45話 赤い糸、青い雷
割れた光の中から、ひとりの影が降りてくる。
白い仮面、赤い口紅。ゆがんだ笑み。
月光を背にしたピエロが、両手を広げて笑った。
「やあ、また会ったね。
君たち、ほんとによく育ったじゃないか――私の美しい素材としてね」
煉が即座に前へ出る。
「ふざけんな。お前が見せた夢に何の意味がある!
くらえフレイムバレット」
ピエロに向かって炎の銃弾が飛ぶ。ピエロはひらりと宙を舞い、指を鳴らした。
その瞬間、空から無数の赤い糸が降り注ぐ。
三人の身体に絡みつき、動きを封じるように締め上げていく。
「夢の中ではすべて俺が支配してんだよ。無駄、無駄。」
ピエロの指がわずかに曲がる。
三人の喉に赤い糸が食い込み、息が詰まる。
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同時刻――現実。
シルフィアが明里、煉、ポルックスの三人を見つめていた。
なぜか三人とも苦悶の表情を浮かべ、冷や汗を流している。
レックスが突然、明里の肩を揺さぶった。
「おい、明里! 目を開けろ! しっかりしろ!」
その隣で、シルフィアの顔色が蒼白になる。
「……おかしい。脈はあるのに、夢から戻ってこない。魔力が……逆流してる?」
明里の額に汗が滲む。
寝息は浅く、時おり唇が震える。
――その震えに合わせて、部屋のランプがチリ、と揺れた。
「……今、揺れた?」
「いや……違う。これは……」
シルフィアの声が止まる。
足元が、かすかに震えていた。
まるで地面そのものが“夢と共鳴”しているかのように。
「明里……聞こえる? 戻ってこい……!」
レックスの手が強く肩を掴んだ――その瞬間。
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夢の中。
大地が大きくうねる。
三人の足元が崩れ、灰色の地が波のように揺れる。
「な、なんだ!? 地震!?」
煉が叫ぶ。
ポルックスが周囲を見回し、息を呑む。
「違う……これ、外からの干渉だ!」
ピエロの仮面が一瞬だけひび割れた。
その目が苛立ちを帯びる。
「……誰だい、私の舞台に触ってるのは?」
赤い糸がさらに強く締めつけ、三人の身体を吊り上げる。
雷鳴が走る。
「この夢は君たちのためにある。
現実なんて、ただの飾りだ!」
明里の瞳が見開かれた。
夢の世界が、雷光に包まれる。
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現実。
「明里っ!!」
レックスの叫びと同時に、ランプが弾け飛んだ。
白い光が走り、明里の体から一瞬、青い雷が閃く。
シルフィアが息を呑む。
「今の……雷属性の魔力? 夢の中から……?」
レックスは歯を食いしばる。
「くそ……もしこのまま干渉が続けば――!」
そのとき、部屋の奥から声が響いた。
「明里、煉、ポルックスの意識はすでに奪った。
肉体も、ほぼ私の手中にある。――救世主チーム、残りはお前たちだけだ」
その声が響いた瞬間、
――時間が止まったように、部屋の空気が重く沈む。
小屋の扉が、ギィ……と音を立てて開く。
外の光は――なかった。
覗き込んだ先は、ただの漆黒の闇。
冷たい風が一筋、室内を撫でた。




