34話 道化と砂塵の舞台
ピエロは陽気に踊り出した。
ひょいひょいと大げさに跳ね、帽子をくるりと回してみせる。
わたしたちの周りをぐるぐる回り、道化の声を張り上げて戯ける。
「さあさあ、お坊ちゃんにお嬢ちゃん! 楽しい楽しい道化の時間だよ~!」
わたしは思わず笑いそうになったけれど――何かがおかしい。
ピエロの笑顔は張りついた仮面のようで、目の奥だけが冷たく光っていた。
やがて彼は何も言わず、くるりと背を向けた。
軽快にステップを踏みながら、河原の広い場所の道へスタスタと歩いていく。
「お坊ちゃん、お嬢ちゃん……お代は大丈夫だから」
後ろ姿のまま、ぶつぶつとつぶやく。
それきり、また黙って歩く。
しばらくして立ち止まると、くるりとこちらへ向き直った。
赤と白のペイントが夕暮れの光にぎらりと浮かぶ。
「――お坊ちゃん、お嬢ちゃん。お代は大丈夫」
声が低く、ひどく不気味に響く。
次の瞬間、唇が裂けるように笑った。
「だが……お前らの命は置いてってもらうよ。出でよ、我がゴーレム」
と、叫んだら突風が吹き荒れた。
「煉、ポルックス気をつけて。なにか来るわ」
砂塵が巻き上がり、砂が舞い上がった、見通せないがなんらかの存在は感じられる。
砂塵の中から現れたのは、前に戦ったものよりもさらに巨大なゴーレムだった。
全身をきしませながら立ち上がり、頭上に影を落とす。
「ひっ……大きい……」
思わず足がすくみ、声が震える。
だが、ピエロはその恐怖すら「演出」の一部だと言わんばかりに胸に手を当て、誰もいない観客席に向けて大げさにお辞儀を繰り返した。
「レディース・アンド・ジェントルメン! さぁ――第1幕の開演だぁ!」
声が高く、甲高く響く。だがその目は、獲物を射抜く猛禽のように鋭かった。
ゴーレムが足を踏み出す。地面が揺れ、砂が崩れ落ちる。
私の心臓も一緒に揺さぶられた。




