表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
科学で戦う異世界理系JKと、壊れかけの守護者 ~めんどり頼んだら水素爆発しました  作者: 武者小路団丸
第1章 旅立ち

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/76

第3話過冷却の閃き、迫る結晶獣

ゴーレムとの激戦(げきせん)から数日。私たちは次の目的地を目指して旅を続けていた。(レン)が言うには、この地方から他の部族の領地へ入るためには、王様の通行許可(つうこうきょか)が必要らしい。そのため、わたしたちは王様のいる王都へ向かうことになった。王様に謁見(えっけん)し、許可証(きょかしょう)を取りに行かなければならない。


王都までの数日間、わたしは道中の(すき)をみては魔法の練習をしていた。ゴーレム戦で水のコントロールが不十分だったことを痛感(つうかん)し、水魔法の精度(せいど)を上げることに集中した。相変わらず(レン)は、わたしの細かい魔力操作の練習を見ては、「おしっこみたいにブワッと出せばいいんだよ」と、独特(どくとく)の表現でアドバイス(?)を繰り返していた。彼の豪快(ごうかい)な魔法の出し方とは違い、わたしはもっと繊細(せんさい)に、水の量や形、温度などをコントロールできるようになりたかった。


(レン)のおかげかどうかは定か(さだ)ではないけれど、地道な練習のおかげで、水温の調整や水の量のコントロールが少しずつ出来るようになってきた。特に、水を冷やす練習をしている時、ふと、ある現象(げんしょう)に気づいた。


「あれ……? マイナス10度まで冷やしたのに、(こお)らない……?」


普通、水は0度で凍るはずだ。しかし、目の前の水たまりに魔力を集中させ、慎重(しんちょう)に、静かに温度を下げていくと、氷点下(ひょうてんか)になっても液体のまま存在している部分がある。

ふと、そんな実験を試した時の記憶が(よみがえ)った。ペットボトルを冷蔵庫の奥に入れすぎてしまい、取り出した瞬間にカシャッと音を立てて一瞬で凍りついた、あの不思議な現象だ。


そうか、目の前のこの水も、あの時の「過冷却(かれいきゃく)」と同じ状態なのでは?

非常に不安定(ふあんてい)な状態だけど、少しの衝撃(しょうげき)やきっかけで一瞬で凍りつく、あの不思議な状態だ。


「マイナス何度でも液体でいられるなんて……面白いな。それに、この過冷却状態の水って、何かに使えないかな……?

過冷却の水を霧状(むじょう)にしたとき、光が乱反射(らんはんしゃ)して周囲が白くなる」


氷点下なのに液体のまま()らめいている水を見つめながら、この新しい発見が、今後何かの役に立つかもしれない、とわたしはぼんやりと考えていた。


数日後、私たちは王都に到着し、王様に謁見(えっけん)し無事に通行許可証(つうこうきょかしょう)を手に入れた。王都は活気(かっき)(あふ)れ、多くの人々が行き()っている。王宮を出て、次の目的地へ向かおうとした時、わたしたちは見慣れた看板の店を見つけた。それは、最初に着いた村で立ち寄った、あの何でも屋によく似ていた。店の主人も、なぜかあの村の主人に瓜二(うりふた)つだ。


「いらっしゃい! うちのものはすべてお得品だよ! 他の町にはない、珍しいものばかりだ!」


威勢(いせい)の良い声もそっくりだ。


明里「――あれ? ここって、はじめの村の店と品揃(しなぞろ)えとか主人、似てない?」


思わず(レン)に尋ねる。商品の陳列(ちんれつ)や、並んでいるアイテムまで似ている気がする。

(レン)は、少し目を泳がせながら言った。


(レン)「あ、あー……チェーン店だからな。うちの国じゃ、結構どこにでもあるんだよ、こういう店」


(チェーン店!? この世界にそんなものがあるの!?)


聞けば外の世界の人間(ゲームプレイヤー)が、異世界で何でも屋のチェーン店展開をしているらしい。

(おどろ)いたが、(レン)が言うならそうなのだろう。やはり品揃えも似ている。薬草や毒消しといった冒険に役立ちそうなものもあるが、犬笛やガラクタのようなものも多い。とりあえず、薬草と毒消しとアイテム数点を補充(ほじゅう)しておく。


王宮を後にし、王都の門をくぐって外に出ると、前の方から何か大きな荷台に隠すように布を被せた荷馬車が、こちらに向かって来るのが見えた。周囲には、厳重(げんじゅう)武装(ぶそう)をした兵士たちが付き添っている。


兵士「危ないから、どけて。道を空けろ!」


兵士の一人が、私たちに声をかけてきた。何か重要なものを運んでいるのだろうか。


明里「あれ、なんだろうね?」


(レン)「さあなぁ。あんなに厳重にしてるってことは、金銀財宝(きんぎんざいほう)でも積んでるんじゃないの? 俺たちには関係ねえか」


わたしたちは荷馬車の横を通り過ぎようとした、その時だった。


グォォォォ……!!


荷台の中から、低く(うな)るような音が響き渡った。そして、荷台を固定していた太いロープが、まるで内部から引きちぎられたかのように、勢いよく(はじ)け飛んだ。


バァンッ!


布が()がれ落ち、その正体が(あら)わになる。それは、双三角錐状(そうさんかくすいじょう)の巨大なクリスタルだった。(ちゅう)に浮かび上がり、クルクルクルと三回転し、(あや)しく光っている。クリスタルの中央には、(かく)のようなものが確認できた。その美しさと異質(いしつ)さに、わたしは一瞬見惚(みと)れてしまった。すべてが均一(きんいつ)で完全だからこそ、逆に不気味(ぶきみ)さを感じる。


クリスタルの核の色が、赤、青、黄と不規則(ふきそく)点滅(てんめつ)し始めたかと思ったら、次の瞬間、その光が消えた。そして、コンマ何秒という認識(にんしき)できないほどの速さで、クリスタルの先端から「ヒュンッ!」と空気を切り()くような音と共に、細いレーザーが放たれた。それは地面を(えぐ)り、通過した岩肌をガラスのように融解(ゆうかい)させた。


「あれが……クリスタルビースト……!」


(レン)の声が、恐怖(きょうふ)に震えているのが分かった。その巨体(きょたい)は、まるで動く要塞(ようさい)のようだ。陽光を浴びてキラキラと(かがや)くが、その美しさは一切の慈悲(じひ)を感じさせない。


クリスタルビーストの胸部(きょうぶ)にある巨大な核が、不気味な光を放ち始めた。わたしの頭脳(ずのう)警鐘(けいしょう)を鳴らす。


(あれは……エネルギーを収束(しゅうそく)している……!)


次の瞬間、核から放たれたのは、光の(すじ)のようなレーザー。


「ヒュンッ」

「ヒュンッ」

「ヒュンッ」


レーザーは、荷馬車の前にいた師団(しだん)の兵士たち目掛(めが)けて撃ち込まれた。兵士たちは、断末魔(だんまつま)の声すら上げられず、瞬時(しゅんじ)(すみ)と化し、地面に(くず)れ落ちていく。その光景を目の当たりにし、わたしたちは直感的(ちょっかんてき)に危険を察知(さっち)した。


明里「(レン)! 危ない!」


(レン)「うわっ! なんだあれ!?」


私たちは、(あわ)てて近くの物陰(ものかげ)に身を隠した。

数秒後、静寂(せいじゃく)が戻る。顔を上げて見ると、荷馬車の周囲にいた兵士たちは、全員倒れていた。無事なのは、わたしたちだけだ。


クリスタルビースト……!

これが、未開(みかい)の地から発掘(はっくつ)されたという、あの怪物……!


クリスタルビーストは、ゆっくりと宙に浮かんだまま、私たちの方を向いた。獲物(えもの)を見つけたかのように、その妖しい光を放つ核が、再び赤、青、黄と点滅し始める。


わたしは、咄嗟(とっさ)に手に持っていた剣を構え、クリスタルビーストに斬りかかった。アンデッドには有効だった剣なら……!

しかし、剣がクリスタルに触れた瞬間、キンッ!という硬質(こうしつ)な音と共に、剣が弾かれた。まるで、岩に刃を立てたかのように、全く歯が立たない。剣を持った手が、(しび)れるほど痛い。


(効かない!? 剣でも駄目なの!? こんな化け物、どうやって……? 私の、この世界の科学じゃ、何もできない……!?)


(レン)も、状況を見て魔法を放った。


(レン)「ならこれならどうだ! ファイアブラスト!」


(レン)の手から放たれた炎の(かたまり)が、クリスタルビーストを包み込む。ボオオオッ!と炎が燃え(さか)る。倒したか、と思った瞬間、炎が消えた。


しかし、クリスタルビーストは、炎に包まれる前と全く変わらない姿で、そこに浮かんでいた。その甲殻(こうかく)は、熱を吸収(きゅうしゅう)するように(にぶ)く光るだけで、()(あと)一つ付いていない。


(うそ)でしょ……!? 炎の魔法も効かないなんて……!)


物理攻撃も、強力な炎魔法も通用しない。その事実に、わたしは戦慄(せんりつ)を覚えた。あんな化物、どうやって倒せばいいんだ……?


クリスタルビーストの核が、再び赤、青、黄と点滅し始めた。レーザーが来る!


(逃げなきゃ!)


頭の中で「コマンドで逃げる」を選んだ。全力でその場から走り出す。しかし、クリスタルビーストは驚異的(きょういてき)なスピードで私たちに追いつき、回り()まれた。


シュンッ!


レーザーが放たれる。咄嗟に体を(ひね)り、寸前(すんぜん)で避ける。地面にレーザーが着弾(ちゃくだん)し、爆発(ばくはつ)する。


(こわ)い……! 何これ、速すぎる! このままじゃ、死ぬ……!?

でも、(レン)を置いていけない……!)


恐怖で足がすくみそうになるが、ここで立ち止まるわけにはいかない。再び頭の中で「コマンドで逃げる」を選び、別の方向へ走り出す。しかし、またしてもクリスタルビーストは私たちを追い()め、回り込んできた。


もう逃げ場がない……!


次のレーザーが来る。避けるのは無理だ。


(どうすれば……!?)


絶体絶命(ぜったいぜつめい)の状況で、わたしの頭の中で、一つのアイデアが(ひら)いた。それは、魔法の練習中に気づいた、水の性質(せいしつ)に関するものだった。


(これだ……! 一時的(いちじてき)にでも、視界(しかい)(うば)えれば……!)


瞬間、わたしは手に魔力を集中させ、持てる限りの水を、クリスタルビーストの顔面(がんめん)目掛けて霧状(むじょう)にして放出(ほうしゅつ)した。


シュワァァァ……


細かい水の(つぶ)が、クリスタルビーストの周囲に広がり、光を乱反射(らんはんしゃ)させる。


「明里! 今だ!」


(レン)が明里の手を(つか)み、「走るぞ!」と叫んだ。その一瞬の目眩(めくら)ましを利用して、私たちは再び全力で走り出し、その場から逃げ出した。

クリスタルビーストの追撃(ついげき)を、なんとか振り切るために。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ