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魔法科学の最終定理 ―科学で戦う理系少女の異世界備忘録―  作者: 武者小路団丸


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残滓の騎士、海より現る

海岸が見えてきた。


白い砂浜と、どこまでも続く青い海。

無人島から、ようやく脱出できる――そのはずだった。


日差しが傾き太陽も落ちてきた頃だった。



「……見えた。陸だ」


煉の声に、明里は息をのむ。


「ほんとだ……やっと……」


――そのときだった。

腕時計についた方位磁針が、凄い勢いで回り出した。


「……え?」


針が、ぐるり。


また、ぐるり。


 北も南も無視して、意味不明な方向に回転している。


「ちょ、待って……これ、磁場がおかしい……なにかおかしい」


明里は周囲を見渡した。


海の真ん中に、一部だけ黒い物質が浮かび上がっている。


「……今の、なに?」


煉が剣に手をかける。

その直後だった。

黒い“残滓”が、ゆっくりと盛り上がった。

まるで、溶けた影の塊。

どろり、と。


ぬめりを帯びた黒い物質の中から――

兜の頭部が、ずるりと突き出てきた。


「……っ!」


黒甲冑だった。


だが、立っていない。

胴体も腕も見えない。

ただ、黒い残滓の中に半分埋もれたまま、

頭だけがこちらを向いている。

兜の奥は闇で、目は見えない。

なのに――

“見られている”感覚だけが、はっきりあった。


明里の背中に、冷たい汗が伝った。


黒甲冑は、音もなく、じわり……じわり……と、

黒い残滓から、だんだんと胴体部分を浮かび上がらせていく。


「……あれ、普通の鎧じゃない……」


明里の方位磁針が、ぴたりとそいつを指して止まった。


「……やっぱりね」


煉が私を見て目をぱちくりさせる。

ポルックスも、その言葉が意外だったのか、こちらを向いた。


「明里、どういう意味だよ。“やっぱり”って?」


私は視線を黒甲冑から逸らさずに答える。


「今まで、波が邪魔して……わたしたちを“キャッチ”できなかったの。

だから無人島までは来れなかった。

でも――今は浜辺が近くて、波も穏やか」


黒甲冑が、黒い残滓の海から浮かび上がる。


「……だから、やっと“届いた”ってわけ」


煉がオロオロしながら叫ぶ。


「ど、どうすんだよ! あの怪物、まともに戦える相手じゃないぞ!」


ポルックスも唾をのみ込みながら、大きくうなずいた。


わたしは、一歩、前に出る。

覚悟を決めて、言い放った。



明里は一度、深く息を吸った。


「――あいつに、近づいて」

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