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科学で戦う異世界理系JKと、壊れかけの守護者 ~めんどり頼んだら水素爆発しました  作者: 武者小路団丸
第4章 新たなるヒント

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77話 揺れる水面の向こうへ

 水面が太陽の光を弾いて、きらきらと揺れていた。

煉が口を開いた。


「イカダでも作るか?」


明里は、間を置かなかった。


「無理」


短く、即答だった。

煉は思わず振り返る。


「は? 浮くならいいだろ。材料ならそこらに――」


「浮くのは問題ない」


明里は煉の言葉を遮るように言った。

視線は海から外さない。


「でも、横流れに弱すぎる」


煉は眉をひそめる。


明里は足元の砂を蹴って、入り江のほうを指した。


「ここ、流れが速い。しかも一定じゃない」


「イカダだと、舵が効かない」


「一度横を向いたら、そのまま回される」


明里は言い切ってから、ほんの一拍だけ唇を噛んだ。

——でも、言い直さなかった。




煉は黙って海を見た。

さっきまで穏やかに見えていた水面が、よく見ると不規則に引きずられている。


「……でもよ」


それでも煉は食い下がった。


「やってみねぇと分かんねぇだろ」


明里は小さく息を吐いた。


「いいよ。試そう」


ポルックスが太さを揃えて木を並べ、煉が隙間をなくすように縛った。


即席のイカダは、思ったより簡単に形になった。


浮かべると、ちゃんと浮いた。


煉は満足そうに乗り込む。


「ほらな――」


その瞬間、船体がわずかに横を向いた。


流れが掴む。


――進まない。


押しても、漕いでも、じわじわと回されるだけだった。


煉は歯を食いしばる。


明里が岸から言った。


「ほら」


淡々と。


「一度横を向いたら、戻せない」


煉はイカダから降り、濡れた腕を拭った。

しばらく何も言わず、海を睨んでから、ぼそりと呟く。


「……つまり?」


明里は答える。


「イカダは“浮く”だけの乗り物」


「“進む”設計じゃない」


一拍置いて、続けた。


「この海を抜けるなら――」


「流れを切れる形が要る」



海を見つめたまま、明里が言った。

「流れを切って進まないと、意味がない」


煉は腕を組む。


「でもさ、船っぽい形にするのは無理だろ」

「木を曲げたり、細かく繋げたり……素人だぞ?」


明里は少し考え込んでから、首を横に振った。


「だから、複雑なことはしない」


砂浜に転がっている太い丸太を、顎で示す。


「丸太舟」


煉が目を瞬かせる。


「丸太?」


「一本をくり抜くだけ」

「形を整える必要もない」


煉はすぐに気づいたように笑う。 


「燃やすか」


明里は小さく頷いた。


「中を焼いて、炭にする」

「それを――水で削る」


ポルックスが眉を上げる。


「削る?」


明里は皆を見渡した。

「水で冷やして、炭だけ落とせるはず」


一拍置いて、付け加える。


「理屈の上では、ね」


煉は丸太を見下ろし、少しだけ口角を上げた。

「……試す価値はあるな」



明里は丸太を、そのまま燃やそうとはしなかった。

まず、大きな石を二つ転がし、その上に丸太を載せる。 少し押して、また載せ直す。


一番、安定する位置。


「……ここが中心」


そう呟いて、指で印をつけた。


「偏って焼くと、浮いた時に傾く」

「だから、ここを起点にする」


煉は感心したように息を吐く。


「そこまで考えるか」

「考えないと、失敗する」


明里はそう言って、火を見た。


「楕円状に焼き船底になる側は、薄く残す」

煉は頷き、炎を制御し始めた。



燃やしたくない部分に、濡らした土を塗っていく。

手に取るとひんやりと冷たく、指の間から水が滲んだ。


煉はそれを確かめてから、火の魔法を起動する。

一気に燃やさない。

炎は細く、円を描くように、同心円状に走らせていく。


初めての作業だからこそ、煉は何度も炎を止め、呼吸を整えた。 焼ける音が、低く、一定に続く。

表面が黒く炭化したのを確認して、わたしは前に出た。

水魔法の圧力を上げる。

次の瞬間、黒くなった部分だけが、ざらりと剥がれ落ちた。


同じ作業を確認しながら何度も何度も繰り返した。

海風が身体の芯まで冷やす。

明里は、波をきり裂き進むため、船首を極限まで尖らせていた。

夜が明けていることに、誰も気づいていなかった。

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