の一打目から、全力でパックを打ったのだ。速度としては残像が見えるほどの速さでである。
台上を高速でパックは滑り、軽く台を焦がしながら燈静の方のゴールに叩き込まれた。
最初それにつみれ、穂波、燈静の三人はぽかんとした。が、燈静だけはすぐに戻り、返すように燈静も全力で打ち始めたのだ。
そこからが最早エアホッケーとは言えないものが始まったのである。
互いに高速で打ち合い、台を焦がし、台をところどころ壊す。そんな試合をやっていれば、先に台が使えなくなるのは当り前であろう。……正確にいうなれば、互いに十五点ずつ取った瞬間に台がうんともすんとも言わなくなってしまったのだが。
それはともかく、台が使えなくなってしまえば、普通なら諦めてやめるだろう。だが、この二人はその程度ではやめはしなかった。
エアホッケーの台を端にどかし、パックを持ち出し、落とした方が点を取られるというバドミントンのようなルールに変更して、再び打ち合い始めたのである。
最早バカどもがやる事は一切不明である。
(……いやマジで予想外だった。うん)
今もまだ高速で打ち合う二人を見ながら、つみれはそう思う。
まだ、零司に関してはそういう行動をとることはわかる。背格好や雰囲気からどうも大人びて見えるのだが、実際のところはどうにも子供っぽいとこがある。
故に、今回のような行動に出ることも理解はできるのだ。
ただ、燈静に関しては本当に予想外だった。
つみれの燈静に対する印象というのは「常識人」というのだった。パッと見ても、どこかツッコミ気質っぽいというか、苦労人というか……とにかく、そういう雰囲気を感じたものである。
なので、こうなった時には燈静は乗っからないだろうとつみれは思っていたのだ。……まぁ、今零司と打ち合っているところを見ると、どうやらつみれが思っていたよりも、男の子だったようだが。
(ほんと、パッと見じゃわからないもんよねぇー)
うんうん、と頷いていると、柵の一部が開き、汗だくの二人が出てきた。
「ぅぁー…。暑い上に負けたぁ…」
「やりましたぁー…。……あづぅ…」
顔中びっしりと大粒の汗を流しながらそういう二人。どうやら燈静が勝ったようである。
そうして近づいてくる二人。そんな二人に、穂波は急に立ち上がり、指をつきつけ、
「お前ら二人とも、今すぐに冷たいもん買って来い!!それとついでに汗を拭いてこい!!」
(まぁ、汗だくだもんね、二人とも…)
汗だくのやつの近くにはいたくない。そんな気持ちを穂波が今抱いていることは、つみれにはよくわかった。
だが、そんなつみれの心を分かっていない零司は、
「え、買ってきてくれないのか?こちとら疲れてるんだけど」
とまぁ、何とも図々しいものである。
「別に買ってきてもいいが、色々とおまえらがぶっ壊した分払わないけどいいな?」
「よっし、燈静。今から飲み物買いに行こうぜ」
「そうですね、行きましょうか零司さん」
「遺恨消すの速すぎやしないか、おまえらぁ!?」
速い掌返しの中にさらっと混じって、いつの間にか二人とも名前で呼んでいたことに穂波は叫んだが、その叫びは遠ざかっていく二人に聞き入れられることはなかった。
* * *
「ふぃー」
それから三十分後、零司は一人ゲーセンの隅っこで缶コーヒー片手にくつろいでいた。
(いやはや、中々疲れたもんだ)
ちびちびとコーヒーを飲みつつ、体の疲労を確認する。
(んー、腕と足と腰が若干かねー。適度にほぐせばいい範囲だろうけど)
そんな風に確認していると、
「れーいーじー、っていたいた」
「ひとまず間延びした呼び方やめてください、姐さん」
つみれがひょっこりと出てきた。
「んで、どうしたんですか。穂波がいませんけど」
「零司がふらっといなくなったから探しに来たの。後、穂波なら燈静と一緒にあっちの方でレースゲームやってるよ」
「……あいつも、俺の事言えないんじゃねぇか」
人に仲良くなるのが早すぎると言っていたが、自分だってそうだろうと零司は思うのだった。
「というか、レースゲーム?」
「レースゲーム」
「……あぁ、何かオチ読めた」
「へ?」
意味が分からないといった風につみれが首を傾げた瞬間、穂波の声が二人の耳に届いた。
『ぬぉああああ!?画面が急にモノクロにぃ!?』
『普通じゃないですかねー』
『んなわけあるかっ!って、今度は画面が暗転した!?でも音だけは普通に聞こえる!』
『だから普通ですって。あと、レース終わってませんよ穂波さん』
『画面真っ暗でできるわけあるかぁあああああああああああ!!!』
『出来ますよね…?』
『お前の中の常識が一般常識じゃないからな!?って言ってる間に画面が普通に戻って音が消えた!』
『いつもの事ですよー』
「………………」
聞こえていた声に、思わずつみれは沈黙し、零司に縋るように目を向けた。
「いや、あれ何?的な視線を向けられても困るんですが」
「いやいや、あの声何よ。本当に何よ…?」
理解できないよとでも言いたげなつみれ。そんなつみれに、零司は極めて冷静に、
「全部燈静のせいじゃねーっすかね」
「全部!?」
「全部っす」
あっさりと言われた事実に、つみれも愕然とする。
「まぁ、知り合いとかに聞いていろいろと調べた結果なんで、俺も詳しくは知らないんですけどね」
「おいコラ」
「や、人づてなんで流石に断言はできませんて」
「むしろ人づてで、断言できるほどまでに情報集まることが驚きよ」
「むっちゃくちゃ有名らしいっすけどね、燈静」
零司の言う通り有名と言えば有名である。……まぁ決して、全てが良い意味とは言えないのだが。
それでも、市内では名前もしくは特徴を言えば大体燈静が想像されるというのも相当なものだが。
「……あたし、知らないんだけどなぁ」
「三虎ってそういう噂には疎いっすよねー」
「金持ちだからね」
金持ちだから世俗には疎いというのは、流石に乱暴な話ではあるが、まぁ間違っているわけではない。
「まぁともかくさ。トラブルメーカー的な感じなの?燈静」
「まぁ、みんなそんな感じの意見っすね。……あれがトラブルの範疇にあるか若干怪しいんですけどね」
「ハプニングっても違うでしょ。トラブルって方がまだ受け止めきれるし」
「人間の防衛本能的なことを言われても困るんですが」
「……っていうかさ」
「はい?」
いやさ、とそこでつみれは一拍置き、
「零司と燈静の組み合わせって、相当にまずくない?」
みしり、と手に持っていた缶コーヒーが鳴った。
そしてたっぷり十秒ほど経った後、目をどこかにそらしつつ、
「……ナントカナリマスッテバー」
「棒読みが過ぎるでしょ…」
「何が起こっても、解決する自信はありますっ!」
「やる気のある新入社員風に言っても無駄だから、黙ってろ」
「うぃっす」
そのまま、ひびの入ったコーヒーに口をつける。
しかし、更につみれの言葉は続く。
「別にあんたら二人ならどうでもいいんだけどさ、穂波巻き込むことだけはやめてよ?」
「何だかんだであいつも楽しみそうなんですが」
「まぁ、今もそうだからそうなんだろうけども!一応ってこと、言わないとわざと巻き込みそうだし」
「………………」
さっと、今度は顔ごとつみれから逸らした。
「………こっち向け」
その行動にイラッときたつみれは、右手を伸ばし、零司の頭をボールでも掴むように掴んだ。
そして、力を入れるとミシミシと人間からは鳴ってはいけない音が…。
「すいません向きますから、ひとまず手を放して痛い痛い痛い!!」
「えーごめん、聞く気ない♪」
「ちょぉい!?いででででででっ!!マジで、マジで死にますからっ!?」
「えー、聞っこえない♪」
「あんたがそんな風に言っても別に可愛くな―――」
「あ゛?」
更に、つみれの掴む手に力が入った。最早ミシミシという音ではなく、メキメキと木でも折るかのような音である。
「死ぬっ!マジで死ぬからぁあああああああああああああああああああああああああ!!!!」
『……あの二人何やってるんですかね』
『すまん、気にしないでくれ…』
『その方がよさそうですね…』
『本当になー…。……まぁ、ほうっておいて遊ぼうか』
『ですね。次は何します?』
『シューティングゲームやろう。まだ、バグっても何とかなる』
『了解です』
* * *
「見てたんなら、助けろよっ!」
数時間後、ゲーセンの軒先で穂波と燈静の二人と合流したと同時に零司が叫んだ。
若干、顔が変形しているように見えるのだが……穂波と燈静は特に気にしてはいない。というか、気にしてはいけない。
「こちとら、死ぬかと思ったぞ!お前ら思いのほか薄情なのな!」
「あんな状況の中に、知り合いですよーって入りたいわけないだろう…」
「そうですよ。変な目で見られるのは誰でも嫌ですよ?」
「お前は元から見られてるから安心しとけ、燈静」
「零司さんぶん殴ってもいいですよね?」
そう言って拳を握るが、零司が特に取り合わなかったのですぐに拳を解いた。
そこで、零司が空を向いたので、三人もつられるように空に視線を移した。
その空の色を見て、ポツリとつみれが、「遊びすぎたなぁ…」と呟くと、三人とも『ですよねー…』と同調した。
「まさかこんな時間まで遊んじまうとはな…」
「穂波さんと一緒に殆どのゲーム遊びつくしちゃいましたし…」
「楽しかったから後悔はしてないが…」
そこで、空―――真っ暗な空を見上げ、
『遊びすぎた…』
と三人声をそろえて呟いた。
「……今何時よ」
「八時過ぎてますね…」
「保護者いたから特に店員も言ってこなかったからなぁ…」
「……うっへぇ。着信履歴がものすごく怖い」
各々、携帯で時間を確認したり、携帯の着信履歴を見て青ざめたりとそれぞれだった。
「……というか、僕の携帯に一件も着信入ってないってどういうことなんですか…?」
「それ、今日買ったって言ってなかったか?」
「あ」
今現在入っている連絡先は、秀、弾、美沙、リャーチ、ラビ、そして切だけである。
十鳳家の番号を入れてないのだから、着信が入る事なんて絶対にないのである。
「じゃあ、一安心でs―――」
「逆に、連絡なしにこんな時間まで遊んでることってやばくね?」
「……………………………………」
零司に指摘され、汗を滝のように流し始め、がたがたと震えだす燈静。
そのあまりの震えように、穂波が「汗凄いぞー…?」と恐る恐る声をかけると、
「だだだだだだだ、だい、大丈夫、ですすすすすすってばばばっ」
壊れかけのラジオのように、声が震えていた。
それを見て大丈夫と思う者はいったい何人いるのだろうか…。
ひとまず、色々と壊れてしまった燈静を置いといて、零司たち三人は燈静から少し離れ、これからどうするかを話し合い始めた。
「……マジでやばいな」
「ほんとにね…。出来れば送ってあげたいけど…」
「こっちの被害がバカにならんぞ…」
三人としては、今の燈静を見てしまった後だと、燈静一人で帰すのは流石に心配である。
だが、もし仮に燈静を送ってその後に三虎家に帰ると、今帰るときに起こるであろう折檻よりも遥かに酷い折檻が待っていることだろう。
そう考えると、燈静には悪いがここで別れることになりそうである。
「つっても、今のあいつが普通に帰れるとは思えないんですけどね」
「何だかんだで帰れそうではあるけどさ……タクシーに突っ込めばいいかな?」
「金は……まぁ、連れまわしたのこっちだし、こっちでもつか」
「たかがタクシー代程度、お前にとっちゃはした金だろうが…」
ともかく、やる事が決まれば後は早かった。
穂波は少し離れたところで、タクシー会社にタクシーをよこすように連絡するのと、ついでに十鳳家にも連絡。
つみれはそれを近くで見守り、零司はひとまず燈静を正気に戻す役割である。
そんなわけで燈静に近づいたのだが…。
「あばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば」
「………………」
つい先ほどまで壊れたラジオのようだったのが、最早なんと言えばいいのか分からないほどに壊れていた。
色々とおかしいものを見慣れている零司でさえ、最初に見たときは「……うわぁ」と全力で引いたほどだ。
まぁ、それはともかく、ひとまず燈静を正気に戻さなければならない。
なので、手っ取り早く声をかけてみることに。
「おーい、燈静―」
「げげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげげ」
「………………」
何故かおかしな方向に進化してしまった。
しかし、諦めずに零司は声をかけ続ける。
「燈静ー、燈静ってばー」
「…………なななん、んんんですすすす?」
「それは返事できてるのか…?」
一応は反応したところを見ると、なんとか治ってきてるようではある。……壊れたラジオに戻っただけとも言えるが。
「まぁ、ひとまずお前をタクシーで十鳳家に送るってことで―――」
「あがががががががががががががががががががががががががががが」
「何でよ!?」
最後まで言い切る前に、再びぶっ壊れてしまった。
あまりにも理由不明な現象に、落ち着いて対処していた零司の額に青筋が走る。
「……よし、いいだろうお前がそんなんならこっちにも考えがあるぞ…!」
壊れた燈静には聞こえてはいないだろうが、零司はそう言い、右手で燈静の頭を掴んだ。
突然触られたことに気付いたのか、燈静も普通に戻り「あの、零司さん?」と声を上げたが、
「気絶してろ♪」
そんな声と共に、バジン!という鋭い音と共に辺りを一瞬だけ閃光が走った。
「………………」
閃光が収まると同時、燈静の体から力が抜けていった。
瞼は錘でもつけているかのように重く、気を抜けば今にも意識を失いそうなほどであった。しかも、体に関しては全く力が入らず今すぐその場に倒れこんでしまいそうになる。
倒れそうになるのを零司は支えつつ、つみれ達に「終わったぞー」と報告を上げる。
その報告を受け、穂波達が近づいてくるのを暗い視界に収め、燈静は意識を手放した。
『おーい零司―――って、お前何やってんだ』
『戻すのめんどいから、気絶させた』
『何やってんのよもー』
『いやもう色々とイラッと来まして』
『だからってあの気絶のさせ方はないだろう!?』
『アレ以外に手っ取り早い方法もないだろう?』
『それはお前だから使える方法だろうが!!』
『あーもう、二人ともやめやめ。で、タクシーは?』
『もうすぐ来るってさ。少し離れた場所に呼んだ』
『そんじゃま、さっさとこいつ乗せて帰りますか』
『……地獄にな』
『やめて帰りたくなくなる』
『……まぁ、明日から学校だし軽い折檻だと願うよ』
『お前とつみれにはきつい折檻待ってそうだけどな』
『……姐さん、こいつ人質にとってどっかに立てこもりません?』
『中々に魅力的な相談だけど……結果見えてるでしょ…』
『デスヨネー』
『ほら、いいから帰るぞ。明日からまた大変なんだからな!』
『わかってるっつの。……俺と燈静は、明日から編入だからな』
こうして、線と線は交わった。
それが、この先どのような未来を紡いでいくのか。
それはまだ誰にも分からない。
やっとこそここまでこぎ着けた…。




