購入
side:龍崎
「気に入った」
簡潔に答えた。そうとしか答えられないほど、俺はこの『魔銃』を気に入っていた。
「二丁とも買いたい。いくらだ?」
「君のこの子達に対する評価でいいよ。俺は買い手が望む値段で売る主義でね」
俺は財布から札を十三枚取り出し、男に渡した。
「十三万円か。確かに受け取ったよ。これに入れて持ち歩くといい」
男は二つの拳銃嚢を取り出した。
「対価に見合わないと思うし、剥き出しで渡すのもなんだから、これも持って行きなよ。知人に頼んで『不可視』の印を刻んでもらってある。これに入れておけば、この子たちを堂々と持ち歩ける」
男は話しながら拳銃に弾丸を込め、拳銃嚢に収め俺に手渡す。
俺は右手で回転式連発拳銃を、左手で自動式拳銃を抜けるように背中側に交差させて取り付ける。
「そういえば、魔銃と魔弾の話は知ってるか?」
男は唐突に言った。
「知っている。確か欧州の話だろう」
悪魔と契約した青年の話だ。
「それなら、何が言いたいかわかってるな」
「過ぎた力は身を滅ぼす」
「わかっているならいい。ところで、急ぎの用事があったんじゃないか?」
「あ!?」
そうだ! ココロを捜すの忘れてた。
俺は急いでココロ捜しを再開するために立ち去ろうとした。
「引き止めて悪かったね。わびにこれも持って行くといい」
男はそう言って何かを投げ渡してきた。
「水晶細工か?」
投げ渡されたモノを眺める。
それは細い鎖で繋がれた長さ5cmぐらいで六角柱の水晶でできた首飾りで、水晶の中に新緑色の液体らしきものが閉じ込められている。
「俺が買ったのは銃を二丁だけだぞ? それにこれは見た感じかなり値が張るんじゃないか」
「聞こえなかったのか。引き止めたわびだと言ったはずだ。俺が持っていても持て余すだけでな、それに君の役に立ちそうだ」
「分かった」
まぁ、貰えるものは貰っておこう。
俺は受け取り、首にかけた。
「そうだ、名前はなんていうんだ?」
男は不思議そうに聞き返してきた。
「なぜそんなことを聞くんだい? ただの露天商の俺に」
「強いて言うなら好奇心だな。これだけいわくつきの物を集められる人物の名前を知りたい。俺は龍崎神月だ」
「……すぐに忘れると思うけど」
男はそう言って帽子を脱いだ。肩を超えるほどの白に近い灰色の長髪が流れ落ちる 。
どうやってあの帽子の中にしまってたんだ?
男は帽子で隠れていた瞳をこちらに向けた。
「遊離渡来。遊び離れて渡り来ると書く」
「覚えておこう」
「その記憶が永久にとどまることを祈るよ」
男のその言葉を聞いて、俺は魔力を頼りにココロが行ったであろうY字路の向こう側へ走った。
不思議な露天商のことを頭の片隅に置いて。
side:龍崎 Fin
もう半月一回更新でいいんじゃないかな、と思い始めた時光夜凪火流那です。




