表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
科学で戦う異世界理系JKと、壊れかけの守護者 ~めんどり頼んだら水素爆発しました  作者: 武者小路団丸
第3章 道

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/78

第60話 火のそばで語る影



明里たちは、また数日をかけて――レックスが待つ小屋へと向かっていた。

 冷たい風に砂が舞い、道端の草木は乾いて音もなく揺れる。

 それでも、見慣れた山の稜線が見えた時、胸の奥が少し温かくなった。


 ドアを開けると、懐かしい顔がそこにあった。

 レックスが振り向き、驚いたように目を見開く。

 久しぶりの仲間の姿に、明里は思わず笑っていた。


 ――話したいことが、たくさんある。

 王立図書館のこと。ブリキの番人のこと。

 そして《創生の術式》――あの禁書を、黒甲冑に奪われたこと。


 胸の奥に言葉が溢れていたが、どれから話せばいいのか分からなかった。

 それよりもまず、これからどうするのか――レックスと、話し合わなければ。



外では風が木壁を叩き、古い屋根が軋む音がした。

小屋の中は暖かいはずなのに、どこか息苦しい。



 ◇ ◇ ◇


 一通り話し終えると、レックスはしばらく無言のままだった。

 古びた机の上の地図に視線を落とし、指で何度も線をなぞる。

 そして、ぽつりと呟いた。


 「……手掛かりが、潰えたのか。」


 沈黙。暖炉のはぜる音だけが小屋に響く。

 明里が何か言いかけたその時――


 「ならさ」

 煉が腕を組んで、低い声で口を挟んだ。

 「レックスに依頼を頼んだ“依頼主”を辿ったらどうだ?

  そしたら、クリスタルビーストのことも……なにか分かるかもしれねぇ」


 その言葉に、レックスは眉をひそめた。

 しばらく考え込み、そして首を横に振る。


 「ダメだろうな。何人か人を介してる。

  辿れたとしても――奴らが素直に喋る保証はない。」


 その声には、諦めではなく、確かな“警戒”が滲んでいた。


明里は、皆の顔をゆっくりと見回した。

 暖炉の灯りが、レックスの頬に赤い影を落とす。

 その静けさの中で、明里は意を決して口を開いた。


 「あのね。……シルフィアとも相談したんだけど」

 少し間を置き、レックスの方へ身を乗り出す。

 「レックスが発掘した――あのクリスタルビーストの未開の地を、もう一度調べるのはどうかな?

  何か、痕跡が残ってるかもしれない」


 レックスは黙ったまま、暖炉の火を見つめた。

 火花が小さく弾ける音だけが、会話の代わりのように響く。


 明里は、レックスの顔を覗き込むようにして問いかけた。

 「ねぇ……行ってみても、いい?」


 しばらくの沈黙。

 やがて、レックスがゆっくりと息を吐いた。


 「……あそこは、もう閉鎖したはずだったが」

 低い声。だがその奥には、どこか“ためらい”が混じっていた。


 「だが……確かに、気になる。

  あの時、見落としたものがあるかもしれん」


 その言葉に、煉が口元を緩めた。

 「決まりだな。久々に“発掘”らしいことをやるってわけだ」


 小屋の中に、少しだけ緊張が解けた空気が流れる。

 しかし、レックスだけはまだ表情を曇らせたままだった。


 ――その目の奥に、明里は一瞬だけ“別の何か”を感じた。

 迷いとも、恐れともつかない、わずかな影を。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ