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科学で戦う異世界理系JKと、壊れかけの守護者 ~めんどり頼んだら水素爆発しました  作者: 武者小路団丸
第3章 道

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63話 悪魔の火

 煉が叫んだ。


「シルフィア、どけろ! ――フレイムバレット!」


 次の瞬間、火球が裂けるように放たれ、カードの真上で“バンッ”と赤光が弾けた。


 豪雨で濡れていたはずのカードが、まるで油をかぶったように一気に燃え上がる。

 山霧は真紅に染まり、周囲の影が異様に引き延ばされた。


 燃え盛るカードと、そこから立ち上る黒い炎を前に、わたしたちは直感した。


――この炎、ただの魔法じゃない。


 轟々と降り注ぐ雨は地面を叩き続ける。

 焚き火は消えかけているというのに、カードの炎だけは黒い芯を抱え、“揺らぎもせず”そこに立ち尽くしていた。


「……嫌な……感じ……」


 シルフィアの声が震える。


 炎が“しゅう”と音を立てて内側へ吸い込まれ、中心から黒煙がゆっくりと噴き上がった。

 その奥で、何かが金属を軋ませている。


“ギ……ギチ……ギギッ……”


 生まれようとしている――。


 黒煙が裂けた。


 漆黒の甲冑が、炎の残光を背に、ゆっくりと姿を露わにする。


「ッ……来た……!」


 シルフィアの瞳がそれを捉えた瞬間、世界がひとつ息を呑んだ。


 次の瞬間、巨体が弾丸のように跳ぶ。


“ギィンッ”


 暴力的な速度で金属音が弾け、黒い影は線となってシルフィアへと迫る。


「はや……っ!」


 煉の声を置き去りにして、シルフィアが反射的に手をかざす。

 掌に魔力が走り――


「――《グラビティ》!」


 空気が押しつぶされるように歪む。

 雨粒の軌道が曲がり、足元の泥が重みを受けて沈んだ。


 見えない重力の膜が黒甲冑を叩きつける。


“ドンッ!!”


 衝撃が大地を割り、黒甲冑の足が深く沈んだ。

 一瞬――いや、一秒にも満たない停止。

 だが、それだけで十分だった。この存在が“ただの怪物”ではないことは、誰の目にも明らかだった。


「……効かぬ」


 黒甲冑は地面の亀裂を力ずくで押し広げ、赤い双眸で再びシルフィアを標的として捉える。


 シルフィアの呼吸が止まりかける。


 胸が凍りつく。

 だが、わたしは反射で剣を抜き――泥を蹴って飛び出した。


「シルフィア! 下がって!!」


 その叫びと同時に、黒甲冑が重力の抑圧を振り切る。

 ひび割れた大地を粉砕し――

 再び、殺意の疾走でこちらへ迫ってきた。


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