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婚約解消を願ったら喜ばれると思ったのに

作者: 朔夢
掲載日:2026/05/08

「別れ話で気を引いても無駄だ」的なセリフがあるじゃないですか。何故別れ話が気を引くことになるのか不思議に思って書き始めたけど、書き手が理解してないから結末がひん曲がって謎の着地したお話です。

勢いで書いた2時間クォリティ。

「婚約解消? 今度はそんな手で気を引く作戦か」


 はっとバカにするように笑うのは婚約者のバーミリオン様。

 私のことが気に食わないらしく冷たく当たり、バカにし、他の令嬢と仲良くなる始末。

 確かに政略でお互い恋愛感情なんてものはないけど信頼や信用は必要でしょ?

 だけどそれすらも望めないから両親に確認して了承をいただいた上で婚約者にそう申し出たらこの反応。

 もうどんな思考してるのかしら。


「そんなことをしても無駄だ。俺がお前を好きになることはない」


 いえちょっと待って本当に。


「バーミリオン様、確認したいのですが」

「だから、俺はお前のことなど」

「いえそれはどうでもいいです。それではなく、何故婚約解消がバーミリオン様の気を引くことになるのでしょう?」

「は?」

「バーミリオン様も私のことが好きではないですよね、ですので解消は願ったり叶ったりではないですか。なのに何故渋るのです? 書類にサインするだけで私との関わりはなくなるのですよ。あとから万が一にも私が復縁を望んでも無理ですので解消してしまえば勝ちではないですか」


 そう、この国は一度解消や破棄をした婚約は元には戻らない。

 昔、婚約者を守るために婚約を解消して、問題が解決したから再度婚約し直した王族がいたらしい。それは美談になったが、そのあと何世代かに渡りケンカしては解消、仲直りしては婚約を繰り返すことが増えてしまったらしい。手続きも把握も政略も何もかも面倒事に発展したため、一度結んだ縁は一度は解消できる温情はあっても結び直すことはできないと定められてしまった。

 なので解消や破棄は慎重になりがちなのだけど、私としてはこんな関係性なら二度と関わらなくてもいいと思ったので解消に踏み切らせていただくわ。


「気を引くために婚約解消と言っていることを好機として進めてしまえば何の問題もないですよね。というか、解消の申し出のそれが何故気を引くということになるのかも分からないのですが」


 例えば「バーミリオン様なんか嫌い」と言ったところで気を引くことになります? 「あぁ俺もお前なんか嫌いだよ」で終わりません?

 本当に理解できないのですが。


「…バーミリオン様?」

「お、お前は、俺が好きなんじゃ、ないの…か?」

「はい、好意を抱いたことはないですね」


 様子がおかしくて声を掛けたらとても歯切れの悪い問い掛け。いつもキレキレの口調で文句なりグチなりハッキリとしているのに。


「お前はいつも俺にくっついてたじゃないか! 時には女と遊ぶなとか嫉妬して!」

「正気ですか? 婚約者として行動していたに決まってます。婚約者以外の異性といるのも言語道断でしょう、適切な距離感は必要です。ただそれだけで嫉妬ではないです。ですが私と婚約解消したら遊び放題ですよやったね。次の婚約者が決まるまでだと思いますけど。あ、でも次の婚約者次第かもしれません」

「ほ、ほら、それはお前が俺を好きだから」

「次の婚約者も他に好きな方がいたり男性といるのが好きな方なら容認してくれるかもしれませんね」

「お前は俺の他に好きな奴がいるのか!?」

「人の話聞いてました? 次のまだ知らぬ婚約者がって話ですよ、私には関係ない話です。というか、バーミリオン様の中で私はバーミリオン様が好きということになってるんですね…」

「事実だろ!」

「違うって言ったじゃないですか」


 私はてっきり政略ゆえに媚びを売るように見えていてそれが気に食わないのだと思ってた。

 私は特別美人というわけではないし家も貧乏ではないけど裕福とも言い難い。だから格下との婚約に不満なのだと思ってた。

 バーミリオン様は一方的にまくし立ててこちらの話を聞こうとしないから。

 あら、もしかしたら今がちゃんと会話できているのかもしれないわ。


「お前が俺を望んだから婚約したんだろ!?」


 会話、できてないかも。


「格下の私から婚約を申し込むなんてことはいたしません。これは我が家のワインの権利を欲したあなたのお父様と、その支援を望む私の父が交わした政略結婚です。ちなみに婚約の申し込みが来たとき父は倒れました」


 ぶどうを愛する父はワイン関連で働くのが大好きで権力にはほど遠い。それが乗っ取られると思い込んで泣いていた。

 そして乗っ取りなんて望んでなくて奥様も自分自身も我が産地のワインのファンだからという理由らしい。

 普通にスポンサーでいいのではないかとも思ったけど、経営が下手な父ではいずれは乗っ取られてしまうという懸念を抱かれていた。正直私も思っていたのでそれに関しては有難いと思う。

 後継者である弟はまだ勉強中なのでその間がとても不安だった。その弟も父のように経営が下手なら目も当てられない。ちゃんとしっかり成長してくれますように。


 そういった理由なのでそこまでの重要な政略ではないから解消も可能。

 向こうは残念がっていたけど、「相性が悪いんじゃ仕方ないね」と理解してくださった。そして「でもファンとして応援はするからね!」と心強いお言葉をいただいている。

 だからバーミリオン様が承諾したら終わる話である。


 嫌っている相手との縁切りは喜ばれると思ったからすんなり話が進んで終わるはずなのに。


「…あ、もしかして、バーミリオン様お好きなんですか?」

「だ、だから俺は」

「我が産地のワインが」

「ちがっ…いや、いつも我が家で飲むワインがお前のところのなら好きだが」

「なるほど。でしたらご安心を。婚約解消してもある程度のご支援はいただけるそうなので卸す量も値段も変わりません」

「そういうことじゃない」

「まぁ。……でしたら、バーミリオン様は実は私が好きだとか?」

「そっんなわけないだろ! 散々言ってるじゃないか!」

「ですよね」

「簡単に納得するな!」

「えぇえ?」


 もうわけがわからない。


「もう真実はどうでもいいです。バーミリオン様との相性が悪く、信用も信頼を何の絆もできない相手と結婚なんて無理なんで解消してください」

「……努力する」

「何がです?」

「信用も信頼も絆も愛も何でも、解消なんてしたくないと思われるように努力する」

「今更です。今までの態度でなくなったんですよ、歩み寄ろうとした気持ちが。格下からの解消なんて矜持が許さないとしてもそんなの知ったことじゃないです」

「っそれは」

「仮に今までのが試し行動や愛情の裏返しと言われてもこっちからしたらふざけんなってなりますからね。これから作ろうとした、ゼロからの信頼を作る端から壊していたんです。裏を返す意味もわかりません…まぁ、これは関係ないお話ですね」

「っ愛してるんだ! 好きじゃない! 好きじゃ足りない! 愛してる!」

「はぁ?」

「本当だ! お前と出会った日から毎日日記にお前のことしか書いてない!」

「いえそれは…というかバーミリオン様、日記お書きになるんですね」


 そんなイメージなかったわ。


「一目惚れだったんだ! お前が友人に自分の家のことを話すときのキラキラした顔が目に焼きついて! それからずっと目で追っていた!」


 確かに私は家族も領地も好きで友達も話を聞いてくれるから調子に乗って話してるけど。一目惚れするような要素かしら? 仮にキラキラしていたとしても前述のとおり私は特別容姿がいいわけじゃないのよ。


「どうしたら視界に入れるだろうと、関われるだろうと思っていたらお気に入りの小説の話を耳にして、その中でも好きなキャラがいると知って、そのキャラの真似をしたら俺のことを意識するかなと思ったんだ!」


 …あー、それは思い当たるわ。確かにクール対応な割りに女遊びが派手なキャラがいた。けど。


「それは挿し絵のビジュアルが好きなだけで、本当に好きなのは別のキャラです」

「え?」

「ビジュアルが逆ならいいのにと友達に言いましたね」

「え!? そこは聞いてない!」

「いえ何故聞いている前提なのですか」

「ビジュアル…なら似てない俺は絶望的じゃないか」


 それ以前の問題なんですが。


「えーと、婚約解消は」

「しない! 絶対に! しない!!」


 かつてこんなに大きな声を出すバーミリオン様を見たことがあっただろうか。


「バーミリオン様は私のことが好きなんですか」

「好きじゃない! 愛してる!」

「あ、はい」


 謎のこだわりに圧倒される。


「もうあんな態度は取らないと約束する! 何かに頼らずありのままの俺で愛されたいから、……解消するなんて言わないでくれ」


 聞いたことのない弱々しい声音に、今にも泣き出しそうな顔。


「バーミリオン様」

「何だ。今までのことは謝る。許してくれとは言わない。だけど、捨てないで…」

「はい、傷ついたのは事実なので簡単には消化して許すことはできません」

「…うん」

「でもそうですね、今までが演技なのであれば本来のバーミリオン様を知らないことになりますね。一度リセットしましょうか」

「リセット…解消はしない!」

「話をちゃんと聞きましょう。まずは本来のバーミリオン様であってもお前呼びは嫌です。それだけはやめてください」

「やめる! もうそんなふうに呼ばない!」

「あとはちゃんと本来のバーミリオン様で接してください。それでも合わないと思ったときに解消を改めて申し出ます」

「そんなことはさせない! 合わないなんて言わせない!」

「そうですか。…では、これから頑張って私を口説いてくださいね」


 自分で言って恥ずかしくなって変な笑みが漏れたのが余計に恥ずかしい。

 だけどバーミリオン様はたぶん私より顔を真っ赤にした。


「かっっっ!! うん、口説く! 頑張ってバーミリオン様を愛してますって言ってもらうから!」


 必死な様子がかわいいと思ったことも、実は好きなキャラのビジュアルが似ていることも、泣き出しそうな顔にキュンとしたことも、しばらくは黙っていようと思う。



当初はバーミリオンさん、もっと嫌な奴で解消ざまぁで終わるはずでした。

好かれる努力もしてないのに好かれてると思い込むのも理解できないんですが、前書きに書いたとおり、「別れ話で気を引こうたって無駄だ」って言うのも理解できず。無駄なんだからすんなり別れたらいい話じゃないですか。遊びや気持ちがないなら。

だから最初にバーミリオンさんに無駄だって言わせてみたけど私が「何で???」ってなったのでこうなっちゃいました。


バーミリオンさんが結果的に愛してますって言ってもらえたかは決めてません。無事に結婚できたのか許されず解消されたのか。かわいいとか思ってもらえたから努力次第では言ってもらえるかも。

泣き顔にキュンとしたらしいのであるいは…ですね。それはそれで自業自得なので。でも上手くいくと幸せでしょうね。

書ききれてないけど、バーミリオンさんちょこちょこあれ?ってなる部分が実はある。


あら、そういえばヒロインの名前を結局出さずに終わっちゃったわ。


最後までありがとうございました。

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親が結んだ婚約なんだから本人の確認なんか取らずに解消してしまえばいいのに 結局絆されて元鞘はキツイわ
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