第三話 やちゃった…。─だが後悔はしていない。
翌朝。
トントン、と零はドアのノックの音に目を覚ます。
「あ?」
「よう、零。一緒に朝飯食いに、食堂行こうぜ。」
「………お前誰?」
「天井 翔だよ。昨日の夜に会っただろ?」
「あぁ…すまんすまん。寝起きで頭動いてねぇわ。」
零の目の前には昨夜知り合った天井 翔がいた。
「で、なんか用か?」
「だから飯いこうぜ!朝飯!」
「あー…まぁ、分かった。着替えるから待っててくれ。」
「りょーかい。」
…。
朝の食堂には朝食を食べに来ている生徒は多い。生徒たちはそれぞれの友人と喋ったりと騒々しい。しかし、一瞬シンと静かになった途端急に生徒たちがざわめきだした。
(何なんだ…?)
零は何故ここまで注目を浴びるのか訳が分からなかった。昨日の昼は注目こそされ、ここまであからさまに騒がれてはいなかったのだから。
すると周りからの声が少し聞こえた。どうやら翔が何か言われているみたいだ。
「おい翔、何か言われてるぞ。…もしかしてお前も『0』なのか?」
「んな訳ねえよ。ってそういえば言うの忘れてたな…。」
「何が?」
「いや、俺って─S─なんだ。」
「S?サド?」
「違うわ!いや、だからってMって訳でもないけど…。じゃなくて!クラスだよクラス。」
「翔は─S─クラスだったのか。」
「おう。潜在魔力7000000で文句なしの─S─クラス。ちなみに今の魔力は1500000くらい。だから周りの奴らは俺と零っていう組み合わせに驚いてるんだろうよ。」
「ふーん。まぁ周りのことはほっといて、とりあえず飯食おうぜ。」
「…だな。」
零と翔は食堂で食事を頼む。零はいつもの定食を。どうやら翔は豚カツ定食のようだ。
そうして空いてる席に座ると食事が運ばれるまで雑談を始める。
「そういえば…。」
零はふと思った疑問について翔にたずねる。
「どうした?」
「翔の魔力7000000だっけ?あれって凄いのか?」
ちなみに翔はこのアイリス国立魔術学校の生徒の中では4番目に入る。
「ああ。…自分で言うのも何だけどな。」
「へー翔ってすげえんだな。」
「全く凄いと思ってないだろ…。」
「もちろん。」
「流石だよ、零。俺の見込んだ男だけはあるぜ。」
「なんだそりゃ。」
しばらく雑談した後頼んでいた朝食が運ばれてきたので2人は食事を始める。
─終始周りからの好奇の視線を浴びながら…。
…。
「じゃあ俺はこっちだから。」
「ああ。んじゃまたな。」
食事を終えて教室に向かう途中、翔とはクラスが違うので分かれる。
…。
教室に向かう途中、零は重大な事実に気付く。
(……………教室ってどこだ。)
そう。普通なら昨日の自由時間の間に自分のクラスの場所が分かってるはずなのだが、零はその時間を昼寝に使ったのだった。元から場所を知っているわけでもない零には途方にくれるしかほかない。
迷うこと1時間…。
(…此処が─D─クラスの教室か。)
やっと零は自分の教室に到着することができたのだった。
そして零は早速教室に入る。
「初日から遅刻するとは良い根性してるな、お前。」
と額に青筋を浮かべながら強面のいかにもな人、もとい担任の坂原は零に詰め寄る。
「まあまあ。そうカリカリすんなって、おっさん。」
「…おっさんじゃない、坂原先生と呼べ。」
「ところで俺の席ってどこ?」
「お前…。」
「ん?」
「遅刻してきてる分際でどの口がそんなふざけた事抜かしてんだ?」
「え?この口だけど?」
─ブチッ
それはこの─D─クラスの零を除く誰もが聞こえたであろう、坂原教諭の堪忍袋の緒が切れた音だった。
「…生徒だからって調子に乗ってたらどうなるか教えてやるよ。」
と坂原が零の胸倉を掴む。
「やめとけっておっさん、怪我するぞ。」
「はっ、お前みたいなガキには鉄拳制裁ってのが一番なんだよ…。」
坂原はそう言って零に殴りかかる。
「はぁ。これは退学も考えねえとな…」
と零が呟いた瞬間。
ドゴォッ!!
向かいの壁まで吹き飛んだ壁に強く叩き付けられた坂原が地面に倒れ伏した。
そして、─D─クラスの壁には人型でくりぬいたような跡ができあがったのだった─
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