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3/10

百貨店にて

偶数日以外で更新出来た事に感謝。


2/4、内容を大幅加筆し(改)を付け投稿

午前十時五十分


side:龍崎


この百貨店に来てからもう一時間近く経っただろうか。

九時半ぐらいに衣服売り場に来てからというもの、ココロは俺の存在を忘れたかの様に、まだ買う服を選んでいる。

というよりも、むしろ店員達の着せ替え人形と化している。


ことの発端を語ろうとすれば、一時間程度(さかのぼ)らなければならないだろう。





ココロが「まずは服が買いたいです」と言ったので、現在星ヶ丘にある唯一の百貨店である月夜百貨店に来た。見た目は三階建ての少しばかり古めかしい建物だ。


んで、俺とココロは二階の一角で服を選ぼうとして、いざ行ってみればココロの対象年齢層の合う洋服店が二店舗あった。

片方は今時の若者向けらしい服を扱った店で、もう一つがゴシック調って言うのか? それを取り入れたものを中心に置いてある店だった。

方向性が違うからかココロはどちらも見たいと言ったから、とりあえずゴシック調の店に入ったのだが……。


「いらっしゃいませ……」


入店早々、迎えてくれた店員が固まった。そして、


みんな来て、早く!」


なぜか店員が全員呼ばれた。


端から見れば恋人同士か。いや、兄妹だろうか、男連れって珍しいのか?

だからと言って全員を呼ぶ理由にはならないよな、と考え納得した。

隣に居るココロに反応しているのだ。


ココロは言ってしまえば美少女だ。

不思議な髪の色だとか、整った顔立ちだとか外見的にかなり目立つ。先日に出会った千夏も美少女と言っても良いが性質はまるで違う。

千夏が「可愛い、守りたい」部類だとすれば、ココロは「近くに居たい」部類だ。

そのせいか同僚の死神達に「「「あの子はオレ(僕)達の潤いだ、手ぇ出したら明日が来ないと思え」」」と忠告と言う名の脅しをかけられてた(女性死神は他にもいるだろうに……)


閑話休題。

そんな少女が、言っては何だが片田舎の洋服店へ来たとなれば、少しぐらい騒ぎにもなる。


「主任。すごくお勧めしがいがあると思いません?(ヒソヒソ)」


「……良いわね、良く知らせてくれたわ(ヒソヒソ)」


何やら此処の主任らしき女性が出てきたぞ。

俺達の前には五人程度の店員が並んで小声で話をしている。

正直こんだけの店員が前にいると、恐怖とは違う意味の威圧感がすごくある。


「どのようなものをお探しでしょう? 当店は様々なアイテムを揃えておりますよ。」


主任(暫定)がココロに声を掛けた、やっと話が進むのか……。


「何か暖かそうな感じでお勧めがあるですか?」


「勿論でございます。皆!すぐ準備して!」


「「「ハイ、主任すぐ準備いたします!」」」


主任の一言で他の店員達が一斉に動き出す、足音が怒号の様に聞こえたのは気のせいだろう。


「此方へどうぞ、すぐに準備いたします。あ、お連れの方もどうぞ」


どうやら、俺の存在はオマケらしい、そっちの方がいいけど。あんまり目立ちたくねぇし。


「まずはこちらのボトムにブル-のニットとスヌードを合わせてみてはいかがですか。トップにボリュームのあるスタイルが今年らしくて人気なんですよ――」


何やら俺には理解出来ない言葉が飛びかってる。つーか、こっちの日本語以外の言葉(英国語なら俺は半分ぐらい理解することができる)が混じってるから、ココロもわかんない筈だ。


そもそも服なんて着れればいいんだよ、が信条のの俺には全く分からない。

どうせ、俺のおしゃれなんて気分で上着を変えるだけだからなぁ、と現実逃避しながらココロの着せ変え展覧会を傍観する。





ときどき、俺にも申し訳程度に感想を求められるから、なけなしの服装感覚を総動員して、一つ一つ被らない様に意見を言いつつ、さらに三十分程度経過した。


いつの間にか隣の店の従業員も混じってココロに服を渡している。

もはやココロは完全に着せ替え人形だ。


つーか、隣とはいえ店を空けててもいいのかよ、と思ったらそこに居た客も参加してるし……、混沌としすぎだ。とてもじゃないがついていけない。

というか、存在がいつの間にか忘れられていた。





「お客様いかがでしたか?」


主任×2が満足した顔で言った。店の全員の顔が見事に輝いている。


長かった。ココロの説教も堪えたが、これはそれとは違う意味でひどく疲れた。


「すごく満足したです、買うのは一番最初に着たのと――」


以下試着した順番と気に入った装飾品の名前が延々と続いた。

……ドンだけ買うつもりだよ、そしてよく覚えてるな。驚異的な記憶力だ。


「ん? 神月くん何やっと終わったって顔してるです。

 次は君の番ですよ?」


「はぁ!?」


お前の服を決めるのに二時間近く掛かってるんだぞ?

俺は別に服なんて要らない!


「俺は別に服なんて要らない!」

あ……やっべ……つい声に出しちまった……。

取り返しのつかないことを言ってしまった……。


「聞き捨てならないです。いいですか神月くん、上着一着(いっちゃく)でも着るのと着ないのでは纏う雰囲気がすごく変わるです。スーツ(サーチェイ)をきちんと着るのと緩く着るのとでは第一印象がかなり違うですし人間性も少しだけ計れるです。寒い日に女の子がマフラー(マーフ)を首に巻いているかそれとも手袋をしているかで女子力も変わるです。あ、此処でマフラーは手編みか既製品かでも違うですし手袋も皮製か毛糸の手編みかでも違うです。分かるですか神月くん、其れ即ち服とは――」

「わかった。もういい。お前の言いたいこと大体分かったから力説しなくて良い!」

「――ふふふ、わかれば良いんです」


ふ~、なんとか話を切ることが出来たな……。


「じゃあまずは……うん、これを着るです」


もう試着するの決まったし……。


「お客様、こちらもどうでしょうか?」


主任がココロにコート(キャテーラ)らしきものを見せる。

此処には俺の味方は居ないのか!?


「あ、いいですね、これも後で着てみるですよ?」


くそ、適当に流して切り上げようと思ったのに……。

こりゃあ三十分ぐらいは時間を取られるな。


「ふふふ、神月くんは素材がいいんですから、もっと服に気をつかっておしゃれするべきです。」


その笑顔といったら、これまで見たことがないくらい、すげぇ輝いてやがる。

……こいつに自重って言葉の意味を教えたい。





結局俺はココロと主任さん達の着せ替え人形と化し、開放されたのは一時間近く経ったあとだった。


「本当に……これでやっと終わった……!!」


俺がしたことといえばひたすら着替えては脱いでの繰り返しだったが、それだけで俺の精神はガリガリと音を立てて削られていった。

着たものはコート(キャテーラ)からシャツ(シュレ)ズボン(ザバ)セーター(タセウ)まで様々だった。

ここまで服をとっかえひっかえしたのは俺の人生初だ。

恐らくこれからは、いや今日以降は金輪際、絶対に何があってもココロと買い物には行かん!

あ……でも引っ張られていきそうだ、買い物におけるの俺の立場は限りなく低いからなぁ。


「なぁに現実逃避してるです神月くん。

 さ、お会計をお願いするですよ」


哀愁に浸る暇もないのか……。


「……了解」


力なく答えた。

とぼとぼという擬音が似合いすぎる足取りでココロの後を追う。


「お願いするです」


「承りました」


俺とココロを着せ替え人形にしていた主任が二人がニコニコと盆を差し出した。

もちろん背後の長机には主にココロの服が溢れんばかりに積みあがっている。


俺の服? そんなもんココロが俺の試着した姿を見て勝手に決めたよ。

量といったら俺の部屋の収納戸棚に入りきるかどうか怪しいぐらいにな。


「〇〇万〇〇〇〇円になります」


十万単位か……。

二人分とはいえ予想外の値段だな。


「カードで」


ココロが財布から何気なく出したのは。


「ブ、ブラックカード……だと!?」


局長のやつどんだけ親バカなんだ!


「御預かり致します」


俺は主任の顔が驚きに染まるのを見逃さなかった。

そりゃ驚くわな、俺も驚いてるんだから。

顔には出してないけどな、声には出たが……。


「何かおかしいでですか?」


おい!こいつ(ココロ)はあれの価値を知らんのか。


「いや、ただ若干十六歳の子どもに、順位第一位のカードを渡す親って正直どうかなぁ、って」


そんな話をしていると、奥で包装していた店員さんが満面の笑顔で声をかけてきた。


「お客様、こちらでございます」


「あ、ありがとうです。

 神月くん持つです」


やっぱり俺が持つことになるんだ。


「ヘイヘイ、分かりましたよ」


服で満杯になっている紙袋を両手に受け取る。


あ、そう言えば俺の服も一緒にカードで支払われたのか……。

年下の女の子のカードで服を買ってもらう自分の姿を想像してしまい、

俺の男としての誇りが音を立てて崩れ去るのを自覚した。


side:龍崎 Fin

嗚呼リア充の匂いがする。


俺だっていずれリア充になれるはずだ!



四年ぐらい先に……


2/4

大幅加筆で一気に内容が三倍近くに……。

校正してくれている友人よ!深く感謝の念を送る!!


でも、これが投稿する時の量としては普通ですよね……。


2/15

教官に指摘していただいた部分を加筆修正。

この話だけで何回書き直さなくちゃいけないんだろうか……。

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